14 父親は主夫
少し迷っての登場……
「呼び出して悪いな親父」
前に雅人さんと待ち合わせした喫茶店に俺は今度は親父を呼び出していた。親父は俺の言葉に微笑んで言った。
「気にしなくていいよ。でも、どうしたの?」
「いや……親父はさ。なんで美澄のこと認めたんだ?」
心配性の親父が美澄という存在を容認したことがずっと気がかりだったのだ。その質問に親父はコーヒーを一口飲んでから答えた。
「俺も別に無条件で許したわけじゃないよ。でも、晴太にとってきっとプラスになるとも思ったからね」
「……お袋と同じような感じで結婚したのって本当なのか?」
「うん。でも少し違うよ」
「違う?」
「最初はね。俺は主夫になりたかったんだけだったんだよ。でも遥香……お母さんと千鶴に会ってから本当に家族になりたくなったんだよ。要するに俺が2人に惚れたんだよね」
確かに千鶴姉さんは俺たち姉弟の中で唯一父さんと血が繋がってないけど……多分姉弟の中で1番千鶴姉さんが父さんに甘えてる気がする。きっとそれだけ色々あったのだろうと思う。
「ねぇ、晴太。清香ちゃんのことは嫌い?」
「……嫌いじゃない。でも俺は教師だ。生徒には手を出せない」
「うん。そういう真面目なところはお母さんそっくりだね」
それには色々言いたかったがその前に父さんは微笑んで言った。
「でもね、本当に好きになったら立場は関係ないんだよ。汚い話。合意の上なら隠せるしね」
「父さんらしからぬ台詞だけど……」
「実際俺はお母さんと結婚する時最後まで隠して卒業してからすぐに結婚したからね」
笑顔でそんなことを言われるが……色々凄いな父さん。
「晴太はさ。玲子さんに悪いと思ってるんでしょ」
「……かもな。俺はあいつを守れなかったのに別の女に惚れていいのかとは思う」
「うん。でもさ、晴太は清香ちゃんと接しててそこら辺はなんとなく緩和されてるんじゃないかな?」
ドキリとする。まさか見抜かれるとは思わずに驚いていると親父はくすりと笑って言った。
「父親だからね。晴太のことずっと面倒見てきたからわかるよ。だから……晴太には清香ちゃんに本音を言って欲しいとは思うかな」
「……本音」
「うん。それが例えどんな答えでもきっとあの子は真剣に受け止めてくれるからね」
全く……父親というより母親のようでため息をつく。昔からこういう親父には絶対勝てなかったからなぁ……
「親父。ありがとう」
「うん。可愛い息子のためだからね」
「可愛くはないだろ?もうおっさんだぞ?」
「親から見れば子供はいつまでも可愛い子供なんだよ」
そんな風に親父と話して俺の迷いはある程度晴れたように思えた。あとはそれを形にするだけだ。