11 本心を今
シリアス未満かな?
「なぁ、清香。少し寄り道してもいいか?」
夜、子供達が寝てから、美澄を実家に送ろうと運転しながらそう聞くと美澄は頷いて言った。
「覚悟は出来てます。今夜私は晴太さんと初めてを迎えるのですね」
「違う。というか、勝手に覚悟決めるな」
「違う……ということは、何かあるんですか?」
「……ああ。お前にちゃんと話そうと思ってな。俺の妻……玲子のことをな」
その言葉に美澄は黙って頷いたので、俺は美澄を連れてとある交差点に連れていく。車を近くに停めてから、横断歩道脇に花が添えられてるところに連れてくると俺はポツリと言った。
「……ここで玲子は命を落とした。お前なら知ってるよな?」
「はい。車での事故ですね。ここに突っ込んできたとか」
「……ああ、そうだ。本当に唐突だったよ。それまで楽しく玲子と話していたのに目の前で何も出来ずに玲子はーーー死んだ」
今でも思い出せる。さっきまで繋いでいたはずの手が離れて気がつくと血塗れで動かない玲子がそこにはいたんだから。
「本当にな……俺はあの時何も出来なかった。玲子が目の前で死ぬのをただじっとしていることしか出来なかったんだよ」
何度運転してたじじいを殺そうかと思ったことか……そんな事故をおこしてもそのクソじじいは最後まで車のせいにしていたが……本当に今でも殺したくて仕方ないほどだ。
「本当に最悪だよ……そのじじいからのミサイルも、それを目の前にして何も出来たかった自分もな」
愛する人すら救えなくて、ただ憎しみを抑えて残った子供達を見守るしか出来ないのだ。気が変になりそうだったくらいだ。今でもその憎しみは俺の中にドロドロしながら居座っている。そのじじいと俺自身への憎悪となってそこにある。
「なあ、清香。俺はな……お前が考えてるような人間じゃないんだ。法律が怖くて人一人殺せないで子供達を守ることしか出来ない臆病者なんだよ」
本当に最悪だ。俺が何かすれば可愛い子供達に害が及ぶ。玲子がそんなこと望むはずないとわかっていても、俺は今でもその憎しみに囚われているのだ。
「だからな、こんな俺のことを好きなんて言うのは勘違いだ。お前にはもっといい人がーーー」
「いませんよ」
そっと、美澄は俺の手を握ってから悲しげに微笑んで言った。
「全部知ってます。晴太さんが苦しんでたことも……優しいことも」
「……あのな、話聞いてたか?俺は……」
「裕介くんと寧々ちゃんを守るため。わかってます。それでも晴太さんは優しい人です」
そう言ってから美澄はくすりと笑いながら言った。
「知ってましたか晴太さん。私、本当は自殺しようと思ってたんですよ?」