1 進路希望の代わりに婚姻届ってなんぞ!?
ども、なんかノリで書きましたw
まあ、あんまりいないと思いますが、別作品の子供という設定ですが単体でも普通に読めるようにします。あと、別作品の主人公の子供が似たような感じでラブするのを書きたかったんですw
更新頻度は未定ですが…反応あれば頑張ります
「なあ、美澄……進路希望調査ってのは、将来のことを具体的にするために必要なことだ。もちろん、わかってるよな?」
ゆっくりと……そう、ゆっくりと穏やかに、俺は目の前の教え子に語り聞かせるように言葉を繋いでいく。
「だからこっちとしても何遍も同じことは言いたかないし、言わせないで欲しいんだが……どうしてこういうことをするかなぁ……」
ペラペラと見せつけるのは進路希望調査表ーーーではなく、婚姻届。誤解なきように言えばこれは俺のものではない。断じて教え子に結婚を迫っているのではなく……目の前にいる、俺の教え子の美澄清香という少女が進路希望調査表の代わりに出てきたものなのだ。
しかも……
「なぁ、美澄よ。お前ももう高校三年生だ。そろそろ本気で焦らなきゃいかんのに……毎回のごとく俺に婚姻届を出してくるのは嫌がらせですか?そうなんですか?」
この美澄という生徒、これが初犯ではなく俺が担任になってから毎回のようにやっていることなのだ。親を呼び出して話しても変わらず、むしろ親も乗り気でその悪戯に乗っかるので頭が痛い。
でも、もう高校三年生になったし、そろそろ大丈夫だろうと思った矢先の出来事なので本当に頭が痛い。
「嫌がらせではありません。本気で先生のことが好きなんです」
「なら、ちゃんと大人になってから出直せと何度も言ってるだろうが。俺は教師でお前は生徒。そこに不適切な関係はいらないだろうが。あとな……そもそも俺はシングルファザー……バツイチの子持ちなんだよ」
美澄は成績優秀、スポーツ万能、あらゆる才能がありなおかつめっちゃ美少女。かたや俺は冴えない中年の子持ち教師。どうやっても釣り合いは取れないだろう。
だというのに……
「それがなんですか。私が中退すれば何も問題ないですし、もしくは私が卒業してから受け入れてくれれば構いませんよ。それに子持ちだろうと、私は巽先生のことが大好きなんです」
毎回のようにそう言われるのだ。冗談で言ってるならいいのだが……この美澄という生徒は素で言ってそうなのでなお怖い。いや、美少女からの好意は嬉しいよ。もちろん。でもさ……教え子に手を出すわけにはいかんでしょ。
「先生」
ため息を漏らしそうになっていると、いつの間にやら側に顔を近づけてきた美澄。いい匂いがしてドキリとするが……いやいや、俺は先生だ。生徒に手を出すなんて真似は許させないと自制してからジト目で言った。
「近いっての」
「むー……なかなか靡きませんね。あ、じゃあアルバイト募集してませんか?」
「アルバイト?」
「そう、家政婦のアルバイト。私の将来の夢は主婦なんです。だから、先生の元でアルバイトさせてください」
なんだその提案はとあっさりと却下しようとすると、美澄はその前に何やら含んだような笑みを浮かべて言った。
「先生、今日もお昼カップ麺でしたよね?お子さんにちゃんとご飯食べさせてます?」
「……他に作ってくれる人いるからいいんだよ」
「いつまでもお父さんの健斗さんのお世話にはなれませんよね?またお母さんの遥香さんに文句を言われますよ?」
ギクリとしてしまう。というか、なんで親父とお袋の名前を……
「挨拶してきましたから。いいご両親でしたよ」
「な……」
「あ、あと。今日からは私が家事をするから来なくて大丈夫とお義父さまの健斗さんにはお伝えしたので私を雇う以外に先生に選択肢はありませんよ?」
親父が来ないだと………それはまずい。俺は料理はからっきしなのだ。家事もだが……いや、でも美澄を子供達に会わせるわけには……俺が妻以外の女に心変わりしたと思ってショックを受けることになるかも……
「あ、お子さんの祐介くんと、寧々ちゃんのお迎えももちろん私がやります。面識はありますし、懐いてくれてますから」
………What?
いやいや、流石に冗談だと思いたいが………親父やお袋の名前どころか子供達の名前まで知ってるとか、本来有り得ないぞ。
「先生、返事ははいしか有り得ませんからね?」
ニコッと可愛らしい笑みを浮かべる彼女……説教してたはずが何故か追い詰められたのは俺の方だったようで、思わず冷や汗を流しながら言った。
「いや、でも、子持ちのバツイチなんて重いだろ?お前ならもっといい相手がいっぱいいるはず……」
「巽先生。逃げないでちゃんとYESと言いましょうね」
この……天然サドめ!これじゃあ、まるで外堀を埋められたようじゃないかと思いながらゆっくりと頷くと彼女は嬉しそうに微笑んで言った。
「よかったぁ♪もしダメならこの場で押し倒して既成事実作るか事案として脅さないといけなかったですから♪」
さらっと恐ろしいことを言われるが……それが、おそらく俺、巽晴太が、既に彼女の手のひらの上だと知った瞬間なのだろうと後に思う。