足枷
休憩中に、シャルから2人きりで話したいと言われ、シオン達から少し離れた所に腰かけた。
「それで…話って?」
「…あの、勇者様は、なぜ旅をしているのですか?」
なぜ…それは決まっている。
「魔王を倒すためだ。」
「……それは、勇者様でなくてはならないのですか…?」
「…え…?」
何を言い出すんだ、この女は…俺でなくては、ダメに決まって……
…なんで、だ?
なんで、俺じゃなきゃ、ダメなんだ…?
「あの、魔物と戦う時、とても辛そうに見えて…他のみんなは、魔物に勝つと嬉しそうなのに、勇者様は、苦しそうにしていて…あの、す、すみません、いきなりこんな…。」
…確かに、仲間の方が俺より強い。
仲間達は魔物を倒せることが出来る。なのに、俺は1人では何も出来ない。
…正直、足を引っ張っていと思う。
そう思っている時の顔を見られたのだろう。
「…シャルは、よく見ているな。」
「い、いえ、少し気になっただけですから…。」
少し気恥しそうに笑う姿を見て、俺は強い不快感を抱いた。
なぜ笑ってられる?こんなに苦しい旅をしているのに?
…苦しいと思っているのは、自分だけなのか…?
とりあえずシャルには父親のことを話し、納得してもらえた。
だが、休憩中はそのことだけが気がかりで休めるものも休めなかった。
なぜ、シャルは俺にあんなことを聞いたんだ?
…俺が、弱いと思ってるからじゃないか?
自分たちより弱いのに、なぜ勇者なのかと、そう思ったんじゃ…?
嫌なことばかりが頭をよぎる。
もっと強くならなければ捨てられる…もっと強く…!
助けになると思った仲間達が、プレッシャーを与えてくる足枷となり変わってしまった。
少なくとも、父親のことを半分忘れるほどに精神と肉体が衰弱していた。
この地獄のような旅はいつまで続くのだろう…。