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調査開始




 次の日から、早速聞き込みが始まった。



「見回りはちゃんと交代で24時間やっているんだよ。ただ、村の人数はそこまで多くないから、子どもにも手伝ってもらってるんよ」


「昼は街に仕事しに行く人もおるからねぇ、その人には基本夕方をお願いしているよ」


「夜は流石に子どもに任せるのは心配だからねぇ。夜は大人たちが交代で見張りをするようにしてるのさ」


「昼間は基本子どもたちが見回ってくれているんだ。ほんと、手伝ってくれてありがたいよ」


「盗まれている時間帯? うーん、気がつくのは夕方や朝方の見張りの人が多いね。ちゃんと見て回っている筈なのに、ちょっとした隙にやられてるみたいだ」


「足跡も綺麗に消されちゃってるもんだから、多分動物の仕業じゃないだろ? そう考えると、ちょっと先にあるシナ国の村人の仕業かとも思ったんだけど……ほら、シナ国の外れとここは近いだろう? けれど他国の人間のせいになんて、証拠もなしに言ったら大事になりそうでねぇ」


「現場を押さえて捕まえることができたらどうとでもできると思ったんじゃが、なかなかうまくいかないもんじゃの」


「1番直近の被害があったのは一昨日だよ。キャベツが2玉に人参3本にじゃがいもが1株分だ。気づいたのは夕方だな。その日の昼は村の子ども数人と、ランディが見張り当番だった」


「ランディってのは、今年で15になるガキんちょなんだけどな。ガキ大将みたいなもんだ。子ども達の中で真っ先に見張りを手伝うって言い出したんだよ。あいつは人一倍食いしん坊だから、気になったのかもな」



 聞き込みを進めて得られた情報はざっとこれくらいである。ブルーノおじさんから聞いた話に更に情報が加わったとはいえ、やはり決定的なものはなかった。


 アランと話して私達も見張りに加わろうという話になったはいいものの、今までと同じような見張りの仕方では意味がないようにも思われる。ただ、話を聞く中で少し気になっている情報が1つ。



「シナ国が関与しているんじゃないかっていう話について、どう思う?」



 街の外れのシナ国方面へアランと共に向かいながら聞いてみた。時刻は夕方になろうとしている所で、太陽は西の空に傾いている。



「有り得なくもないな。最近のシナ国の動きから考えて。けれど、国が関与しているっていうよりはシナ国内にいる誰かが単独で動いているんだと思う」


「なんで?」


「だって、村から少しずつ少量の野菜を奪っていくなんて規模が小さすぎるだろ。国が関与しているなら、もっと大胆に動いても良いはずだ。もしくは、農作物の物資が足りないなら、貿易の内容から見直しをするべきだろ。こんなコソドロみたいな真似をすることが、根本的解決にはならない」


「確かに」



 アランの説明に納得がいって頷く。それに頭の中で、シナ国が私達に対して兵力を要求しているような状況下で、更にこんな盗むような行為を働いてヘーゼ国を煽るようなことをするようには思えなかった。



「まぁ、シナ国が絡んでいるか絡んでいないかはっきりさせるためにも、まずは国境沿いに行ってみるべきだな」


「そうだね」



 村を外れて森に入り少しすると、シナ国とヘーゼ国の国境がある。国境沿いは特に柵もなく、自由に行き来できるのが現状だ。ヘーゼ国とシナ国の間を出入りするならば、ここが1番出入りしやすいと言っても良いかもしれない。


 ただ、商人達が利用するのはもっと荷馬車の通りやすい整備された道である。しかもそこであれば、お互いの首都が結ばれているため商売がしやすい。わざわざこの森を超えて国境を越える必要はないわけだ。


 ちなみに、アランが通ってきたフォッカ国とヘーゼ国を繋ぐ森は別だ。もっと深いし、野生動物が多いのでその森を抜けようと思う人はほとんどいないわけである。


 森に入る頃には、日は完全に落ちていた。夜の森というのは少し怖いものがあるけれど、泥棒をみつけようというならば暗い方が良いようにも思われる。また、アランは知らないことだけれど、今のヘーゼ国とシナ国の状況を考えれば、私がシナ国に非正規の手段で入ることはあまり良いことではないと考え、こっそりバレないように様子を伺うことにしたのである。



「で、どうやって探るんだ?」


「そうだねぇ」



 森に入ったは良いものの、国境は延々と南北に伸びている。仮にシナ国の誰かが犯人であると仮定して、どこが侵入経路になっているかを探るのは極めて困難だ。


 国境沿いに行こうと言い出したのは私だが、その後の計画があまりに杜撰すぎたことに今頃気づいた。少し反省。



「まぁ、ちょっと森の中を探検してみよう。もしかしたら何か見つかるかもしれないし」


「そんな都合良く行くかって……」



 はぁ、とアランは呆れたように溜息を吐く。それに少しムッとしつつも、歩を進めた。


 道は整備されていないけれど、人が1人通ることのできるくらいの小道はできている。両側には木々が広がっていて、奥の方はもう暗くてよく見えなかった。


 村で借りてきたランタンを灯し、ゆっくりと歩を進める。アランは後ろを付いてきてくれているとわかりつつも、暗い道を突き進んでいくのは些か恐怖心に駆られた。夜に来ることを選択した自分を呪いたくなってくる。



「ねぇアラン、何か面白い話して」


「無茶ぶりすぎるだろ」


「いやだって思ってたより怖くてね……たまにアランの気配感じなくなるから、ちゃんと後ろにいるか心配で」


「だからさっきからやけに振り返るのか」



 私の挙動の不審さは少し感じていたらしい。それなら少しは気を遣ってくれても良いものを。



「前後変わっても良いけど、背中の方が注意力落ちて危ないしなぁ」


「うん、わかってる。大丈夫。私が前で良いです」



 後ろを度々振り返りながら森を進むのはもっと怖い。


 再度気持ちを落ち着ける。歩みを進めるが、アランは結局面白い話を振ってこなかった。私の無茶ぶりが過ぎたようである。



「あ、分かれ道」



 森に入ってから15分程経っただろうか、小道が右と左に分かれているのを発見した。特に立て看板などもない。


 村の人も森に立ち入ることは滅多にないと言っていた。たまに木材やきのこ、筍などを目当てに入ることがあるとは言っていたけれど、それが目的であればわざわざ立て看板を立てる必要もない。この小道ができているのだって、おそらく人が通っていたために自然にできた道だろう。


 こんなことなら少しでも森の中の情報を知っている人から聞いてこれば良かったかな、と思いつつ「どっちに行く?」とアランに聞いた。



「うーん、目当てはシナ国なんだろ? だったら方角的には右じゃないか? 左に進んでいってもシナ国に出るかもしれないけど、海に出る可能性もある」


「確かに。アラン、地理に詳しいね」



 他国のことなのにすごいなと感心する反面、自分の無知さをまた知った気がして少し嫌になる。城で先生に地理も教えてもらう機会があったけれど、しっかりと勉強してこなかった自分を恨んだ。


 アランの提案に従って、右の道を歩き出した。景色はさっきと変わらなくて、同じ所をぐるぐる回っているんじゃないかという気分になってくる。


 今どこら辺にいるのかわからないなぁと感じ始めていると、両側にあった木々が広がって人が2人通れるような道へと様変わりした。かと思えば、その木々はまた減って少し開けた空間に出る。広場のようなそこの中央には大木があった。大木は、他の木々を寄せ付けないかのように堂々とそこに立っている。


 アランと並んでその大木を見上げると、葉が空を覆っていた。しかしその間から少し星が見えて、もう夜と言える時間になっていることを実感する。



「こんな所があったんだ」


「すごいな」



 誰かが手入れしているんじゃないかとも思えるそこは、なんだか少し幻想的だった。大木以外の木々が生い茂っていないために、月の光が入って少しここの空間だけ明るい。昼は昼できっと、太陽の光が入ってまた違って雰囲気が味わえるのだろうと感じられた。


 大木に近づいて、ぐるりと周りを歩いてみる。幹の直径は5mくらいあるように思えた。



「エメ」



 私が中央の大木に夢中になっていると、私達が歩いてきたのとは反対側の広間の隅辺りからアランが私を呼んだ。



「こっちに少し通れそうな道がある」



 月の光のおかげか、ランタンを持っていない中でも自由に周りの様子を見ることができたらしい。アランに近寄っていくと、確かにそこには道と言えなくもない道があった。


 ただ、今まで歩いてきた道よりも更に狭い。そのうえ、小さな木々がポキリと折られたまま小さな枝があちこちに落ちていた。つい最近誰かが無理矢理通ったかのような跡だ。



「なんか変な道だね」


「ああ。気になるだろ」



 アランも違和感を覚えているらしい。先程と同様、私が先に歩いて、後ろからアランがついてくる。


 道が狭いために、時折木の枝を折る必要があって苦戦したが、何とか進んだ。マルガおばさんから動きやすいようにと、借りたズボンを履いてきて正解だったと実感する。


 小さな道を50m程進んだだろうか。ふと自分に足元に現れたそれにびっくりして歩を止めた。



「アラン、見てこれ」


「ん? ……なにそれ」


「わからない」



 少し体を避けて、後ろからアランが覗き込みやすいようにする。危うく踏んでしまいそうだったが、白い布に包まれた何かがそこにはあった。包みは全部で3つある。


 アランにランタンを預けて、1番大きな包を持ち上げた。が、そのとき、包みから1つの玉が転がっていった。



『あ、』



 アランと私の声が重なる。包みから転がり落ちたのは――キャベツだった。


 手元の布を開くと、もう1つキャベツがある。どおりで重いはずだ。



 「もしかして……」



 私の呟きに、アランも同じことが頭をよぎったのかあと2つの包みを解いた。中には人参が5本と、じゃがいもが数個入っている。



「直近の被害内容と一緒だな」



 ――1番直近の被害があったのは一昨日だよ。キャベツが2玉に人参3本にじゃがいもが1株分だ。


 昼間、村の人から聞いた情報が頭の中で復唱された。



「……これ、どうしようか?」



 持ち帰った方が良いのか。予想外の出来事に首を傾げつつアランに聞くと、「いや、元に戻そう」と彼は答えた。



「――俺に考えがある」






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