第3話
近藤香。(こんどうかおり)
リングネームは、名前同様にそのままカオリと名乗っている。今では、小さな雑誌にも特集として掲載されるぐらい有名なアイドルレスラーである。
俺が何故この近藤と知り合いかというと、別に劇的な話も無く、単なる高校時代の同級生だったからだ。
振り返ればこいつとの付き合いは長い。
『相変わらずこの部屋は汚いし狭いねぇ』
「うるせーな。大きなお世話だ」
そもそも1Kは1人暮らしに便利なのだ。
取りたい物は片手伸ばせば自由に取れるし、家賃は安いし、どうせ家なんて寝るための場所だしな。後は、この狭さも気に入っている!
決して貧乏だからではない。
そう。貧乏だからでは。。
何を1人で俺は考えているんだ。
「そういえば、友達が引っ越してきたとか言っていたけど、俺も知っている奴か?」
『いや、知らないと思うよ。なんせこの頃出来た友達だからね』
ピンポーン
奴か!!奴なのか!!!ムキマなのか!!?
ここは、頭の作戦通り近藤に出てもらおう。
とりあえず、掃除してるフリをしてっと。
「悪い。ちょっと手離せないから近藤でてくれない?」
『な、な、なんで私が?同棲していると勘違いされちゃったりするかもしれないし』
「いいから、早く頼むわ」
顔を赤らめていた近藤に俺は言ってやった。
『そう?ミハエルがいいって言うならそうする』
近藤は、玄関の方に向かっていった。
完璧だ!!!これで、ムキマなら尚完璧!!!
俺の想像では、ムキマを見て衝撃を受けた近藤が必殺ラリアットでムキマを倒してくれる。
そう思っている。いや、願っている。
というか、お願い!!
近藤が玄関を開ける音が聞こえた。
こちらからは、ドア1枚隔てて玄関がある為に様子が見えないが、どうやら乱闘にはなってないみたいだ。
宗教とかの勧誘だろうか。
近藤と来訪者が仲良さげに話している声が聞こえる。
暫くすると玄関のドアが閉じる音が聞こえた。
どうやらムキマでは無かったようだ。
次いつムキマが来るかわからないが、俺は短い平和を手に入れた。
近藤がドアを開けて入ってきた。
「なんだったー?宗教の勧誘とかだったか」
俺は振り返りながら、近藤に気軽に話しかけた。
・・・・・
何故だ!!!
近藤の後ろに2本のツノが見えているぞ!!
嫌な予感しかしない。
確実に後ろに立っている。
間違いなく立っている。
ムキマだ。