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マジックセンス  作者: 金屋周
第八章:決戦
98/222

95:遭遇

地上を照らす灯りは何もないが、暗闇に目が慣れてきた今、誰が現れたのかが分かった。



「エレジーナ……!」



「六号ちゃんとマカナくんもいるよー。」



「……。」



そう言うと、エレジーナの背後からゆらりと二人が出てきた。


何故彼女たちがここに?


明け方にこの辺りで遭遇しただけだ。町には帰ってきていないはず。つまり、この作戦のことは知らないはずだ。



「この奥に君たちの求めるアーウェルサ氏がいるよー。」



やはり知っている?


でも何で?



「でもねーこっちもお仕事だからさー……ここを通すわけにはいかないんだよね。」



そう言って唐突に何かを投げてきた。



「えっ!?」



眼前に何かが迫ってきた。


顔に当たる。


そう感じた瞬間、横から手が伸びてきてそれを掴んだ。



「大丈夫!?」



「う、うん。ありがと、アベリア。……何だろうこれ?」



アベリアが掴んだ物――星形の掌サイズの刃だ。


見たことない武器だ。これが帝国から支給された武器だとしたら……。



「私たちの敵である……そういうことでいいんですね?」



「まーねー……こっちもお仕事だからさ。私たちの役目は、暗殺を目論む兵士を迎撃すること。」



エレジーナはあっさりとそう白状した。


そして、腰からナイフを取り出す。



「だから、ここで……でも参ったなー……。」



急に芝居かかった口調になった。



「私たちは三人なのに、そっちは四人じゃないかー。これじゃ一人は通してしまうなー。あー参ったなー。」



「……何が言いたいんですか?」



「仕事だからとは言ったけど、私は仕事を選ぶんだよね。だからフィーくん、君だけ通してあげるよ。それに、君たちを殺す気は元々ないから。一応、時間稼ぎだけやらせてもらうよ。」



流石に二人以上行かせてしまったら、帝国から怪しまれて最悪処刑されてしまうかもしれない。けれど、一人だったら隙が生まれた時に、みたいな言い訳が効く。



「ほらほら、早く行った。軍師の男さえ倒せば、インペリウムに戦争をする理由はなくなるんだからさ。」



敵に雇われたエレジーナを信用していいのか?


この言葉すらも向こうの指示シナリオの可能性も……。



「――分かりました。フィカス、行ってください。私たちはエレジーナたちと戦います。」



「え、でも……。」



「おう!サンナの言う通りだぜ!」



「そうよ。フィーくん、お願いね。」



仲間たちの目を見て、フィカスは決意した。



「……分かった!行ってくるよ。だから……ここは頼んだ!」



森の中を駆けだすと、本当にエレジーナたちは追って来なかった。


大丈夫。そもそも、エレジーナを疑うこと自体、必要ないことだった。


いつも彼女は捉えどころがなくて、何を考えているか分からない。けど、悪意を持っていたことは一度もなかった。


……嘘は沢山あったんだろうけど。



「さーて……ここまでは予定通りかな?で、こっからがアドリブの時間だねー。」



走り去っていくフィカスの背中を眺めた後、エレジーナはサンナの方を向いた。



「サンナちゃん、久しぶりにお姉ちゃんが相手をしてあげるよ。」



「上等です。」



重心を下げ、サンナはいつでも飛びかかれる体勢に入る。



「六号ちゃんはジギタリスくんの相手を、マカナくんはアベリアちゃんの相手をよろしくー。」



「……。」



「……了解っす。」



互いに邪魔にならないよう、離れ合ってスペースを作る。



「サンナちゃんのパーティと会ったのも、こういう風に戦った時だったねー。あの時はサンナちゃんとは戦えなかったから、実は結構楽しみなんだよね。」



「……そうですか。」



「つれないねー。」



……集中しろ。


サンナは自分に言い聞かせる。


相手はあのエレジーナ。全力を出さないと……いや、出しても勝てるかどうか分からない相手だ。


殺す気はないと言ったが、その言葉もどこまで信用していいか分からない。



「うーん……サンナちゃん、考えすぎちゃうといけないから、先に言っておくねー。私たちは絶対に君たちを殺さない。けど、死なない程度には攻撃する。それだけだよ。」



「……信用して、いいんですね?」



「勿論。可愛い妹にお姉ちゃんは嘘をつかないよー。」



「妹になったつもりはありません。」



「ありゃー。」



悲しいなー。姉離れかなー?


……なーんて冗談はこのへんでいいかな?


でもね、サンナちゃん。



「君が私の妹ってのは、変わらないよー。」



いつも私の傍にいて、私の技術センスを見てきた。


そして、真似てきた。


それは一向に構わない。


むしろ己の真似をしてくれることに、嬉しさすらあった。


そうさせたくなるほど、自分には実力があるという証明になったから。



「そして……憧れてるようじゃ、勝てないよー……絶対にね。」


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