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マジックセンス  作者: 金屋周
第八章:決戦
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92:支度

「勇者から情報が入ったの。今夜にでもインペリウム帝国が攻撃を仕掛けてくると……これってフィカスたちが入手した情報よね?」



「あ、はい。そうです。」



ノウェムは頷き、話を続ける。



「町全体が現在、疲労しており迎え撃つ力はないと言ってもいい。そこでこのギルドのメンバーにも、戦に加わってほしいわけだけれども……。」



「勿論やります!」



「姫様のお願いですから!」



「参加するのでさっきのをチャラに!」



……どさくさ紛れに変な声が聞こえた気がしたが、気にしないでおく。



「――作戦を説明するわ。まず、町民は全て隣町の方に避難させる。そして、町を戦場に向こうを迎え撃つわ。」



何で町中で?


周りには草原や森があるのだから、そこで戦えばいいのに……。


フィカスの疑問を読み取ったのか、ノウェムはこう続けた。



「向こうがどれだけの戦力で来るか分からない以上、開けた空間での勝負は逆に危険なの。広さが限られている町中だからこそ、使える戦力も限られてくる。」



何より――。



「町はもうダメージを受けているわけだし、今更景観を守れとか言う人はいないわ。皆も気兼ねなく壊していいわよ。」



皆、その言葉に唖然とした。


いや、言っていることは間違ってはいない。


しかし、王女が直々にその言葉を口にするとは思わなかった。



「城の兵士を中心にもう町民の避難誘導は行っているわ。今のうちに戦の準備をしといてちょうだい。」



「分かりましたァー!」



「ウォーーー!!!」



「姫様ァーーー!!!」



「さっきの許してェー!」



……やっぱり、どさくさに紛れて変なのがいた。














「――はい。やりたいことが出来たので……はい。すみません。急に辞めるだなんて言って。」



喫茶店ヴェイトス・オムニスにて――。


フィカスたちと一旦別れたセプテムは、馬車をつかまえてここまで帰ってきていた。


来た理由は一つ。


辞めることを正式に言いに来たのだ。



「いやいや、君が夢を見つけてくれたならいいんだ。うちのアイドルがいなくなるのは、ちょっぴり困るけどね。」



喫茶店の店長は、そう言って笑った。



「それでセプテムさん、やりたいことって?」



「……色々な景色を見てみたいんです。それと――。」



孤独であるが当たり前だと思っていた。


独りの方が気が楽だと思っていた。


実際、本当にそうであることもあるのだろう。けれど――。



「一緒にいたい人を見つけたんです。」



――今は、あの騒がしさが中々心地よい。


そう思っている。



「そうか……一緒にいたい人か……うんうん……彼氏か!?」



「はい?」



店長はセプテムの肩をガシッと掴んだ。



「彼氏はダメだ!君はうちのアイドルなんだ!もし彼氏なんかできたら……客が皆暴徒になる!!」



「知りませんよ!あともう私は店員じゃありません!そして彼氏はいません!」



「そ……そうか。すまない、少々取り乱してしまって。」



「少々……?まぁいいです。それじゃ、行きますね。」



「ああ、またいつか寄ってくれ。」



「はい。」



良い店だった。


身寄りのない私を雇ってくれて、時折休む私を認めてくれて……。


冒険者として活動するのであれば、一度離れた町に戻ってくることはそうそうないだろう。


次にこの店に来るのは一か月後か一年後かそれとも……。



「ま、それを考えても仕方ないか。」



冒険者とは好奇心旺盛で気まぐれだ。


案外すぐに戻ってくるかもしれない。



「さて、と――やるか。」



冒険者セプテムは、自分の居場所を守るために戦う。


そのためには――。



「最後の一仕事、だな。」



――僕の力が必要だ。















それと同時刻――。


死神は町中を歩いていた。


死神といっても、それは異名だ。本物ではない。


町が騒がしい。戦争に備えて人々が動き回っているからだ。



「……どうするか。」



誰に言うのでもなく、死神は呟いた。


この戦争には大勢の人が――種族を問わず――参加することだろう。


それならば、己の目的も達成出来ることだろう。


……愚問だったか。


答えは決まっていた。悩むまでもなかった。


良い機会だ。


あの時、仕留めそこなった奴らもまとめて片づけてやろう。



「さて……支度をするか。」



――決戦の時刻が着々と迫ってきていた。

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