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マジックセンス  作者: 金屋周
第八章:決戦
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91:賑わい

フォルフェクスの目論みについて話した後、サンナは自らが抱えていた疑念をスクォーラに話した。


勇者の名を冠する者は腕を組み、しばらく考えた後にゆっくりと口を開いた。



「見えなくなる武器――恐らくだが、刀だ。」



「刀?」



スクォーラは頷いた。



「ああ。この辺りではまず使われない武器だがな。種類によっては、太刀筋一つで折れるものもある。扱い辛い武器だ。」



「そんな武器があったんだ。スクォーラくん、よく知ってたね?」



リコリスが感心した様子でそう言ったが、スクォーラは首を横に振った。



「知識として知っているだけだ。実際に扱ったことはない。」



「それで、どうして見えなくなったのですか?」



「理由か。実物を見ていないから憶測でしかないが、そういう種類の刀なのだろう。」



いまいち伝わってこない。



「――つまり、側面が壁や地面と同化する色をしている。ということだ。」



保護色と同じ原理だ。


刀はその原理を使い、相手の視界から消え間合いを掴ませない役割を持っている。あくまでフォルフェクスが持っている種類のは、という話だが。



「なるほど……だから私には見えず、脇から見ていたアベリアに見えていたのか……流石は勇者ですね。ありがとうございます。」



「いや、俺もよく知らない武器の話が出来て為になった。……さて、レグヌム城に行くぞ。また会おう。」



「あ、フィカスくんたちさ、出来ればギルドで待機していてくれないかな?」



「どうして?」



リコリスは国境のある方の空を見た。



「迎撃の準備をするだろうから、さ。多分、兵士だけじゃなくて冒険者にも参加の要請がくると思うんだ。」



「で、ギルドにその連絡が来るってわけだな!おう!分かったぜ!」



「そういうこと。じゃ、よろしくね~。」



勇者たちとその場で別れた後、フィカスたちはこの町のギルドへ。


何気にここのギルドに行くのは初めてだ。



「えっと……こっちだったと思うけど~……。」



城下町に不慣れな三人に代わってアベリアが先導をし、ギルドに向かって歩きだした。


しかし、アベリアも記憶頼りなところがあり、結局迷ったあげく偶然の形でギルドを発見した。



「ここか……あれ?思ったよりも……。」



変わらない。


ギルドに入ると、今まで所属していたギルドと雰囲気がほとんど同じだった。飲食店のようにテーブルがいくつも置かれ、掲示板が至る所にある。


違う点は、賑やかであるというところだ。常に賑わっている町内と同じく、ここも冒険者が騒ぎ楽しそうにしている。



「おっ!こういう雰囲気って、やっぱ何かいいな!こう……お祭り気分っての?」



「あ、それ分かるかも。何だかワクワクする感じがあるよね。」



種族を問わず大勢の人々が一か所に集い、共通の意識を持っている。


それがギルドであり冒険者だ。



「ワクワクするのもいいですけど、気の抜き過ぎは駄目ですよ。」



「大丈夫だって!で、何頼むよ?」



とりあえず空いているテーブル席に着くと、ジギタリスがメニューを開いた。



「……聞いてました?今の私の言葉?」



「ガハハ!冗談だって!」



そう豪快に笑った。



「ん?お前さんたちってもしかして……?」



ジギタリスの笑い声でこちらを見た冒険者の一人が話しかけてきた。



「町に残って魔物の襲撃を迎え撃った奴らじゃねぇの?」



「おう!その通りだぜ!俺たちがいなければ、この国は陥落していただろうぜ!」



それは言い過ぎな気がする。



「ハッハッハッ!その通りだな!いや~ホント凄いぜお前さんたち!」



よかった。ノリの良い人だ。


上半身がほとんど裸で凄い筋肉質の人だから、怖い人だと思ったけどそんなことはなかったみたいだ。人を見かけで判断してはいけないね。



「ふふん!盛り上がっているわね!」



バーンッ!!!


とギルドの扉が勢いよく開かれ、逆光を背負った女性が入ってきた。


顔がよく見えないが、声と行動で誰だか分かる。


ノウェム姫だ。



「冒険者の諸君、話をしてもいいかしら?」



「ひ、姫様!?」



「いや、本物がここに来るわけないだろ?偽物だろ。」



「そりゃあそうだな!姫様がこんなギルドに来るわけないか!」



「え、あの、本物なんだけど、私……。」



偽物判定の方向で盛り上がってきているギルドの面々を見て、ノウェムはオロオロし始めた。



「いや~嬢ちゃん、すっかり騙されたぜ!しっかしベッピンさんだなあんた!」



「だな!胸もあるしドレスもまるで本物みたいだし……凄いコスプレだな!」



「あ、あの、だから、私は……。」



大勢に囲まれ、ノウェムはますますオロオロし始めた。



「あの~……この方は……。」



このままでは大変なことになりそうだ。


そう考えてフィカスは進言した。



「――顔を上げなさい!この私から大切な話があるのよ。」



「い、いえ!姫様にとんだご無礼を!申し訳ございませんでした!!」



土下座しているギルドの面々を前にして、ノウェムは困惑した表情で話し始めた。



「別にいいのだけれど……さて、私がここに来たのは他でもない。ギルド全体で動いてもらう必要が出来たからよ。聞いてくれるかしら?」


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