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マジックセンス  作者: 金屋周
第八章:決戦
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90:帰町

それぞれのパーティーが終わった後、フィカスたちはホテルの一室へと戻ってきていた。


そして、そこで互いに得られた情報を共有しようという話になったのだが……。



「はい?ただの物好きの集まりだった?」



「おう!筋肉マニアのパーティーだったぜ!あ、これお土産な。」



「要りません。」



ジギタリスが差し出したバネのトレーニンググッズを突っぱね、サンナは溜め息を吐いた。



「はぁ……これなら、軍のパーティーに全員で行くべきでしたね……。」



「そんな大変だったのか?」



バネの端を持ち、左右に引っ張る。これで肩と背中が鍛えられるそうだ。



「――フォルフェクスに会いました。そして、新月の晩にレグヌムに戦争を仕掛けると……。」



「ふーん……そこんとこは、予想的中ってことかしら。で、それを国に報告するわけね。」



セプテムの言葉に頷いた。



「ええ。けれど、この時間に外出するのは怪しまれることでしょうし、明日にホテルを引き払うとともに、レグヌムに帰りましょう。」




「分かった。じゃあ今日はもう休もうか。」



――攻撃されると分かったところで、何か打てる手があるのだろうか。


嫌な想像がフィカスの頭をよぎった。


レグヌム城と城下町が疲弊している今、出来ることは何だ――?


寝落ちするまで思考を巡らせてみたが、結局何も考え付かず朝を迎えてしまった。



「さぁ行きますよ。」



翌朝――。


身支度もそこそこに朝食も摂らずにフィカスたちはホテルを後にした。


朝の静けさも相まって、町は一段と落ち着いていた。


澄んだ空気を吸うと、昨日の出来事が夢の中のことのようにさえ思えてくる。


訪れた時と同じ場所――つまり関所に向かい、別の観光地へ行くと言って帝国の領地を出た。



「あ、サンナちゃんたち、おはよー。」



「エレジーナ?何故ここに?」



木々の中から姿を見せたエレジーナ。その背後にはマカナとウルミもいる。



「お仕事だよー。」



「まぁ……そりゃあそうでしょうね……。」



三人とも、サンナと同じく真っ黒な布で身体を覆っている。


仕事服であることは一目瞭然だ。



「あ、そーだ。フィーくんに言おうと思ってたことがあってね。」



「え、僕に?」



エレジーナとの関わりが少ないため、どんな要件か想像もつかない。


彼女はフィカスに接近すると、彼の首に触れた。



「――君は経験を活かすことが得意だからね。いい?直感っていうのは、経験から生まれるものだよ。それを忘れちゃいけない。」



「……え?」



伝えたいことが見えてこない。



「過去を振り返りつつも今に集中する……それが冒険者フィカスだよ。いいね?」



「……うん。」



「それだけだよー。じゃーねー。」



エレジーナが離れていき、それと同時に近づいていたことに気付いた。


あの人はいつもそうだ。接近していることを悟らせない。



「……何だったのかしら?」



「……さぁ?」



初心じぶんを忘れるな。


ということだったのだろうか。



「ん……よく分かんねぇけど、今はレグヌムに行こうぜ!」



「うん……そうだね。」



難しいことは後で考えよう。そして、今はやるべきことをやろう。


国境線にある森を進み、草原を歩き城下町に帰ってきた。


まだ朝であることに変わりはないが、帝国よりも活気がある。早い時間にも関わらず人々が営みを行っていた。



「で、国に報告するんでしょ?私はちょっとうろついてるから、あんたたちで行ってきなさい。」



「え、何で……セプテム?」



理由を訊く前にセプテムはどこかに行ってしまった。



「まったくあいつは……城に行きましょう。」



「そうね~セプテムちゃんなら大丈夫だと思うわ。」



仲間になってまだ日は浅いが、彼女がどういう人間かは分かってきた。


彼女には彼女の考えがある。それをどうこう言っても仕方がない。



「あ、フィカスくん。久しぶり……ってほどでもないけど、元気にしてたかい?」



曲がり角から現れたスクォーラたちパーティー。そのメンバーであるリコリスが声をかけてきた。



「リコリス、うん。元気には……してたかな?」



ここ数日を思い返して、フィカスは苦笑いした。



「勇者一行は何を?」



「一行ってサンナさん……まぁいいか。僕たちは町の修繕作業でね。それも一息ついてきたから、お城に報告ってわけさ。」



そう言ってリコリスは手をヒラヒラさせた。



「お前たちは帝国に潜入していたのだったな。何か掴めたか?」



ちょうどいい、とサンナはネモフィラの質問に頷いた。



「はい。報告すべきことが……それで、どうせ城に行くのなら、姫様に伝えといてくれませんか?」



「それくらい自分で……。」



「いーんじゃね?大勢で行くのも面倒だし。あたしたちに任せてよ。」



ネモフィラの台詞を遮り、ラフマが了承した。



「おい!」



「いいじゃん、サンナたちの方が疲れてるだろうしさ。どーせあたしたちがお城に行くのは変わんないし、こんくらい引き受けてやろうぜー。」



「そういう問題ではなく……。」と説教を始めた彼を無視し、サンナは喋り始める。



「では、話しますね……それと、訊きたいことがあるんですが……。」

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