09:武器
遺跡を出て、来た道を逆戻り。
昼過ぎにギルドへと生還し、遺跡の壁画が崩れてしまったこと、その奥に隠し部屋があったことを報告した。
報酬金を受け取り、初めてのクエストはこれにて完了。
「まったく……次から勝手に判断しないで、相談してくださいよ。」
「は~い。」
昼食を終え、フィカスたちパーティーは武器屋に来ていた。
サンナはぶつくさと文句を言っていたが、気の抜けた返事をするアベリアに毒気を抜かれ、すぐに何も言わなくなった。
「フィカスは何か、使いたい武器はあるのか?」
「うーん……軽い武器がいいかなぁ……。」
フィカス用の武器を仕入れるために武器屋へと来たのだが、冒険者初心者であり武器を持ったことがないフィカスにとって、いきなり好きな物を選べと言われても困ってしまう。
「軽い武器なら、やはりナイフですね。これはどうですか?」
そこで、三人が協力して武器を選ぶことにしたわけだ。
「リーチがちょっと……。」
サンナに手渡されたナイフを握ってみるが、その短さに不安を覚える。
「おう!軽さならやっぱマジックソードだろ!」
マジックソード――魔法がかけられた剣であり、一般的な剣に比べ非常に軽く扱いやすい一級品だ。
「そんな高い物、買えませんよ。」
ただし、値段も一級品。上級冒険者でもなければ手の届かない代物だ。
「この剣はどう~?」
アベリアが持ってきたのは、小剣。ナイフよりも長く、普通の剣よりは短い。そんな中くらいのサイズの剣だ。
試しに振ってみると、中々良い感じ。
「うん。これがいいかな。」
「おう!それじゃあ、決まりだな!おっちゃん!この剣、買ってくぜ!」
ジギタリスが速攻で代金を支払い、買い物完了。
買った小剣を鞘に入れ、腰のベルトに差す。
「似合っているわよ~。」
「おう!様になってるぜ!」
「えへへ……!」
初めて手にした自分の武器。褒められて顔が思わず緩む。
「それで、この後どうするんだ?」
何かクエストを受注するには少し遅い昼下がり。
「早速フィカスの特訓を……と言いたいところですけど、先にやりたいことが。」
「なに?サンナ?」
「フィカスの魔法を戦闘時に使えるようにしておきたいです。」
フィカスの持つ創造魔法。
魔法は生まれつきの才能が必要であり、扱える者は決して多くはない。そして、その才を持っていたとしても、扱えるのは一つの魔法のみ。
ほとんどの者が持つのは自然魔法――炎や水を扱える才能であり、それ以外が扱える者は希少である。
その希少に当てはまるフィカスのセンスは充分に伸ばしておきたい。
「具体的にどうやって?」
「図書館に行きます。」
「はい?」
サンナの意図が伝わらない。
「イメージした物を現実に出せる創造魔法……知識があればあるほど、その用途は広がるはず。つまり、勉強して知識を身に付けるのです。」
「なるほどね~。フィーくんが勉強したら、それもイメージできるようになるのね。」
サンナは頷いた。
フィカスも納得する。
色々な種類の武器や道具の知識があれば、場面場面で臨機応変に戦うことが可能となる。
「分かったよ。図書館に行って勉強しよう!」
今ここに、新たな冒険者たちの物語が始まろうとしていた。