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マジックセンス  作者: 金屋周
第七章:帝国
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81:いがみ合い

人形屋を出ると、太陽は頂点にもうすぐ達しようとしていた。


お昼ご飯には少しばかり早いかもしれないが、店を探す時間を考えるともう昼食としてもいいのかもしれない。


通りを左右に見回してみるが、レストランらしき建物は見つからない。



「どうする?ホテルに戻るか?あそこなら食堂もあると思うが……。」



「でも、せっかくだから外食にしましょう。知らない町でご飯を食べてみたいわ。」



「うん。そうしよっか。でも……どこだろう?」



探す時間を含めて昼食と言ったが、あんまし時間がかかるようならば、ホテルに戻った方が良い。



「まぁとりあえず、歩くか!」



歩き続ければ、いずれ食事処が見つかるだろう。


というジギタリスの思考の元、三人は当てもなく歩き始めた。



「そういえば……。」



フィカスはふと、ホテルに残してきた二人のことを思った。


どうしているんだろう?まだ喧嘩してるのかな……?


いや、流石にもう落ち着いているか。二人ともしっかりしているし。今頃、ホテルでご飯を食べているのかな。














「大体、あんたのその身体なに!?んな体型、戦闘において邪魔でしかないわ!!」



「ふん……幼児体型が何をほざいても、負け惜しみにしか聞こえんな。あ?」



まだ言い争いをしていた。


サンナとセプテムのしょうもないことから始まった口喧嘩はいつの間にか、相手の体型への悪口へと内容が変わっていた。



「ハァ!?ちょっと発育が良いからって、調子乗ってんじゃないわよ!?」



「フ……大声を出すところが、図星というのを物語っているな。まぁ、そういう趣味の人にでも愛でてもらえ。」



サンナはセプテムの凹凸オートツのない身体つきを見て、鼻で笑った。



「んがあああぁぁぁぁっっっ!!!!」



野獣のように吠えて、セプテムは恨めしそうにサンナのメリハリのきいた身体を見つめる。


この内容においては、どうやっても勝てないと悟ったらしい。



「ふん……ようやく負けを認めたか。しつこい奴だった……あれ?」



項垂うなだれるセプテムに対し勝ち誇ってから、ようやく自分たち以外に部屋に誰もいないことに気が付いた。



「あの……セプテム……。」



「……何よ?あ……あくまでこの内容で負けただけであって、私自身が負けたわけじゃなくて……。」



「いえ、その話はもう終わっています。」



「へ?」



セプテムはその言葉に顔を上げ、サンナと自分しか部屋にいないことに初めて気が付いた。



「……ああ。あの三人はもう、出掛けていたのね。」



何かに熱中すると、意外と周りが見えなくなるものだ。



「ええ。で、捜しに行くのも面倒ですし、二人で昼食にしませんか?」



ちょうどタイミングよく、部屋に置かれた鳩時計が十二時を差し、鳩の作り物が顔を見せた。



「まぁ別にいいけど……何あんた、一人じゃ寂しいとか言うんじゃないでしょうね?」



「そんなわけないでしょう。ただ……。」



「ただ?」



サンナは顔を背けた。



「その……これからは仲間……なわけですから……一緒に……。」



と聞き取れないくらい小さな声で言った。



「……!ふん、素直じゃないわね。サンナは。」



頬を赤くしていたサンナは、その言葉にセプテムをジト目で見た。



「お前には言われたくない。」



「はいはい。じゃあ行くわよ。たしか、食事処がホテル内にあったわよね?」



「たしか……待っててください。」



サンナはロビーで受け取ったホテルの説明書を見る。



「――ええ……二階にありますね。さぁ行きますよ。セプテム。」



「そうね。」



ぶっきらぼうに答えたが、その顔は笑っていた。


反骨心のようなもので突っかかっていたが、案外気が合うのかもしれない。



「何一人で笑ってるんだ?気色悪い。」



「は?」



前言撤回。


やっぱりこいつとは馬が合わない。



「どうしてこう!あんたは一言多いのよ!?」



「気のせいです。大体、あなたがこうも咬みついてくるから……!」



ホテルの廊下にも関わらず、またしても言い争いを始め、次々と他の部屋のドアが開き見物人が現れ始めた。



「あんたが先に突っかかってくるからでしょ!?初対面の時から印象悪いし!」



「あの時の話は今はいいだろ!?そもそも、突っかかってきたのはお前が先で……!」



一足先にサンナは我に返った。


廊下で口喧嘩をするのは、さすがにマズい。


騒ぎを起こして追い出されでもしたら大変だ。



「は?急に黙ってどうしたのよ?」



「……セプテム。下に行きましょう。」



「え?……ああ、そうね……。」



好奇の目で見られていたことに気が付き、セプテムも落ち着いた。


そして、二人はその周囲の目から逃げるように階段を駆け下りた。



「……余計な事を言ったのは、謝ります。」



「……別にいいわよ。」



階段を下りる最中、互いに相手の顔を見ずに会話をする。



「……どうも。」



「ふん……あんたがしおらしいと、調子狂うわね。さっさと本調子に戻りなさいよ。」



「セプテム……はい。そうですね。」



「そうそう。それで良いのよ。……つうか余計な一言って自覚があるんだったら、言うんじゃないわよ。」



「あ?お前の今の言葉こそ、余計な一言だろうが。」



……二人のいがみ合いは終わらない。



この二人の口喧嘩は微笑ましい(作者談)

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