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マジックセンス  作者: 金屋周
第七章:帝国
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79:ホテル

城下町を出て国境線のある森林へ――。


ここでも何か争いがあったのか、折れた枝や焦げた草木が所々にあった。



「セプテムちゃんは、帝国には行ったことあるのかしら~?」



「こっちには来たことないわね。あんまし活動範囲を広げても意味がないし。」



「へぇ……あれですね。」



関所が見えてきた。



「興味がないってなら、素直に言ったら?」



「そうですね……興味ゼロです。」



「あ?あんたに話したわけじゃないのよ。」



「は?新入りが何ほざいて……。」



「はいストップ!ほら、関所に行くよ!」



この二人、相性が悪いのかもしれない。


初対面の時から険悪というか、高圧的だったから。気を付けていないと、すぐに喧嘩しそうだ。



「どうも、観光に来ました。」



関所に入ると、ジギタリスがそう挨拶をした。商人の経験から、こういうことに慣れているのだろう。



「観光ですね。どちらから?」



「レグヌム方面です。」



「レグヌム……ですか?」



「はい。まぁ城下町は何か色々あったみたいで、通り過ぎてきましたが。」



ここまではシナリオ通り。この言い分から、警戒されないはずだ。



「――はい。分かりました。どうぞ、お通りください。」



「どうもっす。」



鉄製の大きな扉が開いた。


光が向こう側から差し込んでくる。



「おぉー!これがインペリウム帝国か!」



黒に近い灰色の道路。建物が所狭しと並んでいる。


レグヌム城下町は人が多くても広々とした印象があったが、こっちはもっと何もかも敷き詰めたような感じがある。


道路の幅が広く狭苦しさは感じないが、どこもかしこも建物に囲まれているため、威圧的のような雰囲気があった。ただ、人通りはそんなに多くない。


朝だからというのもあるだろうが、それを差し引いてもレグヌム城下町に比べて人が少ない。



「凄ぇな……けど、どれが店なのかよく分かんねぇな。」



「そうね~。」



露天商とかは一切ない。全て建物の中にあるのだろう。



「で、どうすんのよ?」



「えっと……とりあえず、宿を探そう。散策はその後にしよう。」



「ですね。行きますか。」



看板を探しながら町を練り歩いてみるが、中々見つからない。


歩くこと十数分――ようやくそれらしき建物を発見出来た。



「……多分、これですよね。」



何の模様も文字もない、真っ白なシンプルな縦長な建物。



「これってホテルでしょ?高いんじゃないの?」



「ホテル?」



「高級な宿屋って感じのとこよ~。」



事情に詳しいのはアベリアとセプテムの二人。



「高いねぇ……まぁいいんじゃねぇのか。贅沢してもよ!」



姫様からいただいたお金がある。これを使えばきっと大丈夫だろう。


城と遜色ない煌びやかなロビー。赤いカーペットと金色の縁取りが施設の豊かさと高級感を表していた。



「あの、泊まりたいんですけど……。」



「はい。でしたら、まずはお部屋をお選びください。」



建物の見取り図を提示された。


チェックがついている部屋が、既に使用されている部屋らしい。



「どこにする?」



「どこでもいーわよ。」



「じゃあ一番上の部屋にしようぜ!」



「はい。かしこまりました。こちらが部屋の鍵になります。どうぞごゆっくり。」



にこやかな笑みとともに鍵とホテルの説明書を手渡された。



「料金は帰る時に……使用人に言えば、基本どんな要望でも通る……そんなところですかね。」



階段を上って部屋に向かう……のだが……。


長い。最上階を選んだのだから、当然ではあるが。



「……絶対、最上階選んだの失敗でしょ。」



「……おう。そだな…………。」



一々階段で上って行くのは、正直面倒くさい。外出するのに苦労しそうだ。


階段を使う経験がほとんどなかったので、意外と足にきた。



「あの部屋ね~。」



ようやく到着。まだ朝だというのに、随分と歩いた気がする。


気を取り直して――。


鍵を使って扉を開けると――。



「おぉー凄いね。この部屋。」



城の一室と言われたら、信じてしまいそうな部屋だった。


ベッドやテーブルだけでなく、浴室も付いている。


お風呂の水って、どういう風に確保してるんだろう?


大きな窓からは景色を一望出来る。値が張るとはいえ、ずっといたくなるような部屋だ。



「中々良い部屋ね……けど……。」



「問題が一つありますね。」



「そうね~。」



女性陣が不服そうな顔を見せた。



「どうしてベッドが四つなのよ!?」



五人で来たというのに、部屋に置いてあるベッドは四つ。


ロビーで何にも言われなかったから、手違いなのかな?



「まぁいいじゃねぇか!気にすんなって!」



「じゃあ、あんたは床で寝なさい。」



「ガハハ!嫌だ!」



こういう事態を解決するのもリーダーの役目?なんか違う気も……。



「じゃあ……ジャンケン、しよっか。」



とりあえず、提案する。


でも、ジャンケンして……どうしようか。ソファがないから……かと言って床で寝るのはかわいそうだし。



「ジャンケンしてどうすんのよ?」



「えっと……。」



何か言わないと。セプテムのジト目が怖い。



「……えっと、負けた二人は同じベッドで!あれ……?」



焦って変なことを言ってしまった気が。

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