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マジックセンス  作者: 金屋周
第六章:陰謀
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77:依頼

真剣な表情とともにノウェムは話を始める。



「まだ事件の騒ぎの真っ只中だから、確定出来ないことばかりなのだけれど――今回のモンスターの襲来は、人為的に引き起こされたものと考えられるわ。」



「誰かが魔物を集めて、それを解き放ったってことですか?」



セプテムの問いかけにノウェムは頷いた。



「ええ。モンスターがあれほどまでに徒党を組んで襲ってくることは、自然的に考えられないわ。それに、襲撃されるまで周辺のモンスターが一切見当たらなかった。さらに――。」



悲しそうで悔しそうな、複雑な表情を見せる。



「この事件と同時に、城で働いていた一人の男性が姿を消したの。その男の名はフォルフェクス。ギルドとの繋がりがあり、地域調査をするよう冒険者に依頼した張本人よ。」



「その男が犯人ってこと?」



じれったそうにセプテムがそう言ったが、ノウェムは表情を崩さなかった。



「まだ確定ではないわ。モンスターの攻撃に巻き込まれて、行方不明になっているだけの可能性もなくはない。しかし、彼が重要参考人であることに変わりはない。そこで――。」



その時、部屋の扉が勢いよく開かれ、若い兵士が入室してきた。



「失礼致します!報告に参りました!」



「何かしら?」



ノウェムに訊かれ、兵士は背筋を伸ばした。



「はい!伝言であります!フォルフェクス殿の出身国です!」



タイムリーな話だ。



「インペリウム帝国の出身であることが、調査により判明致しました!それでは、失礼致しました!」



本当にそれだけ報告に来たんだ。



「――隣国の出身者だったとすれば、ますます怪しいわね。それで、話を続けるけれど――。」



兵士が去っていったドアの方をチラリと見てから、言葉を発する。



「彼を――フォルフェクスを捜してほしい。これが国からの依頼内容クエストよ。受けてくれるかしら?」



「質問です。」



サンナが小さく手を挙げた。



「私たちだけ、という点が引っかかるのですけど。一体どういう意図が?」



「鋭いわね。理由は二つ。まず一つ目、これから城下町は……今すぐにでも復興作業に取り掛からねばならない。そのため、ギルドに登録してある冒険者たちは、そちらを優先してもらう。」



指を上に向けて伸ばす。



「そして二つ目、こっちが重要よ。インペリウム帝国は現在、我が国との関係が決して良好であるとは言えない。下手に冒険者を寄越して、険悪になることは避けたい。何より――。」



息を短く吐いた。



「フォルフェクスが帝国のスパイであり、レグヌムの陥落を目論んでいたとしたら、冒険者を向かわせることが向こうの思惑通りになってしまう。」



「……?どういう意味ですか?」



ジギタリスがそう質問し、フィカスも同じことを思ったのか頷いた。



「ギルドとの繋がりがあると、先ほど言ったでしょう?それはつまり、ギルドに登録してある冒険者を覚えられているということ。冒険者が帝国に行き見つかったら、レグヌムの守りがその分薄くなっていると気付かれてしまうわ。」



ああ。そういうことか。


帝国側がレグヌムを敵視しているのであれば、守りが薄くなった時に攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。


町が弱っている今、冒険者が帝国に赴くことは出来ない。


けれど例外はある。それは、この町のギルドに登録されていない冒険者だ。



「貴方たちは、レグヌムのギルドの名簿に入っていない。だから、視察に持ってこいというわけよ。これが、貴方たちにだけ頼む理由。とは言っても、先ほど分かった情報を元に今考えたのであって、元々考えていた依頼とは少し違うのだけれどね。」



「何ともまぁ、大きな話ね。……でも、断るわけにはいかないわよねぇ。」



面倒くさそうに、セプテムは大きな欠伸をした。


戦いを終えて、姫様の目の前で。


その胆力というか、性格というか……とにかく凄い。



「調査に必要な資金は私が用意するわ。ぜひとも、受けてほしいのだけれど……。」



「はい。受けます。だよね?」



フィカスが仲間たちの顔を窺うと、皆はすぐに頷いた。



「ありがとう!それなら早速……と言いたいけれど、流石に夜中に向かうのはアレよね。準備はこちらで済ませておくから、もう休んでいいわよ。部屋は……じいや。」



「はい、姫様。」



ノウェムの一声で、タキシードを着た老人が部屋にやってきた。


いつの間に……。



「彼らに上質な部屋を用意してあげて。私は少し仕事をしてから休むわ。」



「かしこまりました。それでは皆様。ご案内致します。」



執事に連れられ、フィカスたちは広く大きな部屋に辿り着いた。



「今夜はこの部屋でお休みなさいませ。それでは失礼します。」



ふかふかのベッドに腰を掛けると、一気に疲労と睡魔が襲ってきた。



「じゃあ……お休み。」



他にも何か色々と言葉が浮かんできたのだが、それを口にする気力もなく、フィカスはベッドに倒れた。



「……お休み。」



皆がベッドに伏したのを見てから、セプテムは小さな声でそう言って横になった。

ノウェムの話は長くなりがち。

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