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マジックセンス  作者: 金屋周
第六章:陰謀
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75:共闘

「え……右手?」



何を一体したいのか。


言われるがままに右手を前に出して、フィカスは初めて痛みに気が付いた。


そうだ……氷柱で刺されて……。


他のことに夢中になっていて忘れていたが、一度意識すると痛みがジンジンと出てきた。



「包帯、出しなさい。」



そう言ってセプテムはフィカスの右手に魔法で水をかけた。



「ッ!」



「我慢しろ。洗っとかないと後で何かあるかもしんないのよ。」



「……うん。」



顔をしかめて痛みを我慢し、言われた通り包帯を創造した。それを巻いてもらい、応急処置は完了。



「次、私の服を創って。」



「……服?」



「そうよ。あんたの仲間の……髪長い女の服、あれを創りなさい。」



アベリアのことだろう。


服……えっと……シャツとホットパンツ……だったよな……。


頑張ってアベリアの服装を思い出し、何とかそれっぽいものを創造することが出来た。



「まぁ……これなら何とか着られるわね。私が着替えている間に私とあんたの武器を創っておきなさい。」



威圧的、というか上から目線な物言いだ。


サンナと衝突しそうだな……。


何て感想を抱きながらフィカスはセプテムに背を向け、博物館に落とした武器をイメージした。



「よし。行くわよ。」



やがて、後ろからそう声をかけられた。


フィカスが振り向くと、褐色の健康的な肌を露出した格好のセプテムがそこにはいた。


あれ……こんな服だったっけ……?


記憶通りに創造したはずだが、アベリアが着ている時とは違った印象がある。



「あ?なにジロジロ見てんのよ?」



「あ、いや……何でもないよ。」



「ふーん……さぁ行くわよ。」



来た道筋を辿り、再びレグヌム城下町へ。


建物の崩壊が酷くなっており、魔物たちが我が物顔で通りを歩いていた。


しかし、少し違う点もあった。


城から来たであろう兵士たちが魔物と応戦し、人々に避難誘導をしていたのだ。



「あ!そこの二人!」



フィカスとセプテムに気付いた兵士の一人が駆け寄ってきた。



「今この町はモンスターの襲撃を受けているんだ!町の外に出ていた方がいい!」



「いえ、僕たちは冒険者です。えっと、戦いに来ました!」



「そうか!それはありがたい!それなら、逃げ遅れた人を見かけたらフロス庭園へと誘導してくれ!町に残っていた冒険者が、そこなら安全だと言っていたんだ!」



きっとアベリアたちの話だ。



「はい。分かりました!行こうセプテム!」



「分かってるわよ!」



町の中心部へと向かって行くと、大型の魔物・オークが複数体いるのが目に入った。



「まずはあれね。私はサポートにまわるから、あんたが先陣を切りなさい。」



「うん!分かった!」



ここまで来て、怖いなんて言ってられない。


生死を賭した勝負に恐怖心は拭いきれないが、それを強く意識してしまえば身体は強張り、たちまち殺されてしまうことだろう。


だから――。



「おい!僕が相手だ!」



――相手を威嚇するため、そして、自分を奮い立たせるためにフィカスは叫んだ。



「かかってこいモンスター!」



フィカスの言葉を理解したかは定かではないが、その声に気が付いた三体のオークがこちらに向かってきた。


どうする?短剣ではきっと通らない。別の武器が必要だ。動きを牽制するための武器が……。


大剣?いや……あれは駄目だ。今の自分の力では上手く扱えない。それならば――!


フィカスが選んだ武器は大鎌。


己の腕力で扱えるよう軽めに創造したが、牽制には充分だ。


敵を遠ざけるように大鎌を地面と水平に何度も振るい、隙が生まれるのを待つ。


焦るな……敵は三体。油断したら、相手を甘く見たら、あっという間にやられる。敵が焦れてアクションを起こすのを待て。



「伏せろ!」



背後から声がした。


咄嗟に身を屈めると、頭上を火炎が走っていった。


火炎はオークたちを包み込み、炎を消そうとオークたちはもがいた。


今だ――!


自分の存在がオークの中から消えた――その隙を逃さず、フィカスは大鎌を投げ捨て短剣を引き抜き、一体のオークの喉元に突き刺した。


これで一体は倒せたはず。次は……。


火を振り払い、拳を振り上げた姿が目に映った。


力比べでは勝てるはずもない。ここは避けて――。



「うわっ……うわわわわっ!?」



足が地面から離れ、フィカスの身体が宙へと舞い上がった。もちろん、自分の意思ではない。


セプテムの風魔法だ。



「岩だ!創造しろ!」



地上からそう聞こえた。


高所からオークを見下ろしている状態の最中、火山で見かけた巨大な岩石をイメージする。



「……これでどうだ!」



目の前に岩石を創造すると、それは物理法則に従って落下し、地上にいたオークたちを押しつぶした。



「こういう戦い方もある。あんたは自分の魔法の可能性を狭く考えすぎなのよ。」



風が徐々に弱まり、静かに地上に着地するとセプテムがそう言ってきた。



「うん……何か……凄かった……。」



本当に彼女には、色々と気付かされる。



「何ボーっとしてんのよ?ほら、次行くわよ。」

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