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マジックセンス  作者: 金屋周
第六章:陰謀
74/222

71:攻防

忙しい回。

「……フィカス――ぶっ叩くもん創ってくれ!」



叫ぶようにそう言い、ジギタリスは正面に突進していった。



「……猪か?」



シャドウは呆れ声を発し、右手を前に向けた。


魔法を発動する構えだ。


しかしジギタリスはシャドウには目もくれず、氷壁のところ――アベリアのところへと走っていく。



「叩くもの……壊すもの……!」



目を閉じ、想像力を働かせる。


ジギタリスが求めている物は……!



「――これだ!」



フィカスが創造したのはハンマー。大工たちが使用していた金槌を大きくしたものだ。



「おう!サンキューな!」



フィカスはハンマーを投げつけ、ジギタリスはそれをキャッチするとそのまま氷壁へ叩きつけた。


ガラスが砕ける音が響き、氷壁が崩れさった。


動けると同時にアベリアは床を蹴って、シャドウへと拳を突き出す。



「……ふんっ。」



シャドウはその場から動かなかった。左足を上げ、それを勢いよく下ろしただけだ。


だがそれだけで、床から突如として岩が隆起しアベリアの拳を受けた。



「……うくっ……!」



アベリアは岩と激突した衝撃に顔をしかめた。けれど、力は弱めずそのまま岩壁を打ち砕く。


火山で岩壁を破壊した時の痛みに比べれば、こんなの……!



「……チ。」



アベリアに僅かに気を取られた隙に、フィカスがシャドウに接近していた。


それと同時にジギタリスも背後から迫っていく。


前方の小剣と後方の大剣――どうやって捌くか……いや……。


耳に入ってきていた風音が消えるのを感じた。


想定していたよりも早い。他に気を取られたせいで、風魔法への意識が疎かになっていたか。となると、最優先事項は――。



「お前からだ!」



シャドウは振り向きざまに左手を空中へと向けた。


ターゲットは桃色の髪をした黒づくめの天使サンナ



「……ッ!ジギタリスッ!」



「おうよ!」



フィカスがシャドウの動作を見るや否や叫んだ。


それに大男ジギタリスが呼応し、大剣を天に向けて掲げた。同時に天使サンナが落下するように着地した。


次の瞬間、シャドウの左手から青白い閃光が発射された。


それはシャドウの目論み通りサンナには行かず、ジギタリスの大剣に吸い寄せられた。



「あばばばばば!!」



体感したことのない痛みに、ジギタリスは戦闘中にも関わらず変な声を上げた。


その様子を見て、シャドウは内心驚いていた。


今のは……避雷針か!


前回、一度見せただけの雷魔法の対策をしていたのか。



「まったく……味な真似を……ッ!」



風魔法で空中へと逃げ、アベリアの攻撃を躱した。そして、そのまま炎魔法を発動し、巨大な火球を床へと叩きつけた。



「……ってまずい……!」



カッとなって、殺す勢いの魔法を撃ってしまった。


こいつら自体は悪ではない。殺すのは本意ではない。


だが、シャドウの懸念通りにはならなかった。下方から突風が吹きわたり、火球は火花を散らしながら消え去った。



「……フゥ。」



「すげえぜアベリア!」



右腕を空中へと伸ばし、固まっているアベリアが目に映った。



「……まさか、撃ち返したのか?」



「ええ。そのまさかよ。」



余裕そうに返事をしたが、心臓はバクバク言っていた。


ふぅ……撃ち返せて良かった~!


肉体強化魔法を強く発動して身体を動かせば、その勢いで衝撃波が発生することは分かっていた。ならば、その加減を上手く調整出来れば――。


実践したことはなく、ぶっつけ本番になってしまったが、結果的に上手くいった。



「オラッ!」



ジギタリスが大剣を投げつけた。


シャドウは着地してそれを避け、斬りかかってきたサンナの刃を短刀で受け、そのまま交戦に入る。



「…………ジギタリス!」



大剣を創造し、フィカスはそれを手渡した。そして、己はサンナの加勢に入る。


フィカスはシャドウの背中側へと回り込み、その地点から小剣を振るう。



「……チッ!」



苛立たしげに舌打ちし、サンナの攻撃を薙ぐと身体を回転させ、空いている左腕でフィカスに殴りかかった。



「えっ!?」



小剣に対し素手できたシャドウにフィカスは同様する。このまま斬りかかっていいのか。その思考が彼の動きを一瞬緩めた。



「ぐぅ!?」



シャドウの左拳から氷柱が幾つも生え、それが小剣を受けフィカスの手に刺さった。


こんなことも出来るのか……!?


後退しながら、フィカスはシャドウの能力センスに驚嘆していた。


単純な才能だけでなく、応用力がある。それゆえに、予測が難しく、且つ高度な戦術をやってのけている。



「喰らえっ!」



振り下ろされた大剣を、風魔法を纏った短刀で横へと払い、そのまま身体を移動させサンナの攻撃を回避。火球を繰り出し四人を怯ませる。


よし。これで――。


シャドウはその隙にガラスケースを叩き割り、中のオーパーツを手に取った。


――後は撤退するだけだ。



「逃がすかっ!」



再び斬りかかってきたサンナのナイフを短刀で受け、そのまま迎撃しようとしたところで、視界の隅に銀の鈍い輝きが映った。


その正体は大鎌。


死神が持っていた大鎌を創造したフィカスが、それをシャドウの足元めがけて振ったのだ。


シャドウは風を纏いジャンプしてそれを避けた。ジギタリスが大剣を振り上げるように振るってきたが、さらに上空へと移動して刃から逃れる。



「そうくると思っていたぞ!」



金色の翼をはためかせ、サンナがシャドウの頭上を取っていた。



「ふん……不意打ちにもならない……ッ!?」



高度を落とし、サンナの空中からの攻撃をも躱したシャドウ。


その身体に、アベリアの強打が決まった。

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