07:クエスト
遅れて起床したジギタリスを加え、四人で朝食を軽く摂り受付へと足を運んだ。
「調査系のクエストですか……?」
サンナの提案により、まずは軽めなクエストを探してもらう。
「ああ。ありましたよ。砂漠にある遺跡の調査です。大広間があるのですが、そこの壁画の奥にも部屋があることが分かりました。その部屋の入り口を探すのがこのクエストですね。」
「じゃあ、それを……。」
クエスト内容が書かれた紙をフィカスは受け取り、四人でギルドを出る。
「砂漠まで行くとなると、装備を整えていきたいところです。」
馬も欲しいです。とサンナは付け足した。
「うん。けど……。」
肝心の資金がまだない。
フィカスは武器も持っていない。
「歩いて行けないことはねぇ!歩こうぜ!」
「そうね~。そうしましょう。」
ジギタリスの提案とアベリアの賛同によって、徒歩での移動が決まってしまった。
町を出て、西へとひたすら歩く。やがて草木も少なくなっていき、気が付くと辺りは荒野のようになっていた。
「それで、砂漠にはいつ……?」
「は?もう着いてますよ?」
「え?」
砂なんてほとんどない。
「あら~。砂漠って礫砂漠のことだったのね~。」
聞き慣れない言葉にフィカスは首を傾げた。
「砂砂漠なんて、ここいらにはありません。大体、世界の砂漠はほとんどが礫砂漠でしょうが。」
「あーうん……そうなんだ……。」
これまで村から出たことがなく、勉強もほとんどしたことがないフィカスにとって、当然のように言われてもピンとこなかった。
「ガハハ!でも砂漠って聞くと、やっぱ砂があるイメージだよな!絵本とかでも普通そうだろ?」
「まぁ……そうですね。」
キツイ言い方をしてしまったと、サンナは反省するようにジギタリスに同意した。
「ところでサンナ、その格好だと暑くないか?」
黒づくめの肌を隠す衣装に不安は確かに出てくる。
「いや、慣れてるので。これくらいの暑さなら……。」
よく見ると頬に汗の粒が浮かんでいる。
少なからず、暑いとは感じているらしい。
「そう言えば、フィカスの武器はクエストの報酬で買うとして、もし他のパーティーと当たった時は、どうするんですか?」
「他のパーティー?」
「ええ。同じクエストを受注したパーティーがいても不思議ではないので。報酬の取り合いになるため、大抵は勝負になると思いますが。」
その点を全く考えていなかった。
そうか。戦う相手は何もモンスターだけじゃない。
自分がまだ戦えないことは一先ず置いておいて、リーダーとして考えなければならない。
「できれば、戦いたくない。けど……。」
「けど?」
フィカスは真っ直ぐにサンナを見る。
「譲ってばっかりだと、こっちも生きていけないんだ。だから、状況によっては戦った方がいいと思う。」
生きるために何かをするのはお互いさま。思いやりばかりが良いとは言えない。
「じゃあ、そういうこととして……アベリアとジギタリスは戦闘経験は?」
「ない!」
「ないわね~。」
サンナは肩をすくめた。
「そうですか。まぁ私が戦うので、サポートをやってください。」
「おう!任せとけ!」
「あっ……見えてきた。」
遠くに見える断崖。その一角に洞窟のようなものがある。
地図によると、それが調査対象の遺跡のようだ。