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マジックセンス  作者: 金屋周
第五章:家族
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57:妖艶

「……。」



アモローザに呼びかけられたアベリアは、フィカスの肩を掴んで顔を伏せたまま動こうとしなかった。



「どうしたのかしら?リア?ふふっ。こう呼ぶのも本当に久しぶりね……リア?顔を私に見せて?」



「……。」



フィカスの肩を掴む力が強くなる。



「困ったわね……リア、貴女……悪い子になったのかしら?」



悪い子。その言葉にアベリアは身体を震わせ、不安げな表情を見せおずおずとフィカスの陰から出てきた。



「……私は……悪い子ではありません……姉さん。」



姉さん?


フィカスたち三人はその言葉を聞くなり目を丸くして、アモローザとアベリアを交互に見比べた。対照的と言っていい外見の二人だが――。


どこか、似ている……。



「そうよね。私の妹が悪い子のはずがないもの。もしそうなら、ここにいるがないわけですし。それで、どうしたの?家出はもう終わったの?」



クスクスとアモローザは笑った。が、その笑みを見てフィカスは背筋が凍るようだった。


目が笑っていない。


それに加えて、高圧的な雰囲気が彼女にはあった。



「ローザ姉さん……私は冒険者になったの。だから……その……もう家には……。」



どんどん声が小さくなっていく。



「戻る気は……なくて……。」



「あら?冒険者?」



アモローザは改めてフィカスたち三人に目を向けた。


観察するような、舐め回すような視線が三人を撫でる。



「……そう。話は聞いているわ。この子たちが、貴女の言うお友達なのね?」



「……はい……そうです。」



「ふふっ。貴女に相応しいお友達ね。良かったわ。リアが良い子にしてたみたいで。ここに戻ってきたのは、何かお仕事なの?」



「いえ……今日は仕事が……ないので、皆と観光に……。」



アモローザは手を伸ばし、アベリアの頬に触れた。そのまま手を滑らせ、そっと顎をつまむ。



「そう。楽しそうね。」



アベリアは顔を上げさせられ、真っ直ぐに瞳を覗き込まれる。



「せっかく帰ってきたのだし、上がっていきなさい。皆さん、きっとお喜びになるわ。」



「……はい…………。」



妖艶な美女はふっと笑った。



「良い子ね。そこで待っていなさい。召使いを呼んでくるわ。それと――お客様、私事に巻き込んでしまって、申し訳ありません。もしよろしければ、リアと一緒に上がっていってください。」



チラリとアベリアの方を見ると、プルプルと震えていた。


一人にしない方がいい。


そう判断し頷いた。



「はい。では僕たちも……。」



「ありがとうございます。それでは、少々お待ちください。失礼しますわ。」



優雅にお辞儀を一つし、アモローザはその場を去っていった。


それと同時に、アベリアは腰が抜けたようにへなへなとその場に座りこんだ。



「なんか怖ぇ姉ちゃんだな。つーかアベリア、お前姉ちゃんがいたんだな……ってそれよりも!お前、グランディフローラ家だったのか!?」



「う……うん……。」



いつもの柔和な笑みが全くない。今にも泣き出しそうな顔をしている。



「どうしたんですか?……お姉さんが怖いんですか?」



「姉さん……というより、この家が怖いの。だから……ここには来たくなくて……。」



それを聞いて、ジギタリスは頭を掻いた。



「そ、そうだったのか……わりぃな。」



「ううん。いいの。はっきり言わなかった私が悪いんだから……。」



無理やり笑顔を作って、アベリアはゆっくりと立ち上がった。



「アベリアお嬢様!よくぞお戻りになられました!」



嬉しそうな声とともに、駆け足でメイド服を着た女性がやって来た。



「お久しぶりでございます!お部屋もそのままにしてあります。さぁお屋敷に。お友達の方々もご一緒に!」



「わ、私は別に……帰ってきたわけじゃなくて……。」



半ば強引に連れられ、庭園を十分ほど歩き大きな屋敷前までやって来た。



「どうぞ、お入りください。」



赤い屋根に白い壁の大きな家。これまで見てきたどの家よりも大きく広い。


豪華な装飾の付いた門のような立派なドアを開けると、綺麗に掃除された大きなホールとなっていた。レグヌム城と雰囲気がよく似ている。



「お茶を今、お持ちいたしますね。」



「うん……部屋に行くから、そこに持ってきて……。」



「はい。かしこまりました。」



白いカーブした階段を上り、長い廊下を突き当りまで歩いた。



「えっと……ここが私の部屋……。」



「…………そうなんですか……?」



ベッドや衣装タンスが置いてある、広くて綺麗な部屋。


ぬいぐるみや人形があちこちに置いてある。


なんというか、子供っぽい部屋だ。

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