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マジックセンス  作者: 金屋周
第五章:家族
55/222

52:長閑

ギルドのテーブルにて――。


卓上には皿はなく、カードだけが置かれていた。



「うーん……二人でトランプするのは、やっぱり無理なんじゃないかな?」



「そ~ね~……どうしようかしら?」



二人がいつ帰ってくるか分からない以上、ギルドを出るわけにはいかない。この場所に残っている必要がある。


そこで、暇つぶしにとアベリアが受付嬢のコールからトランプを借りてきた。フィカスにルールを教え、ババ抜きを開始したのが現在だ。


アベリアもトランプに対して詳しくなく、ババ抜きくらいしかまともにルールを知っている遊びがない。


そんなわけで二人は早々に勝負に飽きてしまい、タワーを作ることに意識が傾き始めた。



「……やっぱり、勉強をしようかな……。」



以前、火山で濡れてしまった本はすっかり渇き、一応読める程度には回復していた。もっとも、文字がかすれてしまったり、ページ同士がくっついてしまい読めない部分も多々あるのだが。



「う~ん……そうね~……。」



アベリアの返事はどこか上の空。


五段目まで積み重なったトランプタワーから目を外すと、テーブルに突っ伏したアベリアがそこにはいた。



「……アベリア?」



「……そうね~。」



「疲れてる?」



「……そうね~。」



駄目だ。完全に上の空だった。目は虚空を見つめ、手に数枚持ったカードをいじっている。


どうしよう?


一度意識が逸れると、先ほどまで何で熱中していたのかが分からなくなった。タワーを崩し、カードをまとめて箱に戻す。


後でコールさんに返しにいこう。



「さて、と……。」



どうしようもなく退屈だ。窓に目をやると夕日が沈んでいくのが見えた。


思っていたよりも長い時間、よく分からない作業に没頭していたようだ。


これからの時間、何をして過ごすか。


そうだ、訓練するのはどうだろう。ちょうど良い相手もいることだし。



「マカナ、少し訓練の相手になってもらえないかな?」



何かの本を読んでいたマカナにそう声をかけた。



「あーいや、今オフなんで。営業時間に出直してください。」



「あ、うん……そう……。」



こっちも駄目だった。


いよいよ本格的にやることがなくなった。仕方がない。遅めの昼寝でもするとしよう。


コールに借りたトランプを返すと、フィカスはアベリアの向かいの席でテーブルに突っ伏して目を瞑った。


……。


…………。


………………。


……………………。



「おーい。起きろ。待ちくたびれたのか?」



どれくらいの時間が経っただろうか。フィカスは優しく揺り起こされた。



「ん……ジギタリス?おかえり……。」



重い目を開けると、室内は灯りが点され窓の外は真っ暗になっていた。



「あれ?今……何時……?」



前を見ると、同じく寝ていたアベリアがサンナに起こされていた。



「七時になったところだ。んで、二人が起きたところで飯にしようぜ。」



「うん……あ、そうだ。マカナが……。」



「マカナ?あいつがどうかしたのか?」



ギルド内を見渡すと、寝る前と変わらぬ位置で読書する姿があった。



「うん。レグヌムに来てほしいって……おーい、マカナ。」



「あ、出発っすか?」



フィカスに呼びかけられ、本を閉じマカナは立ち上がった。



「じゃあ行きましょうか。俺について来てください。あー飯、買っといた方がいいっすよ。レグヌムまで一時間くらいかかるんで。」



彼の助言に従い、ギルドで持ち運べる食料と水を買い、ギルドを出てそのまま町の外へ。ノウェムと別れた場所であり、死神と出会った場所だ。


そこに大きな幌馬車が停まっていた。



「さ、乗ってください。出発しますよ。」



馬車にはラグが敷かれ、大小のクッションが置かれていた。



「随分と良い馬車だな。」



「俺の雇い主……エレジーナの私物です。まぁくつろいでください。操縦は俺がやるんで。」



「儲かってるんですね。」



各々気に入ったクッションに座り、パンをかじる。



「そういえば、二人とも思ったよりも早く帰ってきたね。」



「おう!色々あってな……フィカス!俺たちはずっとお前の仲間で友達だからな!」



「そういうことです。」



ジギタリスとサンナはそう言って、力強く頷いた。



「ええ!?急にどうしたのさ?」



そう言ってくれるのは嬉しいが、照れ臭さもある。



「何でもないって!俺たちは最高のパーティーってことだ!」



「そうね~。良い仲間に巡り合えて……パーティーを組めて幸せだわ~。」



「アベリアまで……あはは、ありがとう。」



何だか恥ずかしいけど、嬉しいな。

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