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マジックセンス  作者: 金屋周
第五章:家族
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46:目覚め

新年から新章

「ほら、早く創ってくれよ。」



「お前がいないと困るんだって。」



いや……僕は……。



「どこいってたんだ?手伝ってくれよ。」



「皆、お前を頼りにしてんだからさ。」



違う……皆が求めているのは……僕じゃなくて……。



「どうしたんだ?俺たち、友達だろ?」



「友達の頼みなんだ。聞いてくれるよな?」



やめて……僕は……。



「早くしてくれよ。待ってんだからよ。」



嫌だ……僕は道具じゃない……だから……。



「やめてくれぇ!!」



自分の声に驚いて目が覚めた。


すっかり見慣れたギルドの天井が見える。


フィカスは小さく息を吐いて、自分が置かれている状況を整理する。


今、ベッドで寝ていて、嫌な……昔の夢を見て……えっと……。


そうだ。死神と戦って……あれから……。



「おっ?やっと起きたか。」



誰かが顔を覗き込んできた。白い髭の生えた褐色の男だ。



「ジギタリス……?えっ?どれくらい寝てたの!?」



一体、何年寝れば同い年の彼があんなに髭を生やすというのか。



「おう!三日だぜ!」



「そっか……三日も……三日?」



「おう!助かって良かったぜ!ナイスガッツだ!」



そう言ってジギタリスは付け髭をとった。そして「サプライズの変装だ。」と笑って見せた。



「変な冗談はやめてよ……。」



身体を起こしてみると、痛みはほとんどなかった。意識がなかったので詳細は分からないが、きっと彼の回復魔法のおかげなのだろう。



「腹減ったろ?ちっと待ってろ。なんか持ってくるからよ。」



「うん。ありがとう。」



意識がなかった三日間。飲まず食わずだったのだ。当然、飢えているし渇いて……。



「喉はそんなに渇いてない……?」



「水はサンナが飲ませてたみたいだからな。どうやって飲ませてたかは知らんけど。皆が来たらお礼言っとけ。」



そう言ってジギタリスは部屋を出ていった。


水は飲ませてくれていた……。


無理やり水を流し込まれる絵面を想像してしまい、フィカスは首を横に振った。


いくらなんでも、そんな乱暴なことを……やらないとは言い切れない。サンナならやりかねない気がする。



「目覚めたんですね。良かったです。」



「調子はどう?フィーくん?」



パンと瓶を持ったアベリアとサンナが部屋に入ってきた。



「うん。多分、大丈夫だと思うよ。二人とも、ありがとう。それで……ジギタリスは?」



「ジギくんなら、クエストを探しに行ったわよ。お金がそんなにないからね~。」



「……そっか。」



僕が寝ている間、ずっとこの部屋を借りていたんだ。当たり前のことだけど、それはいつもよりもずっとお金がかかる。



「さぁ食べてください。食欲はないかもしれないですけど、食べ始めたらきっと弾みがつくので。」



パンと瓶に入った牛乳を受け取り、口に含んでみると想像以上に美味しかった。ずっと何も食べていなかったせいかもしれないが。



「ごめんね。私たちも一緒にいたら、きっとフィーくんがこうなることはなかったのに。」



「悪いのは死神です。アベリアが負い目を感じる必要はありません。」



サンナの言葉にフィカスも頷く。



「うん。サンナの言う通りだよ。それに、ネモフィラさんたちが戦ってくれて……そうだ。ネモフィラさんたちは今、どこにいるの?」



「隣町……レグヌム城下町に行ったみたいです。勇者とその仲間たちですから、何かと忙しいのでしょう。きっと。」



「そうなんだ……お礼を言っておきたかったけど……。」



「次に会った時に言えばいいことです。」



パンを食べきり、牛乳を一気に飲み干す。



「まぁ……うん。そうだね。あ、そうだ。水を飲ませてくれたって聞いたけど、一体どうやって……?」



ふとそのことを思い出し、何となくで聞いてみたものの、サンナは顔を逸らして何も答えなかった。心なしか、頬が赤い気がする。



「……あら~。」



そんなサンナの様子を見て、アベリアは口元に手を当てて笑った。


どうしたんだろう?


その疑問を口に出そうとした時、扉が開いた。



「よう!楽そうなクエストを見つけてきたぜ!」



ジギタリスが手に持つクエストの説明用紙を三人に見せる。



「ずばり!村興しの企画だ!」

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