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マジックセンス  作者: 金屋周
第四章:死神
47/222

45:理由

仁王立ちをし、死神を睨みつける黒髪の少年――リコリスは戦況を素早く理解する。


そして、注意を自分へと引きつけるために大声で話す。



「この僕が来たからには、もう大丈夫さ。勇者は見つからなかったが、彼が出るまでもない。なぜなら、この僕がいるからね。」



自信満々にそう宣言したが、内心リコリスは焦っていた。


スクォーラくんに会えなかったのは痛すぎる……!


パーティーメンバーを含めて自分の認めた強者たちが、揃いも揃ってやられかけているのだ。


この戦況を見て、動揺するなというのは無理な話だ。



「さぁ死神。ここからは僕が相手をしてやろう。覚悟したまえ。」



「……。」



緊張した空気がこの場を支配する。


霊体化を上手く使って、逃げ続ければ大丈夫か……?


戦う算段を立てていると、意外なことに死神はリコリスに背を向けて駆けだした。



「えっ……なに……逃げた……?」



一目散にこの場を去っていった。リコリスのはったりが効いたのか、はたまたこの人数を相手にするのは分が悪いと判断したか。


ともかくとして、冒険者たちに脅威を突きつけた死神はいなくなった。



「くっそ……逃げたか……。」



「いや、今の俺たちでは死神には勝てなかった。だから、これでいいんだ。ラフマ。」



理由は不明だが、勝利に変わりはない。くすぶる感情もあるが、それよりも今は――。



「フィカスくん!大丈夫か!?」



「フィカス!」



リコリスとサンナが倒れているフィカスに駆け寄った。次いで、ネモフィラとラフマが近寄り二人の背中越しに容態を窺う。



「……うん……大丈夫…………。」



消え入りそうな声で、フィカスはそう答えた。


身体中に切り傷があり、至るところから血が流れている。



「今すぐ治療を!」



「ギルドに行きます!ジギタリスの治療魔法があれば!」



「あいよ!」



一番力があり、速さがあるラフマがフィカスを背負い、ギルドめがけて走り出した。



「……ちょっと遺留品でもないか、見てから僕は行くよ。先に行っててくれ。」



死神のヒントは何か残っていないか。


もしあるのなら、今この場で回収しておきたい。時間が空けば、死神に回収されてしまう恐れがある。



「……分かった。無理はするなよ。」



ネモフィラはリコリスに頷いて、すでに遠くなったサンナとラフマを追いかけていった。



「さて……と。」



武器の残骸、血の痕、荒れた地面……。


おぞましい雰囲気の戦場跡地を見渡して、リコリスは考え込む。


死神はなぜ、逃げ出したのか……?


僕一人が参戦したからといって、そこまで不利になるわけではないと思う。


散らばっている小石を拾い上げると、断面が非常に滑らかだった。



「多分……。」



あの大鎌の仕業だ。この世の武器とは思えない切れ味だ。


これほどの武器を持っているなら極端な話、数十人を相手にすることも可能だろう。


一撃で切り刻めるのなら、遠距離攻撃にだけ気を付けていれば良い。


それなら、なぜ逃げたか?否、逃げる必要があったのか?



「相手にできる人数に、制限があるとか……?」



そう口にして、すぐに違うと頭を振った。


馬車の重量制限でもあるまいし、そんな奇妙な制約があるとは考え難い。


となると……。



「……時間か?」



大鎌が全てを斬る時間が定まっており、僕が来たタイミングでちょうどその時になった?


先ほどの憶測よりは、しっくりくる気がする。


もしそうだとしても、それを突いた戦術をとるのは難しそうだが。


辺りをよく観察してみるが、他には何もないようだ。


元々、他に何も遺留品はなかったみたいだ。



「んー……成果なし、か。」



色々と推測することはできたが、具体的に何か得られたわけではなかった。


一先ず、現場調査はこれでお終い。


ギルドに向かって、一番頑張った彼の様子を見に行くとしようか。

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