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マジックセンス  作者: 金屋周
第四章:死神
46/222

44:死闘

「こっちです!急いで!」



サンナはネモフィラとラフマを引き連れて、町中を走っていた。


リコリスとも出会ったが、彼は勇者を捜すために別行動だ。


ジギタリスとアベリアも捜したが、その姿を見つけることはできなかった。おそらく、事情を知らないためギルドに戻ったのだろう。だが、ギルドにまで行く余裕は今のサンナの中にはなかった。



「……あそこです!」



赤いローブを着た人物に追い詰められるフィカスが遠方に見えた。



「がっ!」



フィカスは腕を軽く斬られながらも致命傷を免れた。


自然と呼吸が荒くなる。切り傷は大鎌が振られるたびに増え、運動と失血でどんどん身体が重くなる。


くっ……そ……。


足が重い。身体がだるい。


まるで寝起きかのように、視界がはっきりしない。


夜の闇と相まって、死神の動きが分からなくなってきた。


頭が回らない。


何かを創造して逆転する。というのは、もはや不可能だろう。



「……っ…………!」



よろめきながら刃を躱したが、足が止まった。痛みと疲労で限界がきている。


もう……逃げることもできない……か……。



「う……らああああぁぁぁ!!!」



諦めたその時、白い衝撃波がめがけて飛んできた。


死神は身体の向きを変え、大鎌を横に振って衝撃波をかき消した。


その直後、豪炎が生き物のように死神に襲いかかった。


それに対しても大鎌が振られ、火の粉を払うかの如く豪炎は消えた。



「フィカス!!」



サンナが両者の間に飛び込んできた。そして、フィカスをかばうように前に立ち、死神に斬りかかる。



「……。」



死神は柄でナイフを弾くと、大鎌を背中側に振った。



「チィ!」



背後から鉄杖で殴りかかろうとしたネモフィラが舌打ちした。鉄杖は大鎌の刃によって真っ二つに斬られ、ネモフィラは後退を余儀なくされる。


その隙にサンナは再び、死神に襲いかかる。


その視界の下から銀の刃が映った。地面を通して真下から大鎌が飛び出した。



「……くっ!」



翼を羽ばたかせ、サンナは急停止。


胸を浅く斬られただけだ。刃は上を向いている。好機チャンスだ。


そう思って三度前進する。それに対する死神の反応は、大鎌の勢いを殺さずそのまま刃を振り上げたのだった。そして、肩を大きく回して背後に。一回転して再び地面の中から刃が飛び出した。



「なっ……!?」



斜めに動くことで直撃を免れたが、死神に腕を掴まれた。そのまま振り回され、宙に放り出された。


サンナは飛びかかろうとしていたラフマと空中で激突し、二人は落下した。


その様子を横目に死神は、立ったまま動けないフィカスとの間合いを詰める。



「させんっ!」



ネモフィラが炎魔法を発動し、フィカスと死神の間に炎の障壁を作った。


だが、死神の大鎌は紙を切るように炎を裂き、何事もなかったように前進する。



「待ち……やがれぇ!!」



獣のようにラフマは地を蹴り、死神の背中めがけてその腕を、爪を振るう。



「……一々吠えるな。」



素早く体の向きを後ろへと変えると、ラフマを正面に見据え死神は大鎌を振った。



「ラフマッ!」



サンナが飛んでラフマの背中に追いつくと、服の襟を掴んで後方に引っ張った。これにより刃は空振りし、空気のみを切り裂いた。


死神はラフマに詰め寄ろうとしたが、ネモフィラが火炎弾を発射しその歩みを止めた。



「……っ!」



死神の意識は助けに来た三人に向いている。


フィカスは身体の痛みをこらえ、よろよろと立ち上がった。


距離を取るタイミングは、きっと今しかない。



「こんの……野郎ッ!!」



左右にフェイントをかけながら、ラフマは衝撃波を出して攻撃する。だが、それは全て死神の大鎌によって掻き消える。


ネモフィラが炎魔法でラフマを援護するが、死神はまるで気にしない様子で二人の攻撃を斬っていく。


その戦況を見て、サンナは思考する。


迎撃するのは無理だ。フィカスを何とか救出して、逃げないと……。


そのためには、死神の注意をより引きつけられる存在が必要だ。


ここにいる三人では、それには一手足りない。


せめてもう一人……。


サンナはエレジーナの姿を思い浮かべる。無い物ねだりなのは分かっている。それでも、彼女に来てほしかった。



「待たせたね!もう大丈夫だ!」



その時、とある人物の声が辺りに響き渡った。

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