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マジックセンス  作者: 金屋周
第四章:死神
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43:大鎌

飛び去ったサンナを目の当たりにしても、死神の様子に変化はなかった。ペースを乱すことなく、一歩一歩着実にフィカスに近づいてくる。


背中を丸めているため分かり辛いが、身長はかなりある。


ジギタリスと同じくらいの身長かな……。


何でもいい。とにかく情報が欲しい。情報が多ければ多いほど、生き延びる可能性も比例して高まっていく。


距離が大分縮まってきた頃、死神はゆっくりとその手に持つ大鎌を振り回し始めた。


攻撃態勢に入った……!どうする……?


大鎌という、目にしたことのない武器。どういう戦い方をするか何も知らない。


避けるという選択肢がベターだろう。


来る……!


刃の角度が僅かに変わった。それを見てフィカスは後ろに下がった。が、振られた大鎌は至近距離を掠めていった。



「……くっ!」



想定したよりも近かった。独特の形状と動きのせいで軌道が読み切れない。


下手に逃げに入るのは逆効果か。


そう判断しフィカスは、足を止め攻撃に転じる。


真っ直ぐに突っ込むフリをして、直角に曲がり死神の右側に回り込む。


そして、伐採するかの如く小剣を地面と水平に振った。



「……!?」



目の前に鈍く輝く銀が現れた。飛びのくと自分の顔があった空間を大鎌の刃が切り裂いていった。


一度はフィカスを逃した大鎌だが、背中側から回り込むことで眼前へと現れたのだ。長い柄と独特の刃を持つからこそできた行動だ。



「……。」



驚きと恐怖で心臓が落ち着かないフィカスとは対照的に、死神は何も言わずに彼を見つめている。


これまでの戦闘は違った恐怖心が精神を蝕んでいく。


たった一つの選択肢・行動が己の生死を分けている。


ならば、その選択肢を可能な限り減らすべきだ。


小剣をいったんしまい、大剣を創造する。



「いくぞっ!」



敵を威嚇するため、そして自分を鼓舞するためにそう叫び、大剣を構えてフィカスは直進した。


大剣の強度と頑丈さがあれば、大鎌に競り負けることはない。


はずだった……。



「……えっ?」



大鎌が振られた。そう感じた時には、大剣は根元から持っていかれていた。何が起こったのか分からないまま、フィカスは手元に残った柄を見る。


大剣の断面は綺麗だった。まるで一流の職人が研磨したかのような断面だ。


あっけにとられたのは一瞬。すぐに我に帰り残った大剣を投げつける。


それも大鎌によって阻まれた。真っ二つに斬られ、大剣の残骸が地面に落ちる。


あの大鎌……。



「普通じゃない……。」



いくら何でも、切れ味が良すぎる。金属をあそこまで簡単に斬ることなど、できるはずがない。


何か秘密があるはず……それを確かめる!


距離を取り、巨大な壁を創造。これを生身で乗り越えるのは不可能だろう。


その壁から、銀の刃物が飛び出した。そのまま刃は縦横無尽に動き、壁をゼリーを斬るかのように切り刻んでいく。


全体を斬られ壁は崩壊した。それを見てフィカスは確信した。


やっぱり、あの大鎌……何でも斬れる……。


あの風貌もそうだが、死神と言われる所以はあの大鎌か。全てを切り裂くことのできる大鎌なぞ、この世の物とは思えない。


しかし、その大鎌の性能が分かったところで、何か進展があるわけではない。


むしろ、理解してしまったからこそ、より慎重にならざるを得ない。



「どうした……他に策はないのか……?」



死神がそう語りかけてきた。


しわがれ声。男性の声だ。



「……。」



「ないようだな……。無言は肯定と同じだ……。」



散らばった石ころを蹴飛ばし、ゆらりと死神が迫ってきた。



「ぐっ……!!」



円を描き、大鎌は生き物のように動き命を狙ってくる。武器を振るうこともできず、フィカスはただ我武者羅に逃げ回った。



「……った!」



足に痛みが走った。下を向いた大鎌が地面を切り裂き、地中からフィカスの足を斬った。


その痛みに顔を歪ませるが、足を止めるわけにはいかない。幸いにも斬られたのは足の端。我慢すれば充分に動かせる。


形状と性能。


その二つを併せ持つ大鎌に死角はない。逃げ道などない。


けれど、誰かが来るまでは。


仲間が駆けつけるまでは、何としてでも生きながらえなければいけない。


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