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マジックセンス  作者: 金屋周
第四章:死神
43/222

41:姫

「えっと……どちら様ですか?」



おずおずとフィカスは女性にそう尋ねた。



「失礼。名乗っていなかったわね。私はノウェム・レクス・ベルラトール。怪盗シャドウと戦った者を捜しているのだけれど……あなたがその人物よね?」



「あ、はい……。」



苗字がある。上流階級の人だ。


教育機関や住民登録といった、個を識別するシステムが存在しないこの世界で、苗字を持たざる者は決して少なくない。それがなくとも、不自由しない世の中だからだ。


そのため、苗字の文化を持つのは金や権力を持った者たちだけである。



「失礼ですが……ベルラトールの名を持つということは、レグヌムの者。という認識でよろしいでしょうか?」



サンナの質問に女性は頷いた。



「ええ。隣町にあるレグヌム城から来たわ。」



「ということはあなたは……ノウェム姫……ですよね?」



姫?


フィカスの頭に疑問符が浮かんだが、女性は肯定の意を示した。


そして、腰に手を当て胸を張る。



「いかにも!私がレグヌム城十一代目王女になる予定のノウェムよ!しかし、ピンクの髪のお嬢さん。一つ訂正があるわ。私はただの姫ではない!私は姫騎士よ!」



「……はぁ…………?」



気まずい沈黙が流れる。


ノウェムは赤面し、話を再開した。



「……コホン。怪盗シャドウには王国も手を焼いていてね。奴に関する情報が欲しいのよ。だから、私がここに来たのよ。それで、コールに話を聞いたら、あなたのパーティーが怪盗と戦ったって聞いたの。」



「つまり、私たちから情報を聞きたいと?」



「ええ。ノーとは言わせないわよ。さて、良い時間だし、食事でもしながら話としましょうか。勇者御用達のレストランがあるって聞いたわ。そこに行きましょう!」



うーん……この人。強引というかなんというか……パワフルな姫様だなぁ。


半ば強引にフィカスとサンナはノウェムに連れていかれ、ヴェイトス・オムニスまでやって来た。



「中々良い雰囲気のお店ね。あ、お金は私が全部出すから、その点は心配しないで。」



「はい。どうも。」



「サンナ……。」



その気であっても、少しは遠慮した方がいいんじゃ……。直球なのがサンナらしいけど。


着席するとフィカスたちは知っていること――つまり、アース美術館でシャドウと戦った時のことを話した。



「……なるほど。複数の自然魔法を使うことができる、か。にわかには信じがたいけれど、あなたたちが嘘を言っていないことくらい分かるわ。あ、お水ください。」



口元についたソースを拭い、通りかかったウェイトレスのセプテムに注文する。



「はーい。あの、お客様?怪盗シャドウと戦ったことがあると……すみません。聞こえてしまって。よろしければ、怪盗シャドウについて、知っていることを教えていただけませんか?」



三人のグラスに水を汲み、セプテムはフィカスの横に立った。



「はい。あ、でも、僕たちは戦った経験くらいしか話せることがなくて……ねぇサンナ、何か気付いたことって何かあるかな?」



せっかくだから、セプテムさんにも聞いてもらった方が良い。


フィカスはそう考えていた。


第三者の視点から、何か気付くことがあるかもしれない。



「そうですね……アベリアよりも少し小さいくらいでしたし、やはり噂通り、十二歳くらいの少年かと。声変わりもしてませんでしたし。他に推理できる点は……。」



顎を摘み、サンナは考え込む。



「あ、金持ちの犬……とかなんとか言ってなかったかな?そういうのも、何かヒントになったりしない?」



「えっと……お金持ちの方が嫌い。みたいな感じでしょうか?」



セプテムは首を傾げた。


同じく、ノウェムも唸る。



「美術品を持っているのは、普通お金持ちよ。それが理由だとしても……ヒントにはならなそうね。」



「そうですか……すみません。あっ!そろそろ仕事に戻らないと!それではお客様、引き続きお食事をお楽しみください。失礼します!」



「分かってはいたけど……やっぱり難しい話よね。」



駆け足で去っていくセプテムの背中を見て、ノウェムは溜め息を吐いた。



「あの……ノウェム姫様?」



「あ、敬称はいらないわ。ここでは私も一国民よ。」



「はい。では……ノウェムさん。聞きたいことが……。」



怪盗とは別に、フィカスには気になっていることがあった。



「死神について、何か知っていますか?」

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