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マジックセンス  作者: 金屋周
第四章:死神
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37:六号

「始まっちまったみたいだな……。」



ジギタリスはフィカスとエレジーナが戦い始めたのを見てから、己の前に立つ小さな少女を見る。



「できればやりたくねぇんだが……そうはいかないのか?」



エレジーナに六号と呼ばれていた少女は、黙ってこくりと頷いた。



「じゃあ……やってやるぜ。」



ジギタリスは背中の大剣を引き抜き、六号の様子を窺う。一見、どこにでもいるような、赤銅色の髪をミディアムヘアにした小柄な少女。武器を携帯しているようには見えない。



「……。」



六号は自分の腹部に手を伸ばした。



「……なんだ?」



何か細長い物を引っ張りだした。腰に巻き付けてきた、ムチのようなものだ。二本取り、両手にそれぞれ一本ずつ持つ。


腕を小さく振るうと、それは蛇のようにジギタリスに向かってきた。


大剣を横向きに構え、その攻撃を受けると金属がぶつかり合う音が鳴り響いた。



「なんだっこれ……!?」



ムチではない。金属だ。けれど、ムチほどではないにしても、普通の武器では考えられないほどしなる。


ただ、リーチはそれほど長いわけではない。おそらく、槍と同じくらいの範囲だ。



「……。」



六号は顔色一つ変えずに、両手を動かして猛攻を仕掛けてきた。ジギタリスは大剣を細かく振って対抗するが、よくしなるその武器は時たま大剣の脇を抜けて腕を斬っていく。



「くっそ……!」



戦い辛い。どうする?


アベリアとは離れている。合流するとしたらフィカスの方だ。フィカスなら、この少女と上手く戦えるかもしれない。


いや……それはダメだ。


ジギタリスはフィカスと連携を取った経験がない。一方、向こうのパーティーは連携もできるだろう。下手に合流しては、かえって状況を悪化させてしまう恐れがあった。


つまり、それぞれが一対一で戦い、誰かが勝った後に別の誰かに加勢する他、優位に立つ方法はない。


ならば……!



「攻撃に出るしかねぇよな!」



いったん刃の届かぬ範囲まで下がり、ジギタリスは突進を仕掛けた。


一対一で自分に回復魔法を使う暇はない。ならば、回復が必要になる前に勝つのが一番だ。攻撃こそ最大の防御。そういう戦況だ。


パワーは完全にジギタリスが勝っている。ダメージ覚悟で攻撃をしていくと、段々と六号の表情が変わっていった。


傷を負いながらも攻めていき、民家の壁に追い詰めた。



「……や。」



そこで、初めて六号が口を開いた。



「や?」



「……やばい。」



ボソッとそれだけ口にして、六号はジャンプして民家の屋根に上った。その際、髪が揺れて普通よりも長い耳がチラッと見えた。


屋根の上からジギタリスを見下ろすと、ポケットに手を入れて何かを取りだした。


小さな球体だ。それをジギタリスの足元に叩きつけるように投げた。地面に当たると破裂し、ベチャっと音がした。



「うおっ!なんだこれ!?」



粘液のようなものが足と地面を繋いだ。動こうとしてみるも、くっついたように動かない。



「……勝ったな。」



そう独白して、六号は屋根から下りてきた。そして、しなる刃で再び猛攻を仕掛ける。


ジギタリスは足を固定され、その場で凌ぐことを余儀なくされている。一歩も動けないのでは、どうしても防げない攻撃が出てきてしまい、少しずつ確実に傷を負っていく。


大剣はそのサイズから防御できる範囲も広いが、どうしても動きが大きくなってしまい、どこかで隙が生まれてしまう。


動きが制限されているこの状況では、そのデメリットが大きく響いていた。


こりゃあ負けだな……。


ジギタリスは攻撃を防ぎながら、心の中でそう呟いた。


この俺は。


自分一人では、もうこの戦況を覆せない。けれど、パーティー単位で負けたわけではない。


フィカスかアベリアが勝って応援に来れば、逆転することができる。


ならば――!



「ガハハ!それまで耐えるしかねぇよな!来いよ六号ちゃん!悪魔舐めるなよ!」

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