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マジックセンス  作者: 金屋周
第四章:死神
36/222

34:休暇

「う~ん……こりゃあ、買い直した方が早いかもね。」



窓の傍に置いてある本を見て、リコリスはそう言った。フィカスが買った武器図鑑。一度も読まずに水に落ちてしまい、こうして天日干しをしているわけだ。


ダンジョン攻略と宴があった日の翌日。


二つのパーティーは骨休めの意味を含め、各々自由に過ごしていた。



「うん……仕方ないし、また買おうかな。」



お金が貯まったら。と語尾に付けた。



「ところで、スクォーラさんは?」



「ああ、スクォーラくんはね、どこかに行っちゃったよ。クエストがない時は、フラフラっとどこかに行ってるみたいなんだ。まぁ多分、隠れてどっかで特訓でもしてるんだと思うけど。」



オフの時は基本自由。それが勇者たち一行の暗黙のルールだった。



「ヒマだー!なんかクエスト受けにいこー!」



勢いよく扉が開き、元気いっぱいな半獣の少女が入ってきた。



「へぇ、いったいどんなクエストがあるんだい?」



ラフマは胸を張ってこう答えた。



「まだ見てない!だからこの三人でなんかやろう!」



「まだ見てないんだ……。」



受付に行って担当のコールさんに、受注できるできるクエストがないか訊いてみる。



「そうですね……鉱石採集やゴブリン退治。他には村おこしのクエストが現在、受注可能となっております。いかがされますか?」



「村おこしも肉体労働もご免だね。ゴブリン退治にしよう。」



「かしこまりました。ゴブリンたちが森に巣食っているそうです。気を付けていってらっしゃいませ。」



「はーい。」



リコリスを先頭に、即席パーティーはギルドを出た。



「あのー。冒険者の方々ですか?」



ゆったりとした雰囲気の女性が話しかけてきた。


フィカスたちが頷くと、女性は胸の前で手を合わせた。



「そうでしたか。実はですね、アベリアさんという女性を捜しているのですけど、心当たりはありませんか?」



アベリアを捜している?友達かな?



「はい。あ、でも、今アベリアは外出してまして……。」



バザーを見に行くって言っていた気がする。ちなみにジギタリスも一緒だ。



「あらら。タイミングが悪かったみたいですね。それでは、出直してきますね。ではでは~。」



ヒラヒラと手を振って女性はその場を去っていった。



「……知り合い?」



「ううん。初めて会った人だよ。口ぶりからして、アベリアの友達みたいだけど……。」



「アベリアさんって、自分のことを話すタイプじゃないっぽいしね。まぁ帰って来たら訊けばいいよ。じゃあ僕たちも行こうか。」



火山へと通じる道中にある森。そこに到着すると、クエスト通り複数のゴブリンがたむろしていた。



「……十体か。ラフマが九……僕とフィカスくんが一だね。」



「計算がおかしいぞリコリス。」



「気のせいさ。さぁやるよ!」



勢いよくリコリスが飛び出していった。フィカスは小刀を引き抜き、深呼吸を一つしてから、リコリスの後に続く。


ゴブリン――背の低い、猫背で緑色のモンスター。知能はそれほど高くないが、力と縄張り意識が強く、彼らの領域に入った者に対しては、統率の取れた攻撃をする。



「僕が引きつけておくからさ、攻撃は頼んだよ。」



霊体となり、ゴブリンたちの中央でリコリスは創作ダンスを披露する。そんな彼を攻撃しようとゴブリンたちは群がり、半透明のリコリスに空振りの攻撃を繰り返す。



「よーし。んじゃ、フィカスは下がってて。あたしが一気にやるから。」



ラフマに野獣の眼光が宿る。



「あ、いや、僕も戦うよ……?」



右腕を大きく振り、爪から出た白い衝撃波がゴブリンの群れを一掃した。



「はいお終い。帰ろうか。」



「う、うん……。」



僕、何にもしてないんだけど……。


帰路に着くリコリスとラフマを見て、フィカスは心の中で密かにそう呟いたのだった。

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