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マジックセンス  作者: 金屋周
第三章:勇者
33/222

32:力

アベリアの超人的なパンチが繰り出された。


竜の鱗は歪み、その巨体が動かされ地面へと倒れる。



「おおー!こりゃあ凄い。」



リコリスは霊体を維持したまま、間近で感嘆の声を上げた。


猛スピードで地面を蹴り、竜の反撃を躱し蹴りを入れた。


ズンッ……!


唸り声とともに竜の体躯は地に伏した。その衝撃によって砂埃が辺りを舞う。


竜の咆哮が空間中に響き渡った。思わず耳を塞ぎたくなるような、恐ろしい咆哮だ。


身体を捻り鞭のように尻尾を振るった。その攻撃に対し、アベリアは両手を前に突き出した。



「……ん!」



ぶつかった衝撃で、幾分かアベリアの身体が後ろへ水平移動した。しかし、体勢は崩さず、巨大な尻尾をしっかりと捉える。



「そぉー……れ!」



そのまま尻尾を引っ張り、投げ飛ばしてみせた。



「凄い……!」



ただただ、敵を圧倒している。強化魔法から繰り出される怪力によって、巨大な竜との力比べに勝っている。


底知れぬアベリアのパワーに、その場にいた誰もが息を呑んだ。



「――できた!」



大剣がそこにある。そのイメージが完了した。


フィカスの手の上に、ジギタリスが持っていた大剣とほぼ同じ物が創られた。



「どうぞ、使ってください!」



「ああ。」



スクォーラへと大剣は手渡され、勇者は倒れている竜へと向かって駆けだした。



「おっと、スクォーラくんが来るね。ラフマ、アベリアさん、それと……天使の君。離れるよ。」



リコリスの先導で三人はフィカスたち後衛の元へと移動。


ある程度ダメージを負い、地面に倒れている竜。起き上がろうとしているが、その体躯に似合わぬ短い手足では、それも遅い。


お膳立ては充分だ。


ジャンプし大剣を竜の首めがけて、一直線に振りおろした。


スパンッ!と音がするような、見事な一刀両断だった。


綺麗に首が斬れ、身体が斬れたことに気が付いたかのように、ワンテンポ遅れて血が噴き出した。



「……よし。これで勝利だ。この大剣は返そう。」



何事もなかったようにそう言った。



「これが、勇者の力、ですか。」



「えっ?勇者?」



「ん?ああ、そうだが。」



改めてこの場にいる者たち全員で自己紹介を行い、ダンジョンを出るべく来た道を引き返し始めた。


その道中――。



「せっかくだからさ、このメンバーで祝勝会をやろうよ。」



とリコリスが提案した。



「あら~それは素敵ね~。」



「腹減ったし、あたしもなんか上手いもん食いてぇ。」



「それで、どこでやるんだ?」



リコリスは不敵な笑みを浮かべた。



「ふっふっふ……僕の行きつけの良いお店があるんだ。そこにしよう。……それと、提案なんだけど、アベリアさん。」



くるりとアベリアの方を向いた。



「良ければ、僕たちのパーティーの協力者になってくれないかな?」



「協力者?」



聞き慣れない言葉に首を傾げた。


ネモフィラがリコリスに代わって説明をする。



「クエストの助っ人のようなものだ。パーティーメンバーによっては、クエストに不向きな場合もある。今回のような、炎が通らない場合の俺のようにな。そういう時には、他のパーティーから別の戦力に共闘してもらうことがある。」



「それが協力者だ。うちのパーティーって、女はあたし一人だからさ。アベリアに偶にでも来てもらったら嬉しいんだけど、どう?」



一時的な協力パーティー。今回のケースがまさにそうだった。



「そういうことなら。私で良ければ、いくらでも協力するわよ~。」



「それは助かるよ。というか、アベリアさんに限らず、全員に同じことを言っていいかな?ほら、僕たちって勇者のパーティーだから、皆遠慮して協力されることもすることも難しいんだよ。」



「はい。こちらとしても、いい経験を得られそうですから。」



話しているうちに、無事に外へ出ることができた。行きと違って、帰りは道が分かっているから大分楽だ。



「決まりだね。町に戻ったら宴としようか。」

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