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マジックセンス  作者: 金屋周
第三章:勇者
31/222

30:竜

深くへと進んでいくうちに、意外なことに通路が広くなっていった。



「普通、狭くなっていくもんじゃないのか?」



「いや、岩に傷がついている。元々広かったわけじゃなさそうだ。」



ネモフィラが壁を指差す。そこには何かに抉られたような跡があった。



「普通に考えて、トカゲの成体ですね。」



「あのトカゲ相手に全てのパーティーが全滅するとは思えん。この奥には……。」



迷路のように複雑だったダンジョンは、いつの間にか単調な道筋になってきていた。


先頭を歩くスクォーラが立ち止まった。



「どうしました?」



「分かれ道だ。」



スクォーラは脇に退き、先を三人に見せる。


真っ直ぐ進む広い通路と、狭く細い下る脇道。



「どちらから調べる?」



「直進だ。脇道は後回しでも構わんだろう。異論はないな?」



「おう。ないぜ。」



「はい。」



「決まりだ、スクォーラ。直進するぞ。」



勇者は黙って頷き、パーティーは真っ直ぐ歩み出した。


いつしか、天井が見えないような高さまでなり、洞窟であることを忘れてしまいそうな空間になってきた。



「……火山のどこに、こんな広さが?」



「おそらく、もう火山ではないだろう。歩いた距離を考えると、森の地下空間だ。」



「……奥に何かいる。」



スクォーラは再び、立ち止まった。


地響きのような唸り声が聞こえてくる。腹に響くような、大きく低い音だ。



「どうしますか?」



「広いとはいえ、通路では限界がある。奥に主がいるとすると、広間のようになっているはずだ。そこまで進み、それから戦闘開始だ。」



勇者の指示に従い、物音を立てぬよう慎重に通路を進んだ。やがて、スクォーラの言う通り、大広間のような場所へ辿り着いた。



「準備はいいな?攻撃する。」



ネモフィラは杖を前に突きつけるように構えた。その杖の先から巨大な火球が生まれ、辺りを照らしながら真っ直ぐに火球が飛んでいった。


巨大な何かに当たった。唸り声が一層強くなる。炎によって空間に光が現れ、その巨大な何かの姿が皆の目に映る。



「……ドラゴンか!」



炎が効かないとネモフィラは舌打ちした。


彼らの前に立つのは、見上げるほど大きな竜。


ネモフィラは杖の先に炎魔法を留め、松明の代わりとする。これによって、空間の一部が明るく照らされた。そして、竜の姿も顕わになる。


赤に近い色をした鱗に全身を覆われた、蛇に近い見た目をしている。手足はついているが、体躯に対して小さい。ただ、大きく鋭い爪がある。



「あの図体なら通路も行けるだろうし、蛇みたいだから爪が壁や地面に当たる。それで傷があちこちにあったのか。」



納得したようにジギタリスはうんうんと頷いた。



「感心してないで、やりますよ!」



「おう!でも俺はヒーラーだからな!前線は頼むぜ!」



サンナとスクォーラが同時に飛び出した。


ドラゴンの爪を掻い潜り、懐へと肉迫する。


スクォーラは鞘からレイピアを引き抜き、鱗の僅かな隙間を狙って刺突する。



「……む。」



固い。反応からみても、ほとんどダメージになっていないようだ。


追撃を諦め、いったん距離をとる。サンナはそれを横目に翼を生やして飛び上がり、ドラゴンの目を狙ってナイフを振るった。



「チィ!」



瞼に阻まれた。異様に固い瞼によってナイフは弾かれ、目の前に大きく開かれた口が迫る。


宙を蹴るように急旋回。サンナがその場から離れると同時に口は閉じられ、生え揃った牙が音を立てた。



「おいネモフィラ!魔法は撃たないのか!?」



牙や爪、尻尾の攻撃によって攻めあぐねている二人を見て、ジギタリスは怒鳴るようにそう言った。



「竜に炎は効かん!ましてや火山の近くだ。むしろ炎を得意としている可能性がある。さっきは牽制として撃ったが、竜と分かった以上、余計なことはできん。」



「……この面子では、相性が悪いな。」



そう呟き、スクォーラはサンナに呼びかけて竜から距離をとった。



「俺がしばらく囮になる。君はその間にはぐれた仲間を捜してきてくれ。」



確かに、アベリアとフィカスなら、この状況を打破できるかもしれない。


サンナはすぐに頷いた。



「分かりました。それまで、持ちこたえていてください!」



金色の翼をはためかせ、サンナは仲間を捜しに飛んでいった。

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