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マジックセンス  作者: 金屋周
第三章:勇者
30/222

29:称号

フィカスとアベリアがリコリスたちと合流した頃――


サンナとジギタリスは洞窟を道なりに進んでいた。



「……なんか、涌く頻度が上がってないか?」



奥に進むにつれて、トカゲの遭遇頻度が増してきている。


ジギタリスは大剣をトカゲに叩きつけながら、率直な感想を口にした。



「強くないけど、こう足止めされちゃ面倒だな。」



「ですね。まぁ動きも単調ですし、ましだと思いますが。」



サイズはジギタリスと同じくらい。トカゲの子供に思える。フィカスたちが遭遇した個体よりも、一回り小さい。



「子供か?こいつら?」



「……だとしたら進むにつれて、大きくなっていきそうですね。アベリアたちが落ちた先によっては、拙いかもしれません。」



遭遇したトカゲの群れを全滅させ、歩み出そうとしたその時、後方から微かに足音がした。



「何者だ!?」



サンナは振り向き、ナイフの切っ先を向けた。


ナイフの先にいたのは、二人の男性。


一人は赤紫色の髪の持ち主。インナーに手甲や胸当てを装備し、上着を羽織ったシンプルな格好だ。腰には細い鞘が差してある。


もう一人は長い銀髪の男。黒い服を着、鉄色の杖を持っている。


共通して二人とも背が高い。



「先に来ていた冒険者か。妙な男と犬の耳が生えた女を見なかったか?」



銀髪の方がそう質問した。



「いいえ。見ていません。」



冒険者。この場に来ているということは敵ではない。サンナは警戒心を解くとまではいかなくとも、少しばかり緊張を解いた。



「俺たちからも質問だ。金髪の男と蒼銀の髪の女の子を見なかったか?」



銀髪の男は、首を横に振った。



「いいや。俺たちは他の人を見ていない。……捜し人がいるという目的があるようだな。」



「おう。ん……お前ら、どっかで見たことあるような……。」



初めて会ったはずだが、どこか見覚えがある気がした。



「いや、初対面だ。――スクォーラ、ここは彼らと協力しても、構わんだろう?」



赤紫色の髪を持つ男性は頷いた。



「ああ。仲間の救出が優先だ。ダンジョン調査は、その後でも大丈夫だろう。君たち、ここは協力したいんだが、どうだ?」



「ええ。まぁ、構いませんが……スクォーラ?」



聞き覚えのある名前だ。


怪盗シャドウと同じく、国中の者が聞いたことある名前だ。最強の冒険者として、国から直々にとある称号を授けられた者だ。


勇者スクォーラ。冒険者の頂点に立つ者といっても過言ではない。



「あの、勇者スクォーラなのか!?」



「俺を知っているのか。ああ、俺がスクォーラだ。こっちは、魔法使いのネモフィラ。」



驚嘆の意を見せるジギタリスたちとは対照的に、淡々と喋るスクォーラ。



「さて、先に進もうか。途中、倒されたトカゲをみたが、君たちが倒したのか。大したものだ。」



「サイズ的に、あのトカゲは幼体だろう。……そんな話はどうでもいい。さっさと進むぞ。」



ネモフィラが会話を終了させ、パーティーとなった四人は歩きだした。途中、自己紹介を行い、サンナたちは下層部を目指して進む。



「……。」



最後尾を歩きながら、サンナは勇者の異名を持つ男を観察する。


ジギタリスより少し背が高く、痩せ型だが筋肉質だ。背筋を伸ばし落ち着いた足取りをしている。


腰にある鞘からすると武器は……細剣か?



「おい。」



ネモフィラが話しかけてきた。



「お前、アサシンだと言っていたな?なぜ冒険者になった?なる必要はなかったはずだ。」



「深い理由はありませんよ。ただ……友人が冒険者になると前に聞いたので。」



サンナは視線を前から外さず、口だけを動かした。



「その友人というのは、地下に落ちた奴か?」



「いえ、違います。冒険者になる際に名簿で探したのですが、その人の名前はギルドにありませんでした。まぁ、もうどうでもいいことですけど。」



「――そうか。」



会話は途切れ、再び沈黙と暗闇の中、一行は洞穴を突き進んでいった。

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