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マジックセンス  作者: 金屋周
第三章:勇者
27/222

26:竜擬き

「どうだ?何か見えるか?」



ジギタリスとサンナは、フィカスたちが落ちた穴を覗き込んでいた。



「何も見えないし聞こえない……かなり深いみたいですし、ここからだと何も分かりませんね。私が通るには狭すぎですし、このまま進んで何とか合流しましょう。」



ジギタリスは視線をサンナの顔から下に向けた。



「そうか。お前だと通れないのか……。」



アベリアは通れたのに。



「はい。羽ひろげられないので、飛んで救出は無理です。アベリアがいるので転落死はないでしょうし、危険があるとすればモンスター……急ぎましょう。」



「おう!あいつらなら大丈夫だろうからな!信じて行こうぜ!」



「ええ。」



サンナはチラリと穴を見た後、急ぎ足で進み始めた。



「……それっ!」



フィカスは迫りくる爪を躱し、トカゲの腕に斬りつけた。が、まるで手ごたえがない。


思っていたよりも固い……!


小剣では傷を負わせるのは難しそうだ。


別の方法で攻撃するべきだ。宙に岩を創造して、それの下敷きにすれば倒せるはず。



「……っと!」



爪を躱し、身体を捻って振ってきた尻尾を後ろに跳んで避ける。


イメージする余裕がない。人が相手なら駆け引きがあり、そこに隙ができる可能性があるが、モンスター相手にそういう類の駆け引きは通じない。


どうする?逃げに徹してアベリアの応援を待つべきか?



「いや……。」



ここでそういう選択をしてしまったら、これから先もモンスターと戦うことはできない。冒険者に向いていないと言わざるをえない。


勝つためには、どういう手が必要か。それを考える必要がある。


こういう時こそ、別の武器の出番か。武器図鑑をどうにかして読んで……。



「あ……。」



池に落ちた時に本も濡れてしまった。乾かせば読めるだろうが、今はそんな余裕はない。



「あら~……。」



腕を使ってトカゲの攻撃を捌きながら、アベリアはフィカスの様子を窺っていた。


加勢にいっても良いが、その必要性はないとアベリアは思っていた。


フィカスの観察眼と思考力。この二つの武器を上手く使えば、この状況を切り抜けられると思っているからだ。けれど、今のままではあまりよろしくない。



「フィーくん。無敵な存在なんてないの。落ち着いて見て。」



それだけ言って、アベリアは自分の戦闘に集中し始めた。



「無敵な存在はない……。」



攻撃を避け爪を小剣で受け止め、防戦しながらアベリアの言葉を考える。


トカゲは全身が固い鱗で覆われている。それを無敵とするなら、それでもどこかに違うところがある。



「そこか……!」



弱点が見えた。アベリアが想像している弱点とは違うかもしれないが、大丈夫なはずだ。あとは、どうやってその弱点を突くか。



「それ~!」



アベリアは強化した拳でトカゲの腹部を殴った。鱗が砕ける感触がし、トカゲは勢いよく壁に叩きつけられ絶命した。


そして、フィカスの様子を見る。


フィカスは攻撃を躱しながら、トカゲとの距離を詰めていた。


至近距離で攻撃を小剣で払い続けていれば、爪以外の攻撃もしてくるはず。


右から迫った爪を弾いた時、その好機は訪れた。


正面が空いた。左からの攻撃がくるよりも早く、サンナの動きを再現するように!


間合いを素早く詰めて、小さく鋭い突きをトカゲの口めがけて繰り出した。


トカゲの動きが止まり、次の瞬間腕を大きく振るった。



「おっと。」



アベリアは後ろからフィカスを抱えてトカゲから距離をとった。


トカゲはのたうち回った後、段々と静かになりやがて動かなくなった。



「格好良かったわ~フィーくん。」



アベリアはトカゲの口に刺さった小剣を引き抜き、フィカスに渡した。



「あはは……ありがとう。アベリア。」



「じゃあ、行きましょうか~。」

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