23:森
採掘へ向かった時と同じルート――砂漠とは逆方向から町を出、草原を突き進んで行くと森に出る。
この森を抜けた先にあるのが、今回の目的地である火山だ。
「昨日見たパーティーが、火山に向かう奴らだったんだな。」
頭の後ろで腕を組み、ジギタリスは納得した様子でそう言った。
「ですね。まぁ、知ったところで、という話ですが。」
木々がうっそうと生い茂り、視界は薄暗く決して良いとはいえない。
地面に落ちた枝や木の実を踏みつけながら、森の出口と火山を目指していく。
「……なんか出そうだよな。」
「まさか……。」
モンスターならともかく、それとは違う人外の何かが現れるのは止めてほしい。
「森にいる種族なら……エルフなんかのイメージがありますね。」
「ワーウルフもいるんじゃないか?」
「ワーウルフは山岳だったと思いますけど。」
「そうだっけか?」とジギタリスは呟いた。
あ、そういう話だったんだ……。
フィカスは密かに胸をなでおろした。
「他に種族って、何がいたっけ?」
「えっと……ドワーフと……いえ、それくらいですかね?」
「神話系の種族って、他にいないの?」
アベリアの質問にサンナは頷いた。
「私の知る限りでは、天使と悪魔しかいないと思います。広い目で見れば、ドワーフやエルフも神話系になりますが。」
森に住みつく獣が時折、顔を見せる。
「そういえば、人間以外の人たちって、どういう能力を持っているの?」
「天使が飛べることは知ってますよね?確か……エルフは遠くまで見えるとかなんとか。」
「あまり詳しくないので。」とサンナは語尾に付け加えた。
「防具とかは大体、ドワーフ製だったと思うぜ。」
「へぇ~。」
自分が知らないだけで、意外と身近に色々な異種族が関わっているのかもしれない。今度買い物をする時には、もっとゆっくり周りを見てみよう。
「あら?あそこかしら?」
先に岩肌が見えた。火山に到着だ。
「で?どこにダンジョンの入口があるんだ?」
「探してきます。ここで待っていてください。」
サンナの背中から金色の大きな翼が生えた。その翼をはためかせ、宙に舞う。そして、山肌に沿って飛んでいった。
「……飛べるって便利だな。」
「うん。」
火山の中腹程まで飛びあがり、サンナは辺りを見渡した。
これまで発見されていなかった……。つまり、人目に止まりにくい場所に入口がある。
それはどこか?
誰の目的地にもならない地点だ。そして、ほぼ全ての者が通らないところ。
「それなら……。」
地上に近く、急な箇所。そういう条件なら、見つからなくとも不思議ではない。
注意深く目を凝らし、火山の下部周辺を飛んでいると、大きな岩が傍に置かれた洞穴を発見した。
「見つけましたよ。」
場所を頭に入れ、待機している三人の元へ戻った。
「案内するので、ついてきてください。」
空中を移動するサンナの案内を受け、一行はダンジョンの入り口らしき場所に到着した。
「こんなところにあったのか。こりゃあ見つからなくても納得だぜ。」
そもそも、登山する際に通らないようなところだ。急な斜面でまず訪れることはない。
「ここを発見した奴は、何を考えてたんだろうな。」
「さぁ?それより、行きますよ。いいですか?」
「うん。行こう!」
このパーティーにとって、初めてとなるダンジョン攻略が開始された。