22:挑戦
「あれ?受付に誰もいない?」
浴場から出てみると、いつもいる受付のお姉さんがいなかった。
「帰ってしまったのかも。クエストのチェックは明日ですね。」
「おう。そうだな。じゃあ飯にしようぜ。」
夕食を食べて就寝。この日は何事もなく過ぎていった。
翌日――。
ギルドがいつもより騒がしい。
「何かあったんですか?」
フィカスが近くにいた男に質問した。
「おお。お前たちか。いやな、夜中に帰ってきたパーティーの話なんだが。火山が町から離れたところにあるのは知っているか?」
昨日、見た火山のことだ。フィカスは黙って頷いた。
「そこにダンジョンが見つかったって話が昨日出た。それで、幾つかのパーティーが向かったんだが、命辛々生還したパーティーは一つだけだったんだ。他のパーティーは全滅したのか、まだ脱出できていないだけか分からないが、とにかく危険だって話だ。」
「その火山のダンジョンをどうするか、で騒ぎが起きているわけですね?」
サンナが会話に参加した。
「そういうことだ。稀に見る危険なクエストになるだろうから、報酬も相当だろうが受けるパーティーはほとんどないだろう。俺のところも他のクエストを受けるつもりだ。」
そう言って男はパーティーメンバーの元に向かった。
「おう!受けようぜ!」
ジギタリスが後ろから、サンナとフィカスの肩を掴んだ。
「いや、こればっかりは……。」
「大丈夫だって!アベリアがいるんだ!」
「それは……そうかもだけど……。」
強化魔法による、アベリアの怪力は確かに凄い。けれど、それをアテにするのは拙い気がした。
「一攫千金狙いなら、止めるべきです。私たちは初心者の集まり。危険なクエストは避けるべきです。」
サンナの言うことはもっともだ。フィカスはその言葉に深く頷いた。
「う~ん。行ってみても、いいんじゃないかしら?」
「アベリア?」
意外な反応に驚かされた。てっきり、アベリアは否定するものだと思っていたためだ。
「無理に頑張る必要はないんでしょう?だったら、私たちの力がどこまで通じるのか、試しに行きましょうよ。」
腕試しも兼ねて。それがアベリアの言い分だった。
それよりも、無理に頑張る必要はない、この台詞に惹かれた。
成功か失敗か、その二択しかフィカスの頭にはなかったが、中断という選択肢もある。それに、自分たちの向き不向きも確かめたかった。
最近では採掘や採集系のクエストしか選んでいなかったが、パーティーがどういう仕事に向いているのか、遅かれ早かれそれを知っておく必要があった。
「うん。分かった。行くだけ行ってみようよ。それで、手に負えないと思ったら、すぐに引き返す。これでどうかな、サンナ?」
三人の視線が集まる。
「……では、そうしましょう。それなら、準備を充分にしてから出発です。まずはフィカス用の本を買いに行きますよ。」
受付に行って火山ダンジョン探索のクエストを受注した後、町に出て本屋で武器図鑑を購入した。
余った金で武器屋で買い物。
「熱に強い防具を買っておきましょう。」
「火山だもんね。」
「おう!これカッコイイぜ!」
手甲を持ってきた。
「うん。じゃあそれで……。」
防具を装備して、武器屋を出ると次はいよいよ火山。
「それじゃあ、気を引き締めていきますよ。」