表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マジックセンス  作者: 金屋周
第二章:怪盗
21/222

20:シャドウ・3

シャドウに呼びかけられ、フィカスは緊張した面持ちで小剣を構えた。


自分がまともに戦って、勝てる相手ではない。何とか時間を稼いで、仲間の復帰を待つ方が得策だろう。


でも、この状況下では、その策は上手くいかないだろう。シャドウの数々の自然魔法の前では、時間稼ぎは愚策だ。



「今、サンナにやったのって……。」



遠目だったが、否、遠目だったからこそ、何が起きたか理解できた。


間近で見たことこそないが、嵐の日に見たことがある自然現象。


雷だ。その魔法を操り、サンナに直撃させた。



「おそらく、君の想像通りだよ。そこの彼女に当てたのは雷魔法だ。まぁ、分かったところでなんだって話だけどね。」



シャドウの言う通りだ。


雷を見てから避けるということは、不可能である。



「僕も人殺しには、できるだけなりたくないからね。とりあえず、生かしといてはあげるよ。」



犯罪者なりに、怪盗なりにポリシーがあるのだろうか。


ともかくとして、殺されてはいない。



「けど、死なない程度には攻撃するよ。ここにいるのも飽きてきたしね。」



シャドウは左手をフィカスに向けた。


その掌から巨大な火球が発射された。フィカスめがけて真っ直ぐ飛んでくる。



「えっと!……冷静に……!」



焦っては頭の中が真っ白になってしまう。それでは駄目だ。思考できる余裕を、イメージできる余裕を持たなくてはならない。


避けるよりは……壁だ!


遺跡調査で見た巨大な壁画をイメージする。


創造魔法!


自分の前に壁画を創造し、それを盾とする。


轟音が鳴り響き、爆発が発生した。左腕で目元をかばいながら、フィカスは先ほど創造しておいたブーメランを粉塵に向かって投げる。


砂埃によって相手の姿は確認できない。けれど、それは相手も同じこと。ならば、その状況でいち早く攻撃した方が有利だ。


が、粉塵は突風によってかき消された。ブーメランも向かい風に負け床に落ちる。



「……何の魔法だ?今のは……?」



シャドウが問いかけた直後、フィカスの背後でガラスが割れるような音がした。



「フィーくん!」



氷の障壁を砕いたアベリアがフィカスのもとに駆け寄ってきた。



「サンナは任せろ!お前たちはシャドウを頼むぜ!」



回復魔法が使えるジギタリスが、麻痺しているサンナの治療に向かった。


アベリアはフィカスの隣に立ち、拳を構える。


何もない空間に物質を創りだした……?


物質創造と身体能力強化の使い手か。面倒なのが残ったな。


シャドウは余裕の態度を取りながら、内心舌打ちした。冷静に戦えば敵う相手だが、未知の魔法の持ち主だ。時間がかかる。


それでは駄目だ。時間をかけるのはまずい。


これ以上時間をかけたら、他の冒険者が来るかもしれない。負けることはまずないが、目立つことは避けたい。ならば……。


風魔法を使い、シャドウは自分の身体を浮き上がらせた。



「欲しい物は手に入ったことだし、そろそろ行かせてもらうよ。」



そのまま飛びあがっていき、天井のステンドグラスを割ってシャドウは闇夜の中に消えた。



「……シャドウは?」



若干よろめきながら、サンナはフィカスへと近づいた。



「行ったよ……それより、大丈夫なの?」



「まぁ……痛みますが……。」



「回復魔法はかけたが、かなりのダメージだ。しばらくは安静にしてるべきだぜ。」



「そっか……ジギタリスとアベリアは?怪我はない?」



二人は「大丈夫。」と頷いた。



「良かった……。」



誰一人、死んでいない。サンナがダメージこそ負ったが、ジギタリスの回復魔法によって命に別状はない。


クエスト本来の目的を達成することはできなかったが、あの強敵を相手に死人は出なかった。そのことを今は喜ぶべきなのだろう。



「それじゃあ帰るか!疲れたし寝るぞ!」



「ボロボロになっちゃったけど、平気かしら~?」



炎や氷によって部屋は荒れてしまった。何も置き物がないのが、せめてもの救いか。



「そういえば、シャドウは何で盗むんだろ……?」



ふとしたフィカスの疑問は、美術館の暗闇へと吸い込まれていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ