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マジックセンス  作者: 金屋周
第十三章:未来を懸けて
206/222

202:悶絶

「えっ?あ、え?」



ある一点を両手で押さえ、声にならない悲鳴を上げ青い顔をして転げ回るジギタリスを前にして、アギオスは焦りと困惑の混じった表情となる。



「その……大丈夫か?」



「だ……大丈夫じゃ…………ない…………。」



消え入りそうな声でジギタリスはそう返事をした。



「ねーマカナくん?」



客席にて──。


ジギタリスの様子を見ていたエレジーナは隣りに座るマカナに話しかけた。



「なんですか?」



「あそこ……蹴られたらそんなに痛いの?」



マカナの股間を指差す。



「めっちゃ痛いです。」



「……。」



黙って股間を見つめる。



「やったら殺す……!」



「あ、ハイ。」



こりゃマジの声だ。


マカナに睨まれエレジーナは視線を舞台へと戻した。



「こ……降参……だ…………。」



とうとうジギタリスの降参宣言。


アギオスは申し訳ない気持ちになり、しゃがみ込む。



「その……すまない。そんなに痛いとは……思っていなかったのだ。」



「へ……へへ……女の子……には、分から……な……い……。」



低い位置で目を合わせ、そう言いながら彼は気絶した。



「で、あっけなく負けてしまったわけですが……。」



気絶したジギタリスを運び宿舎に戻りベッドに寝かせ、サンナが溜め息混じりに仕切る。



「あっけなくはないだろ。あれは仕方ない。」



マカナが断言し、サンナは「本当に?」という視線をフィカスに向ける。


黙って頷くフィカス。



「……ジギタリスは惜敗してしまい、これで互いの戦力はイーブン。」



言い直した。



「明日は私が出ます。フィカス、セプテム。いいですか?」



「別にあんたじゃなくてもよくない?どうしてなのよ?」



セプテムの問いかけに、サンナは目を閉じる。



「深い理由なんてありません。ただ……。」



目を開け、窓の外を見る。



「”魔人”がくるのであれば、戦いたいと思っているのです。」



その言葉に二人はピンときた。


そっか……。



「エレジーナの敵討ちってわけ?」



「死んでないよー。」



部屋の隅から、そんな声が聞こえていた。



「正直に言えば、それもあります。が……。」



サンナはフィカスとセプテムの顔を見る。



「次の相手を絞る、という意味もあります。」



サンナ自身、英雄を相手に勝てる見込みは薄いと感じていた。


ならば己の勝利に固執するよりも、パーティとしての勝率を上げたい。



「ですので、明日は私が出ます。文句は……全部終わってから聞きます。」



「……はいはい。じゃあ……。」



「任せるよ、サンナ。」



三人は頷き合う。



「エレジーナ、客人だ。」



その時、部屋のドアが開きマカナが入ってきた。



「客人?」



隅にいたエレジーナはドアの前に移動する。


客人って……誰だろう?


今、ここに来る人なんていないと思うけど……。



「分かった。それじゃあ行ってくるねー。」



そう言ってマカナとエレジーナは部屋を出て行った。



「行ってくるって……すぐそこに来てるんじゃないの?」



セプテムのつぶやきに二人は黙って頷いた。



翌日──。


帰り、遅かったな……。


サンナは身支度をしつつ、昨日あった客人のことを考える。


外を覗いてみたが、エレジーナの姿はなかった。そして宿舎に戻ってきたのも遅かったみたいだ。よほど重要な用件だったのだろうが……この時期に、というのが気になる。


まぁ……考えても仕方ないのだが。


こういう時、尋ねてもエレジーナは答えてくれない。



「サンナさん!今日は頑張ってくださいね!」



突然ドアが開いた。



「一号……エヌマエル、急に入ってこないでください。」



「すみません……今日は皆で応援しますからね!」



えへへ……と頭を掻くエヌマエル。


やっぱり子供っぽい、と思う。



「それで……皆で?ジギタリスは?」



彼は今、想像出来ない痛みで寝込んでいる。正直、もう平気のような気がしているのだが、本人はベッドから起きてこない。



「放っておいても平気だろうと、マカナさんが言ってましたよ?」



「あ、そうですか……。」



じゃあいいですね。放っておいても。



「さて……。」



身支度はこれでいいだろう。


結局、軽装になってしまった。最初は色々と持っておこうと思ったのだが、持たない方が良いとエレジーナに言われ、悩んだ末に言う通りにした。


だがこうして支度を終えてみると、これで良いと思えた。


ごちゃごちゃと身に着けるのは性に合わない。



「──行きますか。」



やるべきことはやった。


あとは結果を出すのみだ。



「お?次は君が相手かぁ。中々縁があるねぇ。」



闘技場に入り、舞台で待っていると通路の暗闇から”魔人”が姿を現した。


私の相手はこいつか。願ったり叶ったりだ。



「腕前で言えば、エレジーナ……だっけ?あの娘の方が上だと思うけど……君は君で面白かったんだよねぇ。また私に何か見せてくれると嬉しいなぁ?」



「……。」



私のことは眼中にないということか。


既に先のことを考えているようだ……が。



「目の前の相手を見ていないとどうなるか……教えてやる。」

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