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マジックセンス  作者: 金屋周
第十三章:未来を懸けて
205/222

201:力

「オラアアアァァッッ!!!」



ジギタリスが雄叫びを上げ、大剣を振り上げ両手で振り下ろした。


直撃すれば身体が真っ二つ。


だが当然ながら、それを受けるという選択は聖人にはない。



「……ッ。」



大剣の脇をすり抜けて蹴りを入れるが、アギオスは顔を歪ませた。


反動が響くな……。


まだ完治していない傷に衝撃が響く。それに加え……。



「ガハハ!効かねぇぜ!」



──頑丈な男だ。


この筋肉で出来上がった肉体相手に、打撃攻撃は効果が薄い。


かといって私は魔法が使えない。


要は……普通にやったら勝てない。



「オラァッ!」



対しジギタリスは大剣を振り回す。


雑でも構わない。アギオスの攻撃はほぼ通じない。ジギタリスには余裕がある。



「くぅ……。」



アギオスは攻撃を避けつつ反撃カウンターを入れていくが、ジギタリスはビクともしない。


ならば──!


アギオスは壁際まで走って距離を取り、拳を握って迎え撃つ態勢を作る。



「おっ?」



自分から逃げ道を消した?


どういうつもりだ?


まぁ……考えるだけ無駄か!


深く考える前に動く。それがジギタリスという人だ。



「オラァッ!」



再び大剣を振り上げ、満身の力を込め振り下ろす。


──そこだ!


眼前に迫りくる大剣。それに向かってアギオスは前へと出た。


ジギタリスに近づき、彼の両手首を掴んで自分の身体へと引き寄せる。



「そんなんで……!」



「私の狙いはそれではない。」



「おっ?」



ジギタリスの腕は少しだが伸ばされ、それによりアギオスの背後にあった壁に大剣が激突した。


その衝撃音とジギタリスの表情からアギオスは、内心舌打ちする。


壊れなかったか。良い大剣だ。質が良く、きちんと手入れがされているということか。


だが……。



「ここだっ。」



アギオスは身体を密着させ、ジギタリスの二の腕を掴む。同時に足を絡ませ地面へと押し倒す。


そして左手で顔を掴み、右手で喉元を掴む。


どちらも反射的に放したくなる部位だ。咄嗟の判断でどちらかを対処し、その次にも冷静に対処──といった行動は、この男には出来ないはずだ。


さらにそう行動しようものなら、唯一の武器である大剣を手放すということ。


それぞれのリスクを考えれば、巧く対応することなど……。



「う……っおおおおおおぉぉぉッッ!!!」



「んなっ!?」



雄叫びを上げ、ジギタリスはアギオスの身体を吹っ飛ばした。



「ぐぅ……!」



地面に衝突した痛みに顔を歪ませ、アギオスはジギタリスを睨み付ける。


なんという男だ……!



「ガハハ!この俺様にそんな手は効かねぇぜ!」



全て、力で解決した──!



「今ので分かったぜ!お前の倒し方がなァ!」



そう言うと、大剣を投げ捨てた。


そして両腕をブンブンと振り回す。



「こうした方が、お前にとってはやり辛いんじゃねぇか?」



「……。」



「へっ図星みてぇだな。」



無言は肯定と同じだ。


多分だが……。


ジギタリスは考える。


聖人こいつは武器を持った相手との戦いの方が、多く場数を踏んでいる。アベリアから少し話を聞いたが、犯罪者の相手を主にしているみたいだ。


それってつまり、何からしら武器を持った奴の相手をすることが多いってことだろう。丸腰で悪さをする奴なんざ、ほとんどいないだろうからな。



「だからこうして敢えて武器を捨てることで、この俺が圧倒的に優位に立てるっつーわけよッ!」



「………ふむ。では、試してみるか?」



低い声でそう呟き、聖人は両脚を開き、重心を下げた。



「ム……ッ!」



これは……ッ!?


ラフマの構えと似ている……!


反撃カウンターが得意だと思っていたけど、ああいう攻撃的な戦術も持っているというのか……?


へっ……面白ぇじゃねぇか!



「来いやァッ!!」



ジギタリスが叫ぶのとほぼ同時にアギオスは動いた。


真っ直ぐに駆け、肉迫したところで両脚を曲げた。


跳ぶ──!


ジギタリスは判断し、跳躍に備える。


そしてアギオスの膝が伸びた──。



「げぇ!?」



が、跳んでいない。


フェイントか!


ジギタリスの注意は跳躍へと引き付けられており、完全に虚を突かれた。


無防備となった身体に鋭い打突が打ち込まれ、身体がよろめき怯む──。


──ここだ。


アギオスはナイフを取り出し、腹部へと突き刺す。



「させるかッ!」



しかしその前に──刺さる直前にジギタリスはナイフを握る手首を掴み、すんでのところで止めた。



「ぐっ……!」



こうなってしまっては……力比べとなってしまっては、アギオスに勝ち目はない。


一刻も早く離れることが重要だ。



「おっと!そうはいかねぇぜェ!!」



離れようとする手首を強く握り、アギオスを逃がさない。



「ぐぅ……ッ!」



このままでは不味い……!


どうにかせねば……!しかしどうすれば……!?



「がああああぁぁッッ!!」



痛みに悲鳴を上げる。


ダメだ。何も考えられなくなる……!



「こッ……のッ……!」



痛みに涙を浮かべ、アギオスはヤケクソで自由な脚を振り上げた。



「ふぉうッ!?」



それが偶然にもあるところにヒットし、ジギタリスは絶句した。



「……?」



彼の力がするりと抜け、アギオスは首を捻る。


ジギタリスは青ざめた顔になり、力なく地面に倒れ込んだ。

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