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マジックセンス  作者: 金屋周
第十三章:未来を懸けて
202/222

198:魅力

「ねぇ?どうして最後、攻撃止めたの?」



「うるせぇ。知るかよ。」



レグヌム城にて──。


アズフがしつこくドゥーフに質問を行い、ドゥーフは鬱陶しそうに手を振って近寄せないようにしている。


見方によっては、じゃれ合うカップルのようにも見える。


……それを口に出したら、凄い怒られるんだろうなぁ……。


リコリスはそんなことを思いつつ、ドゥーフに質問する。



「明日の試合は僕?それともアズフさん?」



アギオスさんはまだ治療中なわけだし、出てもらうわけにはいかないだろう。本当は棄権してもらいたいくらいだけど、多分王様が許さない。


というか、フィカスくんたちが勝ったとしても、素直に彼らの要求を受け入れてくれるのだろうか?


そこのところが不安だ。



「テメェだ。幽霊。」



「はいはい。」



口が悪いって点は違うけど、やっぱりどこか似ているんだよなぁ。スクォーラくんと。


大陸最強の──英雄と呼ばれる存在は、そういう人がなるってことかな?



「じゃあ明日は僕が出るってことで。」



互いに残る戦力は半分。


明日に僕が出るってことを向こうも予想しやすいはず。


もし予想しているとすれば……誰が来るかな?


どうせ準備することもないし、僕も予想してみよう。












「フィカス、出番よ。」



一方──。


開口一番、セプテムがそう言った。



「次に来るとすれば、リコリスかアズフ。どっちが来るにしても、相性は悪くないはずよ。」



視線が集まり、フィカスは静かに目を閉じる。


──ここまで、ずっと皆に助けられてきた。


皆はこれまでの恩返しと言ってくれた。


だったら、ここからはまた僕からの恩返しだ。


きっとそれが交互に、ずっと続いていく。それが仲間っていうものであり、絆ってことなんじゃないかって思う。



「──任せて。」



目を開ける。


大丈夫。皆からの期待にプレッシャーを感じることもない。


アベリアと目が合った。


彼女は静かに微笑む。


その微笑みを見て、勇気を貰える。そんな気がする。


今はただ、目の前のことに、戦いに集中する。


それが終わった時に、自分の感情に素直になって、彼女に答えを出そう。



「明日……絶対に勝つ。」



そして翌日──。


フィカスは戦闘準備が少ない。


武器も防具も創造出来るため、あらかじめ用意しておくべき物がほとんどない。


必要なのは丈夫な服と最低限の武器。


それと気力くらいなものだ。



「それじゃ、行ってくるよ。」



「はい。頑張ってください!」



今回、六号とエヌマエルは留守番。


六号はまだ安静にしておいた方がいいし、万が一に備えて誰かが傍にいた方がいい。


その役を真っ先に買って出たのはエレジーナだったが、当人の強い希望により却下となり、代わりにエヌマエルがやることになった。


宿舎を出、闘技場へ。



「フィカス。」



選手用の通路に入ろうとした時、セプテムが声をかけてきた。



「……やっぱ何でもないわ。頑張って。」



「……?うん。」



何かアドバイスしようとしたのだろうか?


もし、その必要がないと思ってくれたのなら、それは嬉しいことだ。


恐らく英雄と同等の実力を持った”魔女”セプテムがそう判断したのなら、その信頼は自信となるには充分過ぎる。


暗い通路を歩き、前方にある光を目指していく。


その先に──舞台に誰かが立っている。



「やぁ。やっぱりフィカスくんだったね。」



「リコリス……。」



向かい側にいる彼は肩をすくめる。



「なんか、予想してたって感じだね。でも僕も、来るなら君なんじゃないかって思ってたよ?」



リコリスはニヤリと笑う。


ここまでフィカスくんの出番は、不自然なほどなかった。


多分、出さない方が味方の士気向上に繋がると判断したのだろう。そういうことを考えそうなのは、セプテムちゃんかサンナさんかな?


そしてお互いに人数が半分になったところで出すことにより、落ちてくる士気をまた高めることが出来る。



「それに君のパーティの誰かと戦えるのなら、やっぱり君と戦いたいって思っていたよ。」



ラフマも言っていたけど、初めて出会ったあの時に注目されていたのはアベリアさん、次点でサンナさんだと思う。新米パーティの中で、既に完成された実力を持っていたから。


良くも悪くも、君はあの時にはまだ不安定だったんだ。


創造魔法っていう、非常に強力で希少な魔法センスを持っていながらも、それを戦闘に生かす方法をほとんど知らなかったんだ。


だからこそ評価も二分化。


期待出来るって見方もあれば、実力が伴う前に死ぬって見方もあったと思う。



「君には……今の君には、周りを惹きつける力がある。」



出会った時には、ここまで凄い存在になるとは正直、思っていなかった。


それでも惹きつけられる何かがあったように思える。



「そんな君と……真剣に手合わせしてみたいんだ。」



英雄と呼ばれる存在は、どこか似ているように思える。


それはきっと、理由は違えど、人を惹きつける魅力カリスマだ。


今の君には、それがある。


英雄と呼ばれるに相応しい存在に成長したということだ。



「出会った時から……あの時からそれだけ成長したのか……尋常に勝負だ。」

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