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マジックセンス  作者: 金屋周
第十三章:未来を懸けて
201/222

197:コントロール

「……。」



ウルミは闘技場の舞台に立ち、向こう側に立つ人物を睨み付けた。


……やっぱり……そっちか……。


”魔人”への情報提供があると考えれば、自ずと答えは出る。



「ハッ!またザコが相手かよ……ったく面倒な催しだな。」



”賢者”ドゥーフ。


恐らく、最強に最も近い存在だ。


対応力・応用力で言えば”魔人”の方が上手なのだろうが、それでも一番強いのは誰か?と尋ねられたら”賢者”と答えるのが正解だろう。


物を操る──。


分かりやすくて、単純に強い魔法センスだ。


人は物を身に付け、世界は物で溢れている。それら全て自在に操れる存在を相手に、どうやったらまともに戦うことが出来るのだろう?


唯一例外があるとすれば”聖人”だが、残念ながらそれは敵だ。


……多分、というか絶対勝てない。



「……。」



でも、足掻けるだけ足掻かなくちゃ。


捨て駒にはならない。転んでもただでは起きない。


何かしら次に繋げる何かを見つける。


……でもそれは、同時に”魔人”を強化することにもなってしまうのだけど。



「はぁ……まぁ、テキトーに遊んでやるよ。精々楽しませてくれよ?」



「……。」



上等。



「それでは試合……始め!」



姫様の合図が送られた。


ウルミは懐から小瓶を取り出し、空高くそれを放った。


そしてボウガンを構え、ドゥーフの心臓に狙いを定める。


──要は物に意識を向けることで発動する魔法……。


だったら、同時に意識を向けられないよう工夫すればいい。



「ハッ……!」



それでどうにかしたつもりか?


ドゥーフはウルミの行動を鼻で笑った。


意識を向けるっつーことは、それを見る。もしくはそれを近くにしておく必要があるってことだ。それに関しては間違っちゃいない。



「だがよ……!」



ずっとこの能力センスを持っている俺が、んな思いつきの策にハマると本気で思ってんのか?



「オラッ!」



地面を大きく隆起させ、塔のようにしその上に立つ。


これで放られた小瓶を警戒する必要はなくなった。既に自分よりも下だ。


そして槍を上から投げつける。



「……。」



──どうする?


ウルミは頭を働かせる。


避ける?いや、それは想定内のはず。それなら……。


脚に巻き付けていた鞭を取り出し、ウルミはそれを槍に放り絡みつける。


これで槍は、本来の使い方が難しい状態となった。イレギュラーをコントロールすることは、リスクが大きいはず。



「考えるじゃねぇか。」



彼はそう呟いた。


次の瞬間、槍は空中で急停止した。


その上に”賢者”は降り立つ。



「だが……そういうのを浅知恵って言うんだよ!」



槍に絡みついていた鞭が解け、ウルミに飛びかかっていく。



「……!」



思ったよりも繊細だ……!


物を動かす程度だと思っていた。まさか手先の器用さを要求される作業をも出来るとは……。


とりあえず、鞭で拘束されると不味い……ちょっと勿体ない気もするけど、ここは刃物で切って……。



「ッ……!?」



その時、頭上から何かが降り注いでいた。


一体何……ッ!?


目が回り、視界がぼやける。


これって……。



「テメェが最初に投げた小瓶だ。その様子だと、行動を封じる毒ってところか?」



やられた……。


自分から仕掛けたことなのに、敵の派手な魔法のせいで失念してしまっていた。毒を入れておいた小瓶を避けたものだとばかり思っていたけど、こっそりと回収されていた……。



「う…………。」



ダメだ。


立っていられない。



「……さっさと降参しろよ。」



うずくまるウルミを見下ろし、ドゥーフはぼそりと言う。


ここで足掻いたって、何の意味もないだろうが……!



「……ま……まだ…………。」



消え入りそうな声を出し、ウルミは地面を小さな拳で叩く。


まだだ。ここで終わっていいはずがない。


もっと仕掛けて……情報を……。



「がっ……!」



その小さな背中に蹴りが入った。


彼女の身体は地面を転がり、そのまま力なく横たわる。



「うぜぇんだよ。そういうの。」



仲間のため、とでも言うつもりか?


くだらねぇ……。


個を信用するのはともかく、多数を信用するってのが気に入らねぇ。仲間なんてしょせん、群れているだけの存在じゃねぇか。


そんなものをどうして信用出来る?どうしてそんな奴らのためにって思考になる?



「うぜぇんだよッ!」



魔法でウルミの服を操り、宙へと高く吊り上げる。



「……ッ。」



ぼやけた視界で、ウルミはドゥーフを睨み付ける。


今の状態で、この高さから落下したらタダじゃすまない。


死ぬ危険だって充分にある。


まぁでも……そうしたら奴が失格になるか。


そう考えたら、このまま落とされてもいいかもしれない。自己犠牲なんて以前の自分なら考えられなかったけど、やかましい連中と一緒にいることで、自分でも気づかないうちに考え方が変わっていったのだろう。


そっと目を閉じる。


一瞬、浮遊感。そして落下していく感覚がする。


このまま落ちて地面に激突して……。


…………あれ?


身体にかかる落下の感覚がなくなった。でも何にも当たらない。


目を開けてみると、まだ宙に浮いていた。すぐ下には地面。



「戦意喪失……だろ。おい!さっさと俺の勝ちにしろ!」



ドゥーフはノウェム姫に怒鳴る。


助けられた……?


ウルミの身体が地面に倒れる。


どうして……?

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