02:ヒーラー
隅にあるテーブルに座り、周りの冒険者や商人の様子を窺って暇を潰すこと、数時間。
夕日が窓から差し込みまぶしさで目を細め、一日で集まるわけないか、と諦めの心情が募ってきたその時、フィカスのもとに近づく者がいた。
鍛え上げられた褐色の肌、大きな体躯に紫色のボサボサの髪。
大きな袋と剣を背負ったラフな格好の男がフィカスへと話しかけた。
「お前が新パーティーのメンバーを募集してるって奴だな?」
「うん。はい。」
「ガハハ!何だぁその返事は?歳が同じなんだから堅苦しいのはナシだ!」
大声でそう言う男の迫力に圧倒される。
「俺はジギタリス。職業は回復役だ。今日からよろしくな!フィカス!」
「うん。よろしく。」
ヒーラー?その見た目で?戦士じゃなくて?同い年?
多くの疑問が一気に頭の中に湧いてくる。
「ガハハ!フィカス、お前の考えていることが手に取るように分かるぜ!一体この俺様が何者なのか、気になっているんだろう?」
「いや、違うって。僕が気になってるのは……。」
フィカスの言葉を遮って、ジギタリスは喋りだす。
「俺様は何を隠そう悪魔だ。絵本とかに出てくる奴な。どうだ?驚いたか?」
「だから僕が気になるのはむしろ……悪魔?えっと……魂を取るとかなんとか……。」
「そうだ。って答えるのは間違っているな。それはまだ、人間が他種族と交流がなかった時代にイメージされたモンだ。おとぎ話に出てくる悪魔は確かにそういうイメージであっているが、実際は違う。」
フィカスの前の椅子に腰をかけ、ジギタリスは話を続ける。
「他の種族と同じで、見た目や能力がちょっと人間と違うってだけだ。悪魔は一般的に魔法の才能が宿りやすいと言われている。ただそれだけだ。」
「ああ、うん。分かったよ。それで、ジギタリス……は何で僕のところに?」
フィカスは受付嬢が言っていたことを思い出す。
魔法を扱えるのは重宝される。
回復が行えるのなら、新規ではなくもっと強豪へいっても平気なはずだ。
「俺は商人として最初、人里へと下りてきたんだが……あ、俺は山出身なんだ。で、だな。商人として生きるのは、思っていたより大変だった!だから冒険者を副業……いや兼業か?とにかく冒険者としても生きようと思ったわけよ。その時に俺は思った。すでに完成された場所に入っても経験にはならないと!だからお前のトコに来たってわけだ!」
「うん。よく分かったよ。……僕も同じ立場の人と一緒なら、心強いよ。」
「おう!頑張っていこうぜ!で、何人パーティーにするつもりなんだ?」
パーティーの人数、考えてなかった。
「特に何も……普通って何人くらいか分かる?」
「いや分からん。」
ジギタリスは腕を組んで唸った。
「まぁあれだ!多すぎても大変だろうからな、まずは四、五人でいいんじゃないか?」
それももっともだ、とフィカスは頷いた。
「じゃあ、もう二人くらいくるまで待ってようか。」