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マジックセンス  作者: 金屋周
第十三章:未来を懸けて
198/222

194:思い出

「なぁ……なんか、様子変じゃねぇか?」



翌日──。


いつもよりもボーっとしているフィカスの様子を見て、ジギタリスは小声でマカナに尋ねた。



「……そんなこと……あるかもな。」



落ち着きがないというか、心ここにあらずというか……。


とにかく、様子がいつもとどこか違う。



「あいつから冷静さを奪ったら何も残らないってのに……一体どうしちまったんだ?」



「他にも色々と残ると思うが……変なのは確かだな。」



時折女子のいる方を見て、視線に気が付いたアベリアが手を振る。そして視線を逸らす。


そんなことが何回も繰り返される。



「──女子と何かあったみてぇだな。」



「見てれば誰でも分かるだろ、それ。」



急に女性の誰かを意識し始めたってところか?


それとも今日戦う予定のサンナに何か言いたいことでもあるのか?



「まぁ普通に考えて……誰かに脅されたってとこだな。」



ジギタリスは顎を摩り、探偵気取りでそう言う。


それを見てマカナは呆れる。


普通に考えて、なんでそれが真っ先に出るんだよ……。



「けど、その線もなしでは……ない、のか?」



「おう!やっぱセプテムかサンナだな!理由は分からんが!」



「大穴はウルミか。でも案外エヌマエルとかアベリアの可能性も……。」



まぁエレジーナはないな。



「で、どうするんだ?」



「ん?特に何もしねぇぜ?」



ジギタリスは平然とそう答え、マカナは今度は驚く。



「どうしてだ?」



彼の性格的に首を突っ込むかと思っていた。


なのに何もしないって……ちょっと茶番に合わせてしまったのが恥ずかしくなってくる。



「どうしてって……そりゃあ暗い様子じゃねぇからな!悩むことくらい、誰だってあるもんだろ。もし助けが必要そうだったら手を差し伸べるけどよ……今回は平気そうだからな。」



そう言われて改めてフィカスを見る。


たしかに……あの様子を見る限り、悪いことがあったってわけではなさそうだ。だったら、こいつの言う通り見守る方がきっといい。



「にしても……お前も悩んだりするもんなんだな。」



「ガハハ!そりゃ悪魔だからな!」



「悪魔は関係ないだろ……。」



「……。」



広まってない、もとい誰も気が付いてないみたいだねー。


二人の様子を見ていたエレジーナは独り頷く。


広まったら良くも悪くも周囲に影響が出るからねー。まだ隠していた方がきっといい。


昨日のことを知っているは当人たちと、私と六号ちゃんだけ。全員口は堅い方だと思うし、これなら大丈夫かなー?



「……エレジーナ?なに独りで頷いてるんですか?」



「あっサンナちゃん?これはねー…………何でもナイヨ?」



「……。」



また変なことでも考えていたんだろう。


サンナはジト目になる。


まぁいい。今は気にしている場合じゃない。


今日の試合……絶対に勝つ。





「おっ!あたしの相手はサンナかー。」



夜──。


闘技場の舞台でサンナとラフマが対面する。



「いや~無理やり出させられてイヤだったけど……サンナが相手なら、悪くないかな。」



頭に生えている犬耳がピョコピョコと動く。



「どういう意味ですか?」



サンナは静かに問いかける。



「初めて会った時……パーティ全員が揃った時のこと。思ったんだ、一人だけ手練れがいるってね。」



ラフマは目を細め、懐かしそうに話す。



「他の三人もいい魔法を持ってるって分かってたけど……なんかまだ初心者っていうか……なんて言うんだっけ?そういうの?」



「初々しい……ですか?」



ラフマは大きく頷いた。



「そうそれ!だけど一人だけ、全く違う雰囲気があってさ……多分スクォーラがあの時に警戒していたのは……意識してたのはフィカスかアベリアだと思うけど……力量で言えば、あんたが一番だと思ってたんだよね、サンナ。」



その言葉に溜め息が思わず出る。



「過去の話ばかり……今の私は、警戒に値しないということですか?」



「前に比べたら、かな?……この世界ってさ、魔法が物を言うっていうか……大きく実力に影響してるわけじゃん?だから魔法がないってのは……それだけで甘く見られると思うんだよ。」



なるほど……。


当時は戦ってみたいと思っていたわけか……。


ラフマは足を開き、重心を下げる。



「あたしには……顔も知らない親から受け継いだ能力コレがある。唯一無二の……多分、あたしだけの能力センスが。サンナ……あんたはどう?」



「……たしかに私には、そういう類のものはありませんね。」



天使族ならば、誰でも翼を持っている。


エレジーナは怪我で翼をほぼ失っているために普段は使わないだけで、持ってはいる。


つまり、特別な能力センスというわけではない。


他にはない、自分だけの力。


それをサンナは持っていない。



「ですが……それがどうした?」



それでも尊敬する人は──エレジーナは強い。


何かを持っていれば当然優位になるわけだが、それだけで全てが決まるわけではない。



「私は確かに、それもあって勝てないことが多かった。特に冒険者になってからは。だが……。」



向かい側の客席を──魔人を見やる。


今はあの人は敵だ。けれど、あの人のおかげで強くなることが出来た。


そこだけは感謝している。



「それも全て、お前の言う過去の私だ。ここで見せてやる……”冒険者”サンナの実力をな……!」

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