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マジックセンス  作者: 金屋周
第十三章:未来を懸けて
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188:駆け引き

「……ようやく、本気を出したってことかなー……?」



エレジーナはよろめきながら立ち上がり、アベリアの見た目をした魔人に問いかけた。



「手を抜いてたってわけでもないんだけどね。」



そう言いながらアベリアの身体が砂のように崩れていき、ジギタリスの姿となった。


そして大怪我をしている左腕に右手を当てる。



「──ジギタリスの魔法は、回復なんだろ?魔人アズフ魔法へんげの面白いところはな、実際に見たことがなくとも、知識と事実が合っていれば再現可能ってことだ。」



「……。」



左腕の怪我が回復していく。


記憶している姿になり同じことが再現可能となる魔法で、何故見たことがなくとも能力センスを再現出来るかは分からない。



「もしかしたら、神様みたいのがいて、見ているのかもしれねぇな。」



完治した左腕をぶんぶんと振る。



「よし……もうこの姿(ジギタリス)に用はない。」



また身体が砂のように零れ始めた。


次は──。



「──これでいこうかな。」



サラサラした金髪の少年の姿。


フィカスの姿だ。



「やってみたかったんだ。創造ってやつをさ。」



「やってみなよ。」



エレジーナは駆け出し、ナイフを投げつけた。


そして己の身を包む布──マントの中からナイフを取り出す。



「何個持ってるの?というか……同じ手は食わないよ?」



「そうかなー?」



エレジーナは左腕を引いた。糸を引っ張る動きだ。


それを見て魔人は横に移動する。


……が、ナイフは飛んでこなかった。



「……あれ?」



魔人がチラリと後ろを確認すると、先ほど自分で捨てた刀と短剣、そしてエレジーナのナイフが地面に落ちていた。



「それッ!」



その僅かな動揺を見逃さず、エレジーナは斬りつけた。



「……やるね。」



本当にただ、ナイフを投げただけだったか。糸を引っ張る動きはフェイク、後ろからの刃を警戒させるためのものか。


……というか、武器を持つのを忘れてたな。


魔人はエレジーナの攻撃を紙一重で躱しながら創造魔法を発動する──。


──うーん。


思ったよりも難しい。


剣を創造してみたが、歪んだ小さなものになってしまった。おまけに脆く一瞬で壊れてしまった。



「……当たり前だよ。」



エレジーナは小さくそう呟いた。


何かを正確にイメージすることは容易ではない。それを当然として生きてきたフィーくん本人ならともかく、真似でそれをどうこう出来るわけがない。



「じゃあ、次だ。」



フィカスの身体が崩れ始めた。


今度は巨大な体躯を持った半獣人──ワーウルフだ。


エレジーナの攻撃を躱し、素早く背後へと回る。そして重い一撃を背中へと叩き込んだ。



「ぐがぁっ!!」



痛みからの悲鳴を上げ、エレジーナはうつ伏せ吹っ飛んだ。


すぐさま立ち上がろうと手足を動かすが、衝撃が響いているのかまともに動けないでいる。



「エレジーナッ!!」



思わずサンナは叫んだ。


尊敬する人が負けそうになっている。その心配が出てしまっても仕方ない。



「けど、仕方ないってことでこのまま負けて……。」



ワーウルフの跳躍力で一瞬で距離を詰め、とどめを刺そうとした瞬間、その顔に小瓶がぶつけられ何かの液体が顔にかかった。



「ぐっ……うあああっ!!!」



魔人は顔を押さえ、苦しそうにもがき出した。



「思ったよりも、簡単に引っかかったねー。」



そう言ってエレジーナはあっさりと立ち上がった。


立ち上がれないフリをし、近寄ってきたところに毒薬を当てる。


マントに隠せるサイズのものだから、あまり強い効果はないけれど、行動をある程度封じられればそれで充分だ。



「やって……くれるなぁ!」



そう叫びながら変化へんげし、途中から若い男の声になった。


その男は赤い髪をした、つい最近知った男だ。



「ぐぅ……!」



エレジーナは突如として頭痛と吐き気に襲われ、頭と胸元を押さえてしゃがみ込んだ。



「……意外と役に立つものだな……病魔というのも……。」



毒に苦しみながらその男は……。


ノソスの姿をした魔人はそう言った。



「魔法を解いた瞬間、その症状もなくなるんだったな……なら、この毒がなくなるまで待たせてもらおうか……!」



……毒の効力が短いと、気付いていたか……!


苦しみの最中、エレジーナは必死に頭を働かせる。


毒は持って数分。それがなくなったら武器を拾いに行くはず。その隙にこちらも行動出来る。奴はその時、どのように動く?本来の姿か?それともまた別人になるのか?


……駄目だ。


まともに思考出来ない。痛みと苦しさでそれどころではない。



「ふ……ふふふ……楽になってきたぞ……。」



なら……ここが勝負どころだ……!



「……と思ったか?」



ノソスの声ではない。


別の男性の声がした。


次の瞬間、病魔がなくなりエレジーナの身体は楽になる。


そして劫火が瞬く間にその場を包み込んだ。

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