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マジックセンス  作者: 金屋周
第十三章:未来を懸けて
189/222

185:深夜に

「──さて、これで私たちは三連勝したわけですが……。」



紙に書かれた名前──アモローザ、ノソス、ネモフィラの名前にバツ印を付ける。



「国際連合はこれ以上、連敗することを避けたいはず。」



サンナは英雄たちの名前を人差し指で叩く。



「次……どうしますか?」



次の試合がこれまで以上に厳しい内容になることは間違いない。


慎重にならざるをえない……というより、出来れば避けたいという思いがこの場にあった。



「……。」



──逆にここで更に勝てれば、相手を崩すことが出来るはず。


この勢いを維持出来れば、そのまま勝ち続けることも可能だろう。


フィカスは深呼吸する。


大丈夫。初めて出会った時だって、ドゥーフに勝つことが出来たんだ。たとえ誰が相手になろうとも、勝つ見込みは充分にある。



「……。じゃあ、私が出るよー?」



「エレジーナが?」



フィカスよりも先に沈黙を破ったのはエレジーナだった。



「うん。このまま勝ちたいところだし、別にいいでしょー?」



「……分かりました。では、エレジーナに任せます。」



特に周囲に意見を仰ぐこともなく、サンナは頷いた。


今のフィカスは皆の精神的支柱。彼の存在が戦う理由にもなっている。英雄の一人が出てくることが予想出来る状態で、わざわざ出すことはリスクが大きい。


ならば、ここは他の誰かに任せた方が良い。



「で、どういうつもりなんですか?」



深夜──。


サンナはエレジーナの部屋を訪れ、寝ていた彼女を叩き起こした。



「何が……?ああ……試合の話かー。」



だらしなくはだけていたパジャマの裾を引っ張り、エレジーナは頬を掻いた。



「確実にいくなら、六号とかに任せるべき……ですよね?」



「サンナちゃんも言うようになったねー。」



窓の外の月を見上げる。



「たしかに、戦略的にはその方が正しいと思うよー?戦力と実力を見極めることは大切だよ。でもねー……何て言ったらいいか分かんないけど、戦ってみたいって思ったんだー。」



「……英雄と、ということですか?」



月明りに照らされた横顔を見て、サンナは困惑する。


いつもと何か……少し違う……?



「うん。一号ちゃんと再会して、昔のことを思い出しちゃったんだよねー。」



「……はい?」



急に何の話だ?



「見つけてみたくなったんだー。セプテムちゃんみたいに、私って一体なんなのかーってね。ほら、もう寝るよー?それとも、一緒に寝る?昔みたいに?」



「そんな思い出はありません!」



ぴしゃりとはねつけ、サンナはエレジーナの部屋を後にした。












「……う~ん……眠い……。」



変な時間に起きちゃったなぁ……。


寝ぼけ眼をこすり、エヌマエルは用足しから自分の部屋に戻ろうとしていたその時──。



「……セプテムさん……?」



セプテムが部屋に入るのが見えた。


そっかー……セプテムさんも起きちゃったんですね……あれ?


その部屋、セプテムさんの部屋じゃない気が……。


自分の記憶が正しければ、そこはフィカスさんの部屋。


つまり……。



「ま、ま、まさか……!?」



セプテムさんに限って……!?



「……。」



別にあり得るか。


エヌマエルは妙に冷静になる。


二人きりで旅していたわけだし、私が入ったから距離が少し離れただけかもしれないし……でも私はアベリアさんを応援するって決めたわけで……。


……とりあえず、覗き見してみましょう!



「……フィカス、焦ったりしてないでしょうね?」



二人はベッドに腰を下ろしており、セプテムがフィカスに詰め寄っていた。



「焦りはしてない……けど……。」



「けど?」



更にセプテムは詰め寄る。



「不安にはなる……よ。僕だけ蚊帳の外って言うか、扱いがいつもと違うから……。」



状態を斜めにして距離を作り、フィカスはそう答えた。



「……。」



セプテムはそんな彼の顔を眺めて、ベッドに座り直した。



「……しばらく出番はないわよ。いざって時に出てもらうから、その時まで英気を養っておきなさい。」



「……言いたいことは何となく分かるけど、落ち着かないよ。やっぱり。」



一方的に守られているみたいで、どうにも心がざわつく。


今の状態は何だか冒険者になる前の状態みたいで、息苦しいのようなものを感じる。


何か言われたわけじゃないけど、皆の様子を見ていたら伝わってくる。



「なに?疎外感でもあるの?」



「まぁ……そう……だね。」



セプテムはため息を吐く。



「はぁ……あんたは本当に何というか……いい?冒険者同盟は、皆はあんたに惹かれて集まっているのよ。何かしら感謝したりしてね。」



喋りながらセプテムは頬が熱くなるのを感じた。


自分でいってなんだけど、恥ずかしいわね……。



「えっと、つまり!今は恩返しをしている状態なの!もうしばらくそうだから、その後はまた頼むわよ!それじゃ!」



「──うん。」



恩返し……か。


フィカスは自分の掌を見た。


そっか……僕は誰かの役に立てて……それで皆もまた、それを返そうとしていて……。



「……で、あんたはここで何をしているの?」



「あ、はは……。」



フィカスの部屋を出たセプテムは、ドアの前にいたエヌマエルをジト目で睨んだ。



「……ね、寝ぼけて……まして……。」



覗くのに夢中になって、逃げるのを忘れてましたー!


何て絶対に言えないエヌマエルであった。

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