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マジックセンス  作者: 金屋周
第十三章:未来を懸けて
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183:魔女

「うわあああああああァァァァァッッッッ!!!」



「起きたかよ、クソ野郎。」



殴られる夢を見てノソスはベッドから飛び起き、ドゥーフが毒を吐いた。



「自信満々にほざいといて、何の役にも立たなかったじゃねぇか。ザコがよ。」



「黙れ!あんなむさ苦しい男が相手でなければ、私は勝っていた!」



「知るかよ、変態ザコ野郎が。……で、今日の試合はどうするつもりだ?」



国際連合は現在、二連敗──。


戦力的に見ればまだまだ余裕があるが、そろそろまた勝っておきたいところだ。



「……俺が行く。」



「あ?てめぇかよ。」



声を上げたのはネモフィラだ。


彼に対しドゥーフが詰め寄る。



「大丈夫なんだろうな?」



「当然だ。勝ちにいく。それが契約だからな。」



ネモフィラは腕を組み、静かに頷いた。


ここにいる者は皆、何かしらの契約を行い参戦している。その為、手を抜くことは許されない。


フィカスとの繋がりがあるネモフィラたちと言えど、そこは同じだ。



「……ハッ!ならいいが……勇者はどうした?」



「……お前に答える義務はない。」



両者は睨み合い、無言で火花を散らす。



「まぁ落ち着けって!」



そんな両者の間に割って入ったのはラフマだった。


犬耳をぴょこぴょこと動かし、二人の顔を交互に見る。



「仲良しこよしする為に集まったわけじゃないんだしさ、無理に納得しようとしなくていいって!」



「……それもそうだな。無駄な時間を過ごしちまった。」



そう言ってドゥーフは部屋を出ていった。



「いや~賢者って怖いね。」



リコリスが茶化すようにそう言ったが、ネモフィラはため息を吐いた。



「……そんなものだろう。英雄なんてものはな。」



勇者スクォーラの正体は──本性は死神だった。


聖人や魔人を見ていても思うが、英雄と呼ばれる存在なんて、案外そういうものなのだろう。凡人とはズレていて、危険さを匂わせる。



「ふん……。」



──向こうとしても、勢いに乗って連勝していきたいところだろう。


果たして出てくるのはどちらか?


正直、どちらでもいい。ただ、少しばかり話してみたいと思った。


それだけだ。



──そして、試合の時間がやってきた。



鉄杖を握り、ネモフィラは舞台に立つ。



「……来たか。」



ブーツの足音が聞こえ、前方から対戦相手が姿を現した。


黒い燕尾服に身を包んだ、小柄な少女。以前、怪盗シャドウと呼ばれていた人物だ。



「……あら?てっきり魔人か聖人が出てくるかと思っていたけど……想定より焦ってないのかしら?」



「そういうことだ。」



セプテムは呆れた様子で客席の方を見やった。


──ここで英雄の一人を潰してやるつもりだったけど……。


まぁいい。勝つことに変わりはない。



「それじゃ……勇者の仲間の実力、見させてもらうわよ。」



「……ああ。かかってこい。」



セプテムは腰から短刀を引き抜く。


それにしても、またこの服を着ることになるなんてね。


怪盗はもう辞めた。だからこの燕尾服を着ることももうないと思っていた。


けれど、どういう服装が一番やる気を引き出せるか……そう考えた時、自然とこの衣装が思い浮かんだ。ただ怪盗の時とは違うのは、もうアイマスクを付けていないという点だ。


あれは正体を隠すためのものであり、視界が狭まり戦闘向きとは言えない。



「試合……開始!」



合図とともに、セプテムが動いた。


──速い!


ネモフィラが鉄杖をセプテムへと向けた時には、既に彼女の間合いだった。



「遅い!」



セプテムの左手から劫火が放たれ、ワンテンポ遅れてネモフィラからも劫火が放たれた。


両者の炎がぶつかり合うが、徐々にネモフィラの劫火が強まっていく。



「……。」



流石に炎魔法の使い手には厳しいか……。


その魔法しか扱えずそれ一筋で生きてきた者と、あらゆる自然魔法を扱えそれに拘る必要のなかった者。


どちらがそれに精通しているかと問われれば、当然前者であろう。



「まぁ……それは想定内だけど。」



セプテムは炎を止め、代わりに水魔法を放つ。


炎と水が一斉にぶつかり、水蒸気爆発が起こった。


それと同時に土魔法で地面を隆起させ、セプテムは高地へと退避する。



「チィ……!」



間近で爆発が起き、ネモフィラはそれの大半を受けながら杖を構えた。


劫火をそのまま放ち、隆起した地面を包み込み、炎の柱とする。


突如、土の柱が崩れた。


バラバラになった土と石の塊がそのままネモフィラに襲いかかってくる。



「舐めるなッ!」



炎をカーテンのように大きく広く張り、向かってくる塊を受け止め燃やし尽くす。



「ふーん……流石ね……。」



「ふんっ……。」



ネモフィラは顔に付いた血を拭った。先ほどの爆発で流れた血だ。


やはりこいつ……余裕があるな……。



「まぁそのくらいしてくれないと、面白くないから。精々足掻いてちょうだい?」



この女……俺を実験体にするつもりか。


流石は怪盗シャドウ……いや……。


その呼び方はもう古い。


自然魔法を全て操れる唯一無二の存在であり、以前から英雄と肩を並べる存在であると噂されていた。


そんな彼女はまさに──。



──魔女だ。

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