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マジックセンス  作者: 金屋周
第十三章:未来を懸けて
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182:ノソス

「おう!誰だお前は?」



「それはこちらの台詞ですよ。」



翌日──。


闘技場でジギタリスとノソスは向かい合い、率直な感想を述べ合う。



「英雄の誰かがくると思ってたけどよ……この俺様にビビっちまったのか?」



「誰も君のような小物を警戒などしていません。敢えて言うなら、君ほどの弱者が出場していることにビビってしまいましたかね。」



「おう!言ってくれんじゃねぇか。このガリガリ野郎!」



「筋肉しか取り柄のない輩に言われたくありませんね。」



落ち着いたようだが、両者ともに血管が浮かび上がっている。


煽り耐性ないのなら、煽るの止めなさいよ……。


司会のノウェムは溜め息を吐いた。


──これまでで一番、荒っぽい勝負になりそう……。



「……それでは、試合──始め!」



「おらあああああぁぁぁっっ!」



予想通りというか、案の定というか、ジギタリスが開幕で大剣を振り上げ、ノソスに向かって突進を開始した。


──先手必勝!


ノソスがどんな能力センスを持っているか分からない。


なら!それを満足に使わせない!その前に倒す!



「やれやれ……これだから品のない者は……。」



ノソスは鞘から剣を引き抜いた。何の特徴もない、オーソドックスな剣だ。


そしてそのまま大剣へと剣を向かわせる。


あぁ……?どういうつもりだ……?


真っ向勝負では、大剣には勝てない。折られるのは明白だ。となると、そういう魔法を持っているってことか?



「まぁ関係ねぇけどな……ん?」



互いの剣がぶつかり合う手前、ジギタリスは身体に違和感を覚えた。視界が一瞬ぼやけ、力が少し抜けた。



「ふっ……。」



ノソスは不敵に笑い、大剣を外へと弾きジギタリスの身体に刃を近づける。



「ぐぅっ……このやろ!」



だがジギタリスは無理やり大剣を自分の身体へと引き寄せ、ノソスの剣を防いだ。


なんだ……何があったんだ……?


嫌な感覚が身体に起きたが、今は何もない。寝不足だったか?



「よく分かんねぇけど……!」



もう平気だ。なら今のうちに……?



「ぐぅ……。」



攻撃に出ようと腕を動かした瞬間、身体が重くなった。思うように力が入らず、足元が安定しない。先ほどよりも酷い、辛い。



「ふっ……無駄ですよ?」



守りを簡単に崩し、ノソスの剣がジギタリスの身体に一太刀入れた。



「くそ……どうなって……。」



どうにも身体が思うように動かない。


このままでは不味い。


そう判断しジギタリスは退こうとするが──。



「逃がしませんよ?」



ノソスは距離を空けず、そのまま付きまとう。


それでいて己の武器は振らない。



「このっ……!」



バカにしてやがる……!


ジギタリスはありったけの力を込め全力で大剣を振るったが、いとも簡単に躱された。



「おやおや?もしかして、それで全力ですか?遅すぎて躱すことを躊躇ってしまいましたよ?」



「この野郎……!」



ノソスは髪をかきあげ、見下した視線を送る。



「聞けば君は、回復魔法が使えるそうですね?実に強い。相手によっては無敵とも言える魔法だ。しかし私には無意味な魔法だ。」



「……何が言いてぇ……?」



ジギタリスの呼吸が荒くなってきた。



「そろそろ……立っているのも辛くなってきたのでは?」



ノソスの言葉通り、ジギタリスの身体はふらついていた。


身体は怠く、力が入らない。視界はぼやけている。



「しかし、君の回復魔法では解決しません。話によると、傷を癒すだけだそうじゃないですか。不便なものですねぇ。」



こいつ……。



「まったく……何が悲しいって、こんなむさ苦しい男が苦しむ様を見なければならない、ということですよ。美女が相手なら大歓迎ですが……。」



やっぱり……。



「そろそろ私の魔法センスを教えてあげましょう。私の魔法は病魔。発動することで、近くにいる者の体調を崩します。困ったものですねぇ?」



人である以上、病気に対する完璧な対抗策はない。どれだけ対策していようと、病気にかかる時はかかる。たとえ頑丈な悪魔と言えど、それは同じだ。


ノソスの魔法センスは、人によって症状が違う。誰がどんな病気状態になるかは分からない。離れたりノソスが病魔を停止させない限り、その症状は収まらない。



「さて……降参してくれると楽なのですが……まぁとどめを刺してあげるので、その必要もありません。すぐに楽にしてあげましょう。」



そう言って剣を振りかぶった。



「消えなさい。弱者よ……。」



「ムカつくぜぇぇぇっっ!!!」



「は?んぼッ!?」



ジギタリスのパンチがもろに入り、ノソスの身体が吹っ飛んだ。


ノソスの身体はゴロゴロと地面を転がり、壁に激突しようやく止まった。



「がっ……あああああああぁぁぁぁっっ!!!!」



何故だっ!?


何故奴は動けたっ!?


病魔は充分に発動していた。その状態でまともに動ける生物がいるはずがないッ!!



「……どういうイカサマをしたァ!?」



「イカサマだと?……いいぜ、教えてやる。」



ジギタリスはノソスの胸ぐらを掴み、無理やり立ち上がらせる。


そして腕を振りかぶった。



「それはな……根性だァッ!!!」



ボカッ!


と音が聞こえそうなパンチがノソスの顔面に入った。

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