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マジックセンス  作者: 金屋周
第十三章:未来を懸けて
179/222

175:開幕

翌日──。


一同は広い部屋に集まり、セプテムが前に立っていた。



「──今日の夜からいよいよ試合が始まるわけだけど、状況を整理するわよ。」



用意されていた黒板に文字を書いていく。



「まず、両勢力ともに八人。」



エヌマエルの顔を見、頷きあった。



「で、向こうの──国際連合の戦力だけど……。」



ドゥーフ、アズフ、アギオス、ノソス、ネモフィラ、ラフマ、リコリス、アモローザ……八人の名前を順番に書いていく。



「賢者、魔人、聖人の三人がやはり脅威ね。それに加え正体不明の男・ノソス。この四人がネックかしら。」



ネモフィラたち”元”勇者の仲間たちに加え、アモローザまでもが向こう側についていることは意外ではあったが、英雄と呼ばれる三人に比べればまだマシだ。



「どうしてあいつらも向こう側なんだろうな?」



「さぁ?考えたって仕方ないわよ。」



ジギタリスの疑問にセプテムは肩をすくめた。


予想はつくが、だからといってどうしようもない。大方、戦力にならないと国から圧力をかける、みたいに脅されたのだろう。


エレジーナのような裏社会と通じる者ならば、その脅しに屈する必要はない。ただそうでない人であるならば、その言い分を呑む他ない。



「試合は一対一で行われる。誰がいつ出るか、これが重要よ。」



連日して試合が行われるため、実力が偏らないようにしたり、一人が連戦にならないように調整していく必要がある。



「大将といえるフィカスの出番は後回しにするとして……初戦、どうする?」



フィカス、セプテム、アベリア、サンナ、ジギタリス、マカナ、エレジーナ、ウルミ……これがこちら側の戦力だ。


相手側がどう出てくるか分からない以上、対応力の高い人を序盤に出していきたいところだ。



「……俺が出る。」



マカナが静かに名乗りあげた。



「安定を取るなら、向こうはリコリスかネモフィラが出てくるはずだ。そいつら相手なら何とかなる。」



セプテムは顎をつまむ。


──マカナの性格的に、誰が相手でも焦ったりはしない。先鋒としては申し分ない……か。



「分かったわ。初戦はマカナに任せる。誰も異論はないわね?」



その言葉に一同に頷いた。



「マカナくん、勝ってねー。」



エレジーナの応援を受けて、マカナは彼女の前へと移動した。



「それは……誰の言葉ですか?」



そう訊かれ、彼女は立ち上がる。


身長が近い二人の目線が重なり合う。



「もちろん、雇い主としての言葉だよ。」



「……それを聞いて安心しました。雇い主の命令とあれば、勝ちますよ。」



そう言ってマカナは小さく微笑んだ。


結局のところ、あとは向こうの考え方次第だ。ほとんどくじ引きのようなものであり、組み合わせによっては完敗する恐れもある。


──けど、まぁ……簡単に負けてやるつもりはない。


たとえ、誰が相手になろうとも。











「ここが闘技場です。」



太陽が顔を隠す頃、案内役のカナメの誘導によって戦いの舞台となる闘技場へとやって来た。


沢山の明かりが灯され、昼間のように明るい。けれど観客は誰もおらず静寂だ。



「選手はこちらの通路から。舞台に繋がっています。」



「分かった。じゃあ……行ってきます。」



マカナは静かに頷き、落ち着いた足取りで通路を進んでいった。



「では皆さんはこちらへ。客席へと繋がっています。」



階段を上ると、観客席の中腹の辺りに出た。正面に見える通路──つまり反対側には既に国際連合のメンバーが揃っている。


そして両陣営の中間地点にレグヌム国王と姫が座っていた。



「──揃ったようだな。」



左右を見、国王が口を開いた。



「本日より国際連合と冒険者同盟の試合を開始する。国際連合が勝利した場合、冒険者フィカスをレグヌムの管理下に置く。」



国王が睨むようにフィカスを見たが、フィカスは視線を逸らさず真っ直ぐに見つめ返す。



「冒険者同盟が勝利した場合、好きな要求を一つ提示せよ。我々はそれを呑む。」



要求か……。


フィカスは思考する。


明確にどうしたいか、定まっていない。まだはっきりとした答えは出ていない。現時点では、まだ何も言えない。


でも……だからこそ……。


これからの勝負を通して、自分の思想を確固たるものにする。



「では、そろそろ開戦といこうか。ノウェム。」



「──はい。」



ノウェム姫が立ち上がった。



「只今より、両闘士の入場です。」



フィカスは改めて向こう側にいるメンバーを見る。


あそこに今いない人が、これから出てくるってことだ。


それってつまり……。



「まずは冒険者同盟──マカナ。」



名前を呼ばれ、ゆっくりとマカナは姿を現した。



「続いて国際連合──”賢者”ドゥーフ。」



「ハッ!誰が初戦に出てくるかと思えば、ただのザコかよ。」



「……。」



マカナは武器の柄を握りしめる。


いきなり賢者が相手か。予想外というか、いきなりとばしてくる感じか。つうか、やり辛い相手だ。



「まぁさっさと終わらせてやるからよ。ザコらしく散ってくれ。」



賢者が不敵に笑った。



今、開戦──!

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