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マジックセンス  作者: 金屋周
第十三章:未来を懸けて
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172:条件

僕の……所属をかけて……?


どういう意味だろう?


そう思ったが、すぐに理解した。


そうだ。ここに集まっている人たちは、そのために呼ばれているんだ。少し考えれば分かることだ。悪い方向に騒ぎを持っていかず、僕を確保しやすい交渉と条件。



「私が集めたメンバーたち……国際連合は既に知っている話だな。だが、確認を含め改めて説明を行う。」



レグヌム国王は声を張り上げ、部屋にその低く通る声が響き渡る。



「国際連合側と、フィカス及びその仲間たちでそれぞれパーティを組み、一名ずつ選出した試合を行う。勝った選手は再び出場することが可、負けた選手は不可だ。これを一日一試合、毎日行い先に相手側を全滅させた方が勝利となる。」



──やっぱり、そういう話か。


リコリスのさっきの様子も、エレジーナの言葉の意味も、ドゥーフの態度も、これでようやくはっきりした。


ここに先にいた人たちは皆、国際連合側についた人たち、ということか。



「勝利側は相手側に一つ、自由に要求を呑ませることが出来る。試合のルールは相手を戦闘不能、もしくは降参させた方の勝ちとする。なお、武器・道具の持ち込みは自由とする。以上だ。何か質問はあるか?」



エレジーナが手を挙げた。



「質問です。互いの戦力の人数は、同じにしないとダメですか?」



「構わない。こちらは八人だ。そちらは何人でも良い。」



ギロリと睨み付け、国王は回答した。



「分かりました。」



エレジーナはぺこりと頭を下げた。



「他にはないようだな。宿舎は用意してある。開戦は明日の夜だ。それでは失礼する。」



要件を伝えると国王は部屋から出ていき、その歩みをまたすぐに止めた。



「お父様、一体どういうおつもりですか!?」



国王の娘・ノウェムだ。


父親の前に仁王立ちし、きつい口調で問いただした。



「私はお父様の政策に反対しておりました。他国を刺激すると、臣下の者たちも懸念しておりました。それなのに何故、このようなことを強行されたのですか!?」



「強行とは心外だな、ノウェムよ。私はこの国のための政策を打ったまでのこと。勇者を失ってしまった以上、この国には彼に代わる強力な存在──英雄と呼ばれる存在が必要なのだ。」



「しかし、そのための策としては強引すぎます。フィカス少年と親しい者たちにまで脅しに近い協力要請を出し、試合を強制させるなど……もっと良い解決策があったはずです!」



ノウェムは真っ直ぐな目で見つめるが、国王はそれを鼻で笑った。



「もう少し、頭を使ったらどうだ?帝国から攻撃されたことをもう忘れたのか?早急に諸外国に威圧をかけられるだけの人材が必要なのだ。そのためならば、手段は選ばん。これで話は終わりだ。どきなさい、ノウェム。」



「ですが……!」



ノウェムは食い下がろうとするが、国王はその肩を強く掴んだ。



「どきなさい。これは王としての命令だ。聞けないのか?ノウェム姫?」



「ぐっ……失礼しました。どうぞ、お通りください、国王様。」



「うむ。」



俯き道を空け、国王が通り過ぎるのを待つ。そして姿が見えなくなると壁に寄りかかり、拳で壁を叩いた。



「くっ……ぅ……!」



努力はしたつもりだ。周囲に別の政策を説明し、国王を説得する準備を万全にした。けれど、それを聞き入れてもらうことは叶わなかった。


どれだけ準備に時間をかけようと、努力をしようと、結果が伴わなければ意味がない。


悔しい。


まだ若い少年が、国の危機を救ったことのある少年が、政治のためにその人生を翻弄される。そんなことがあって本当に良いのか?


そういう話はよくあることだ。そんな回答もあることだろう。


しかしノウェムにとって、それはよくある話で終わらせたくなかった。彼は赤の他人などではなく、自分と面識のある、その腕前を認めた少年──フィカスという名の男だ。



「……。」



どれだけ悔やんでも、現実は何も変わらない。ならばどうする?いっそ自分もフィカスたちと共に戦うか?


そう考えて首を横に振った。


父がそれを認めるはずがない。干渉することは許されないだろう。



「……頼んだわよ、皆……。」



今の自分に出来ることは、もはや勝利を祈ることだけだ。











それから重苦しい雰囲気の中パーティーは続き、夜を迎える頃に閉会した。



「それでは皆さん、ご案内します。」



その後、カナメに連れられ、フィカスたちは城を出て宿舎へと向かうことになった。


メンバーは僕の他にアベリア、セプテム、ジギタリス、サンナ、エレジーナ、マカナ、ウルミ、エヌマエルだ。



「──一号ちゃんは、参加しないでねー。」



道中、エレジーナがそんなことを言い出した。



「えっ?なんでですかっ!?」



エヌマエルはエレジーナに詰め寄るも──。



「だって一号ちゃん、あんまり強くないんだもん。勝てる相手、いないでしょ?まぁ捨て駒というか、ワンクッション置きたいって場面にだけなら必要かもしれないけど。」



エレジーナ……なんでそんな酷いことを……。



「文句なら後でいくらでも聞くよ?でも一号ちゃんは優しすぎるから、戦いには正直向いてない。だから今回は何が何でも参加させない。」



「~~っ!なんで!なんで私じゃッ……嫌い……ッなんですかッ!?」



今にも泣きそうな声でそう叫んだ。



「なんとでも言っていいよ。エヌマエルは不参加、フィーくんもそれでいいよね?」



「……分かった。」



エレジーナの意図は分からない。でも彼女は間違ったことはしない。どれだけ嘘を吐いていたとしても、どれだけ変な人であったとしても、そこのところはしっかりしている。


だから信じよう。



「フィカスさんっ!!あなたも私を……!」



「はいはーい。一号ちゃん、フィーくんを責めるのはお門違いだよー?」



険悪なムードになってきた。


その時、カナメが申し訳なさそうな声で発言した。



「あの……えっと、着きました。ここが、皆さんの宿舎です……。」

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