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マジックセンス  作者: 金屋周
第十二章:集結
175/222

171:集合

「……パーティー……ですか?」



「そう。ほら、行くよー。」



疑うようにサンナが尋ねたが、エレジーナはあっさりと頷き歩き出した。


──裏があるようには見えないな。



「──行きましょう。」



サンナは目配せし、皆は頷きあるとエレジーナの後をついて行った。



「それで、どこに行っていたんですか?」



「それについても、行けば分かるはずだよー。はい一号ちゃん、落ち着いてねー?」



何か言いたげなエヌマエルの頭をポンポンと撫でた。


一号、という言葉にサンナとウルミは同時に彼女を見た。



「二人はどういう関係なんすか?」



「それはねー……いつか話すよ。ここだったかな?」



マカナの質問も流し、大きな両開きの扉を開けた。



「あ、合ってた。」



そこは赤い絨毯が敷かれた、広い部屋だった。


あちこちにテーブルが置かれ、その上に料理ののった皿がある。


そして十人ほどの人がいた。



「おっ来たね。久しぶり、フィカスくん。」



「リコリス……あれ?」



よく見てみると、顔見知りが何人もいる。


それにしても……。


フィカスは拳を無意識に握った。


嫌な雰囲気だ。冷たい……というより、ピリついた感じだ。近寄りがたい、長居したくない……そう思わせる空間だ。



「……ごめんね。」



「えっ?」



リコリスは僕の肩を掴むと、俯いて小さな声で謝罪した。



「……僕たちは敵側に回ることになった。」



「……どういうこと?」



「冒険者である以上、国には逆らえないんだ。君やエレジーナさんが例外ってだけでね……。」



「あら?入口に立っていては、邪魔になってしまうわよ?」



背の高い女性が声をかけてきた。赤黒い髪をした美人な……。



「えっと……アモローザ、さん?」



「ええ。お久しぶり、フィカスくん?」



アベリアのお姉さんだ。


苦手と言っていたけれど、その理由はなんとなく分かる。仕草とか雰囲気とかが、綺麗なんだけどどこか怖い。



「さっ入りなさい。もう少ししたら、国王様がいらっしゃるそうよ。」



「……はい。」



ゆっくりと部屋に足を踏み入れる。


どういう訳があって、ここに人が集まっているかは分からないけど、国王が来るというのなら、それは好機だ。自分の意思をはっきりと伝えられる。



「よぉ、遅かったじゃねぇか。何かあったのかよ?」



「ドゥーフ、まぁちょっとね……。」



奥にあるひと際豪華なテーブル席から立ち上がり、ドゥーフが話しかけてきた。



「少し話してくるよ。」



皆にそう言い、僕はドゥーフのいるテーブル席へと移動した。


皆も皆で話したいことがあるだろうし、自由行動ということにしよう。



「退屈していたところだ。こんな奴らと同じ席にされたせいでな。」



そう言ってドゥーフは指で同席していた二人を差した。


茶髪の細身な少女と長い黒髪の女性だ。



「こんな奴、とは失礼だな。貴方のその口の悪さに、私も同じ感情を持たざるを得ない、というところだが。」



「ハッ!ガキが言うじゃねぇか。てめぇにどう思われようとどうでもいいが、この俺に対して偉そうな態度取るんじゃねぇぞザコが。」



「貴方こそ、その態度を改めるべきだ。敵を作るだけで良いことなぞない。」



茶髪の少女は咎めるようにそう言うと、フィカスの前に立った。



「はじめまして。貴方がフィカスだな?アベリアから聞いている。私はアギオス、南大陸のパラディソス国から来た。このような格好ですまないな。」



たしかに、露出が少し多い服装だ。パーティーの雰囲気には合っていない気がする。



「無理やりこのような服を着せられたものでな。出来れば貴方たちのような、冒険者らしい格好でいたかったのだが。」



「えっ。」



普段はもっと過激な服を着てるってこと?



「ついでに紹介をしておこう。あそこに赤髪の男がいるだろう?」



スラッとした男性を差した。穏やかな雰囲気の男性だ。



「彼はノソス。私と同じくパラディソスから来た者だ。」



ここにいるってことは、リコリスたちと同じくらい凄い冒険者ってことだよね。


ドゥーフの方を見ると「知らねえよ。」と小さな声で言った。



「さて、私と彼の紹介はこれくらいにしておこう。アズフ、貴方も自己紹介を。」



座ったままの女性に声をかけた。



「あ、うん。そうだね。」



長い黒髪の女性は頷くと立ち上がった。



「はじめまして、アズフっていいます。東大陸のディブルから来ました。よろしくね。」



「あぁうん……よろしく。」



なんというか、変な雰囲気を持った人だ。


口調は友好的だけど、無表情だ。そして目にはなんの光も灯っていない。



「いや~こうして会えて嬉しいよ。創造魔法が使えるんだよね?見てみたいなぁ?」



「え、えっと……。」



心ここに在らず、だ。比喩ではなく、文字通りだ。目の前にいるはずなのに、どこか違うところから見ているような、別の何かを介して話しているような、人ではない何かを感じさせる人だ。



「諸君、集まったようだな。」



その時、入口が開きレグヌム国王が入ってきた。



「……!」



「かしこまらなくてよい。全員、揃っているな?」



入口で仁王立ちし、室内を見渡した。



「では──改めてここに宣言する。勇者候補・フィカスの所属をかけた試合を執り行う!」

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