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マジックセンス  作者: 金屋周
第十二章:集結
173/222

169:到着

「そろそろか?」



「そろそろですね。」



レグヌムの港にて、大小の影が一つずつ——ジギタリスとカナメはそわそわした様子で海の方を見ていた。


何かトラブルが起きなければ、そろそろ船が到着する時間だ。



「あ!あれですよジギタリスさん!」



「おう!」



カナメがいち早く船を発見し指差した。


それにジギタリスは頷き、自らの拳を固く握った。


——こっから大変になりそうだ。


再会を喜びたい気持ちももちろんある。けれど、喜んでばかりもいられない。気を引き締めていかねばならない時だ。



「おう!フィカス!セプテム!よーやく会えたな!!」



なんて思考は、船から出てきた二人の姿を見るや否や吹き飛んでしまった。


駆け寄って二人の肩をバンバンと叩く。



「ジギタリス!……久しぶりだね。」



フィカスもまた笑顔になったが、一瞬でその表情が曇る。


生き延びるためとはいえ、何も言わずに去ってしまった。その事実はどうしたって変わらない。


その気まずさが彼を無邪気に喜ばせないでいた。



「痛いわよ!……ったく、少しは落ち着きなさいよ。」



「……おう。そだな。はしゃいでばかりもいられないよな。だがその前に……。」



ジギタリスはフィカスの背中を思いっきり叩いた。



「——った!」



「暗い顔してんじゃねぇぞフィカス!相談してくれなかったことはたしかに悔しかったが、別に今はどうでもいい!だから気にすんな!その程度で俺たちの友情は壊れたりしねぇぜ!」



「……!……うん!」



——嬉しかった。


正直、なんて言われるか怖かった。他の人みたいに、手のひらを返すように酷いことを言われるかもしれないと思った。



「ほぇ~……この人がフィカスさんのお仲間ですか?なんだかパワフルな感じの方ですねぇ。」



「うん。紹介するよ、エヌマエル。彼がジギタリス、僕のパーティの回復役ヒーラーを務めていたんだ。」



フィカスの後ろに立っていたエヌマエルがひょこっと顔を見せ、彼女の顔をまじまじと見たジギタリスは固まった。



「おい……フィカス……。」



「なに?」



肩を組み、顔を引き寄せる。



「なんだあのめっちゃ可愛い人は?美人とも可愛いともとれる理想の女性みたいな人は!?」



「ちょ落ち着いてよ!」



耳元で大声を出され、思わず顔をしかめる。



「エヌマエルっていうんだ。旅の途中で出会って一緒に来ることになったんだよ。」



「なるほどな……流石だな!」



「……?」



……何が?



「ジギタリス、会話が弾むのも分かるが、今は用事が優先だ。——皆さんにはそのまま馬車に乗ってもらい、レグヌム城まで行ってもらいます。もちろん、俺とカナメも同行します。」



カイドウが停めてある馬車を差した。



「おう!そうだったな!じゃあ行こうぜ!」



大きな馬車に皆で乗って、そのまま移動開始。


道中、ドゥーフが何も喋らなかったのが気になったけど、そんな彼の雰囲気に気圧されたのか、誰も話しかけようとはしなかった。



「ねぇ、ジギタリス。」



「おっ?どうした?」



馬車の速度が少し落ちた。


町中に入ったのだろう。



「この後、何が起きるの?」



しばらく一人で考えていたが、結局思いつくことは何もなかった。もうすぐ目的地に着いてしまうだろうが、一応は聞いておきたい。



「うーん……俺も沢山集まってるってことしか知らないんだよなぁ。けどこうやってキチンと招待している以上、悪いようにはならないはずだぜ?」



「なら……いいんだけどね。」



そっぽを向いていたセプテムがぼそりとそう呟いた。


冷たいようだけど、その気持ちも分かる。


本当に良い方向に話が進んでいくのか、疑わしくて不安にもなってくる。



「着いた。皆さん、降りてください。」



気が付くと、レグヌム城の前にまで来ていた。



「フィカス殿を連れてきた。」



カイドウが門番にそう伝え、城門が開く。



「俺はこのまま報告に向かう。ジギタリスとカナメは四人を案内してくれ。」



「おう!」



「はい。兄さん。」



兄弟だったの!?


エヌマエルは密かに驚いた。


真面目そうな兄と可愛らしい弟……やっぱり、あんま似てない気がする。



「——っと、すまないが賢者殿も一緒に俺と来てくれ。」



「……ああ。あの話だろ?分かってる。」



あの話……?



「じゃあな、フィカス。また後でな。」



「えっ……うん。」



何なんだろう……?



「じゃあみんなは俺について来い!サプライズが待ってるぜ!」



「サプライズって言っていいもんなの……?」



セプテムがジト目で尋ねたが、ジギタリスはガハハ!と笑って誤魔化した。


廊下を進む最中、何人かの人とすれ違ったが、僕の顔を見ても特に反応はなかった。


騒ぎは過ぎ去ったのかな……?嫌な予感は、単なる思い過ごし……?



「この部屋だ。フィカスが最初に入ってくれ。」



あ……この部屋、前に五人で泊まった部屋だ。


懐かしいな……まだ一か月ちょっとくらいしか経ってないのに、もうずっと前のことのように思える。


ドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開く。


中に入ると、そこには二人の人物がいて……。


気が付くと、目の前に跳びかかってくる一人の人物がいた。

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