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マジックセンス  作者: 金屋周
第十二章:集結
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167:使い

氷穴での戦闘からおよそ二週間――。


フィカスたちは、また新しくも慣れてきた生活へと戻っていた。


毎日違う仕事を頼まれ、城内でそれをこなす日々。それに変化はなかった。


ただ、変化があるとすれば――。



「また外国からお使いの人が来てたみたいですよ?」



「ふーん……。」



仕事終わりに部屋で三人でくつろいでいると、思い出したようにエヌマエルがそう言い、セプテムが興味なさげに軽い返事をした。



「ふーんって……興味ないんですか?」



「別に新しくもない、ただのニュースでしょうが。私とフィカスを捜す人が来るなんて、前々から分かってたことじゃない?」



「まぁ……そうなんですけど、様子がちょっと違うっていうか……。」



「どう違ったの?」



読んでいた図鑑から顔を上げ、フィカスがそう尋ねた。


ちなみに読んでいたのは、世界の武器図鑑。冒険者に憧れる子供向けの図鑑だが、彼は充分にそれを楽しんでいた。



「えっとですね。フィカスさんたちを捜しに来たというより、国王様に何かお話があるって感じの様子でした。」



王様に?


それって政治的な話ってことかな?それなら、僕たちのこととは関係ない?



「ここのところ毎日、同じような顔ぶれを見かけるので、よっぽど重要なお話なんでしょうねぇ。」



「重要……ねぇ……。」



セプテムはポツリと呟いた。


――只事じゃないのは確かね。


ここ一週間、来客があってからどこかピリピリとした緊張感が城内にあったのは理解していた。最初は面倒な政治話がやって来たのかと思っていたが、どうもそういう類の話ではないらしい。



「……嫌な方向に流れなきゃいいんだけど……。」



その会話からさらに一週間――。


フィカスたちが逃亡を始めてからおよそ一か月が経とうとした頃――。


空はどんよりと曇っており、それのせいか否か城内の緊張感のような雰囲気はますます強まっていた。



「失礼する。」



四回のノック音とともに、厳格な声がドアの外から聞こえた。


そして返事をする前に扉は開かれた。



「王……様……?」



入って来たのはフェルティ国王。


ここに来るなんて珍しい……というか、初めてなんじゃないかな。



「ここのところ、外国から使いが来ていたことは知っていたな?」



「はい。えっと……それが何か……?」



「一大事となってしまった。君たちには隠していたが、実はレグヌムから交渉の便りが以前から届いていたのだ。」



あ……もしかしてあの時の……。


エヌマエルは思い当たる節があったが、黙っていることにした。立ち聞きしていたなんて知られたら、分かったもんじゃない。



「レグヌムから……?一体どんな……?」



「それについては、後で詳しく説明する。それで今日、引き延ばしてきた選択を強いられてしまった。諸外国から圧力をかけられ、断るとこの国に危険が及ぶ。すまない。」



そう言って国王は頭を下げたが、いまいち話が見えてこない。



「え、あ、頭を上げてください!それで、危険ってどういうことですか!?」



「それについても、後で説明してやるよ。ついて来い。」



部屋の外から声がした。


ドゥーフだ。手で来いとサインしてくる。



「――ちなみに、レグヌムの奴がすぐそこにいるから、逃げるのはナシだぜ?」



「……!」



レグヌムの使いが来ている!?


どうして……?


逃げるわけにもいかず、ただ黙ってドゥーフについて行くしかなかった。


逃げようと思えば逃げられるのだろうが、国王のあの様子からして、素直に従った方が良いと思えた。



「よぉ。待たせたな。」



城の外に出ると、大きな幌馬車と全身をローブに包んだ人物が待っていた。



「契約書は?」



「あるぜ?こいつだ。」



内ポケットから豪華な便箋を取り出し、ドゥーフはそれをヒラヒラと振ってみせた。



「了解した。乗れ。」



「逃げねぇから安心しろ。」



馬車の中は整っていた。絨毯が敷かれソファが置いてある。



「ねぇドゥーフ、さっきの話だけど……。」



動き始めた馬車の振動を感じながら、フィカスはそう尋ねた。



「そう焦るな。説明してやるよ。そうだな……まぁそこから話せばいいか。」



最初に来た知らせは、逃亡者であるフィカスの存在を知るか尋ねる文面だった。


レグヌム国の反逆者であると手紙には綴られていた。もちろん、フェルティ国王は知らないと返事をした。フィカスとの約束が先にあったためだ。


それから一週間ほどは平穏だった。特に追及されたりすることもなかった。


しかし、その後に新たな知らせが来た。



「そいつがフィカスとセプテムを確保するって内容だったんだとよ。」



唯一無二の魔法センスを持つ二人を犯罪者として追うことにデメリットがあると判断したのだろう。行方を知っているのなら返事をするようにと。



「それに対しても国王さんは知らないって言いたかったんだろうがよ……そうはいかなかった。」



その手紙には、現地調査を行い本当に白であるか確かめるとあった。



「直後、新たな手紙も来た。」



二人の確保に協力するように。断った場合には、賛成国とともに攻撃を仕掛けるとあった。



「で、ギリギリまで粘ったが結局は折れ、使いがこうして来たってわけだ。」



「そんなことが……あれ?じゃあつまり……。」



「ああ。これから俺たちは、レグヌムに行くってわけだ。良かったな?愛しの故郷に帰れるぜ?」

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