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マジックセンス  作者: 金屋周
第十二章:集結
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164:氷穴

「――思った通り、深いわね。」



穴の底、暗闇の中で小さな炎が燃えている。


フィカスが布きれを創造し、セプテムがそれに炎を点すと穴の底へと投げ捨てた。それにより穴の深さ等が大体理解出来たわけだが……。



「急みたいですし、下りるのって危なくないですか?」



「うん。何か創造して……。」



万が一、足を滑らせたらと思うと……ここは時間がかかってでも慎重に行った方が良い。


そう思ったんだけど……。



「んな面倒なこと、してられっかよ。」



そう言うとドゥーフはコンコンと槍の柄で足場を叩いた。


地震が起き、目の前の地形が変わっていく。


穴の淵が太く厚い螺旋階段のようになっていく。



「――これで充分だろ?行くぞ。」



「あぁ……うん……。」



そうだよね。


ドゥーフの魔法があれば、悩むことなんてないよね。


炎魔法による灯りを持つセプテムを先頭に、一列になって螺旋階段を下りていく。二番目が僕、その後ろがエヌマエル、最後尾がドゥーフだ。



「……?」



底へ近づいていくと、段々と肌寒くなってくることに気付いた。


この土地自体がレグヌムに比べると涼しいから、相応の服装をして来たのだが、それでも寒くなってきた。


よく見ると、壁に氷らしきものもある。



「わぁー……なんだか幻想的ですね。」



底に到着すると、大きな氷が生えていた。まるで巨大なクリスタルだ。


それも一つではない。サイズはまちまちだが、あちこちに同じようなものが生えている。



「結構広いんだね。どのくらいあるの?」



「そこまでは知らねぇよ。けど、竜が住むくらいには広いんだろ。」



「それじゃ伝わんないわよ。……まったく。」



セプテムが溜め息を吐き、炎の威力を強くした。


大きな炎が奥まで照らす。



「――一本道みたいね。行くわよ。」



あちこちにある氷が鏡のように炎を反射する。地上では見られない、キラキラした光景だ。


冷たい空気を肌で感じ、慎重に進んでいく。足元にも氷があるから、転ばないように注意しないと。



「ほびゃ!」



「わっ……!」



突然、背中に何かがぶつかった。


一体何が……ってエヌマエルか。



「大丈夫?」



「はい……すみません。」



氷もそうだが、地面自体も冷えて滑りやすくなっている。気を付けないと簡単に怪我しそうだ。



「わっごめん。」



そう考えていると、先頭を行くセプテムに激突してしまった。



「――分かれ道よ。」



一歩横にずれ、炎で先を示した。


そのまま真っ直ぐの道と、ほぼ直角の右に道が伸びていた。



「どっちに行く?」



「どっちでもいいだろ別に。」



「よくはないわよ。」



僕は二つの道を交互に見比べる。


どっちも同じような……いや……。



「右……じゃないかな……?」



「どうしてだ?」



「淵……って言えばいいのかな?」



道の輪郭を指差す。



「真っ直ぐに比べると、端の方が欠けているというか、崩れてきているというか……。」



これまで歩いてきた通路と比べると、崩れ方が違う気がする。早い話が、劣化が激しい。ここだけ違うだなんてこと、普通はないんじゃないかな?



「つまり、こっちにいるってことだな?」



「うん。……断言は出来ないけどね。」



でも、可能性としては高いと思う。



「なら右にしましょう。」



「はい!お二人がそう言うのなら!」



そう言って歩きだした三人の背中を見て、ドゥーフは立ち止まった。



「……。」



「……ドゥーフ?どうしたの?」



フィカスが振り向き、不思議そうにそう訊いてきた。



「……何でもねぇよ。」



――信頼か。


俺には関係のない話だな。



「……?そう……?」



疑問を感じながらも頷き、フィカスは前を向いた。


こっちの道は、さらに氷が多くなってきていた。ほとんど全体が氷に覆われている。けれど、傷ついたものが多い。


固い何かがぶつかった跡みたいに見える。



「……寒いですね……。」



「我慢しなさい。」



「セプテムさんは炎を持ってるから、そういうことが言えるんですよ。」



そう言ってエヌマエルは己の両腕を擦った。



「はいはい。フィカス、なんとかしてやって。」



注文が雑。



「えっと……。」



エヌマエルが右手を前に出してきた。


その手の上に厚い布があるイメージをする。毛布を小さくしたような物を創造。



「……。」



「小さかった……?」



創造したけれど、エヌマエルはジト目でこちらを見てきた。何か不満だったのだろうか?



「いえ……平気です……。」



毛布に包まり、すねたような口調でそう言った。



「……そう?」



何か言いたげな気がするけど、本人がそう言うのならいいのかな?



「――多分、ここの下よ。」



炎を小さくし、セプテムが声を絞った。


急な坂になっていて、下から何かの音がする。



「――この下に竜がいるってことだね。」



音からして、まだこちらには気付いてない様子だ。


それなら、ここは……。



「面倒なことはしたくねぇ。ほらよ!」



ドゥーフがそう言うと、近くにあった岩が下へと向かって飛んでいった。

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