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マジックセンス  作者: 金屋周
第二章:怪盗
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15:夜明け

夜明けを迎えるとともに、フィカスは目を覚ました。身体にまだ、稽古で受けた痛みが残っていたせいかもしれない。


ジギタリスに回復してもらえば良かった……。


魔法による治療とは縁のない世界で生きてきたため、怪我した時にそのことを失念していた。



「あら、フィーくん。おはよ~。」



「おはよう、アベリア。早いね。」



アベリアもベッドから起きていた。



「うん。私はね、いつもこれくらいの時間に目が覚めるの。フィーくんも?」



その質問にフィカスは首を横に振った。



「ううん。僕は何だか寝付けなくて……いつもはもう少し寝ているんだけど。」



「そうなの?それじゃあ、少しお散歩でもしましょうか。」



お互いに背を向けて着替え、物音を立てぬよう静かに部屋を出た。


ギルドの外に出ると、町はまだ寝起きのようだ。


働き者の承認や配達人が通りを駆けていくが、それ以外に人影はない。太陽も顔を覗かせたばかりで、朝靄がまだ残っている。



「フィーくんは冒険者になる前、何をしていたの?」



「家の手伝い……農業をやってたよ。……アベリアは?」



彼女の素性をまだ全然知らない。そう思って訊いてみた。



「私はね~……私もフィーくんと一緒。お家のお手伝いばかりやってたわ~。」



「そっか。」



具体的に何を?とは訊けなかった。もっとアベリアという人物を知ってから、もっと親しくなった時にまた、訊いてみよう。



「あ、あそこのお店。」



とある喫茶店をアベリアは指さした。ヴェイトス・オムニスと書かれた看板がかかっている。



「ちょっと高いけど、美味しいって評判みたいなの。今度、皆で行きましょう?」



「うん。行こうか。」



ちょっと高いって、どれくらいだろう?


頷いたものの、フィカスは内心不安になった。パーティーに無理な金額である店を紹介するとは思えないが、天然のアベリアにはその可能性があることを否定しきれない。



「……そろそろ、戻ろっか。」



空を見上げると、晴天に映える太陽が徐々に高度を上げてきていた。


町の人たちも起きだしたようで少しずつ賑わい始め、いつもの町の調子に戻ってきている。



「そうね~。戻って朝ごはんにしましょうか~。」



宿泊部屋に帰ると、サンナが起きていて着替えを済ませていた。



「早いですね。さて、朝食にしましょうか。」



まだ眠っているジギタリスを放っておいて、サンナは部屋を出ていった。



「……起こしてから、僕たちも行こっか。」



「そうね~。」



結論から言うと、ジギタリスを起こすのに時間がかかった。彼はどうやら、朝が苦手らしい。


眠たげなジギタリスを連れて朝食のテーブルに行くと、サンナが既に食事を開始していた。



「今日も少し稽古をして、昼からは自由行動にしようかと。睡眠はとってくださいね。」



「なんで睡眠なんだ?」



まだ元気のないジギタリス。



「クエスト開始は夜中です。それまでずっと起きてるつもりですか?」



「おう。その通りだな。」



お昼からは自由行動かぁ……何をしようかな?


フィカスはパンを頬張りながら、今日の予定を立てようとするが、何も思いつかない。


この町に来てからまだ数日。この町に何があるのか、そもそもどれくらいの規模なのか。まだ何も知らないのだ。


だから、町の散策に時間を充てようかとも思ったが、クエスト前に体力をむやみに使うのもどうかと思う。


もっと楽でためになるような……。


そこまで考えて、一つ思いついた。うってつけの場所がある。


図書館だ。

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